今号の表紙 「ふれあい通り」

郡元キャンパスの中心部に位置する「ふれあい通り」。卒業式の後の進取の気風広場は、たくさんの晴れ着姿の学生でにぎわい、期待と不安を胸にこれからの活躍を誓い合う姿が見られます。


はらぐちあつこ(イラストレーター)

鹿児島大学法文学部法政策学科卒。電力会社勤務を経て、桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科修了。東京のデザインコンサルティング会社でVI・CIデザイン制作業務の他、歴史絵本制作にも携わる。2015年より峰岸達氏に師事。2020年より福岡市に移住し、フリーランスのイラストレーターとして活動中。

ふれあい通り

旧財部高等学校跡地を
日本最大の畜産獣医学教育研究拠点に

旧県立財部高等学校の跡地、およそ4万2000平方メートルの敷地を利用した「南九州畜産獣医学拠点(通称SKLV=スクラブ)」が、今年4月にオープン。全国から学生を受け入れ、実践的畜産獣医学の教育・研究を行う予定だ。旧校舎部分には講義室のほか宿泊室や地方創生エリアも設けられ、交流人口創出による地域経済の活性化も期待されている。

2 飢餓をゼロに 4 質の高い教育をみんなに 9 産業と技術革新の基盤をつくろう 11 住み続けられるまちづくりを 12 つくる責任つかう責任 17 パートナーシップで目標を達成しよう
共同獣医学部附属 南九州畜産獣医学 教育研究センター センター長 宮本 篤 教授
共同獣医学部附属
南九州畜産獣医学
教育研究センター
センター長
宮本 篤 教授

今回、財部高校跡地に開設する南九州畜産獣医学拠点(SKLV)は、鹿児島大学の獣医学の長い歴史の末に、多くの方の支援と連携を経て実現した事業です。2012年、共同獣医学部の設置に伴い、鹿児島大学と山口大学では両大学が持つ教育資源と人材、設備を共用し、多様化する獣医師への要求に対応できる人材の育成と世界水準を目指した獣医学教育の充実を図ってきました。2017年、国際実験動物ケア評価認証協会(AAALAC International)の認証を取得し、2019年には、日本およびアジアで初めて欧州獣医学教育機関協会(EAEVE)の認証を取得しています。その際、EAEVEから両校の教育研究施設や特性を共有したプログラムの強化が提案されています。

SKLV上空より霧島連山を望む
SKLV上空より霧島連山を望む

畜産業界が日本の農業の基幹的部門へと成長を遂げる中、日本の獣医学部系の大学では、牛、豚、鶏などの産業動物や馬の実習先不足という課題を抱えてきました。獣医系大学における教育改善・充実の進捗状況調査では、産業動物の臨床教育について教員組織や施設の不足が指摘され、また、畜産業界では、産業動物の獣医療を行う獣医師の確保が地域によっては極めて難しくなっています。

共同獣医学部では、入来牧場や大隅産業動物診療研修センターなどの附属施設にて家畜の研究・実習を行ってきましたが、SKLVが整備されたことにより、産業動物の参加型臨床実習の場がさらに充実することになります。特に、馬の実習ができる国立大学の施設は他に例がなく、産業動物の実習施設としては、他大学の追随はおそらく難しいだろうと思われるほどの規模を誇ります。そのため、鹿児島大学、山口大学だけでなく、全国の畜産獣医学部の学生や、リカレント教育を希望する獣医師、畜産技術者の方々を受け入れながら実践的獣医学教育を行っていく予定です。講義室には双方向遠隔講義システムが設置され、生徒たちは財部にいながら鹿児島大学や山口大学の授業を受けられ、その場で質疑や討論をすることもできます。

鹿児島県の農業産出量は北海道に次いで全国2位ですが、その64%は畜産業が占めています。SKLVが開設される曽於市は鹿児島県の中でも特に畜産業が盛んな地域で、農業産出額日本一の宮崎県都城市の隣接地でもあり、肉用牛・豚・鶏の畜産生産額で全国屈指の市町村を巻き込んだ産学官連携による畜産獣医学教育研究拠点となることが期待されています。多くの畜産地域で、畜産農家の高齢化および後継者不足、若者世代の流出による人口減といった問題が深刻化しています。SKLVは、地域畜産業を担う人材育成だけでなく、曽於市の新たな産業や雇用の創出、体験型修学旅行や遠足の誘致、教職員や研修生による新たな交流人口の増加など、地域活性化にも貢献できる施設を目指しています。

畜産農家を取り巻く課題
  1. 省力化
    現在の労働力で多頭化に対応
  2. 安全性
    消費者の食の安心・安全意識の高まり
  3. 獣医師不足
    産業動物獣医師数は獣医師全体の約1割と少なく慢性的に不足
  4. 海外輸出
    国内市場の縮小にともない海外輸出を見据えた生産行程管理
南九州畜産獣医学拠点ができること
  • 「先端技術の習得の場」の提供
    「飼養技術の学びの場」の提供
  • 家畜の疾病予防・治療
    畜産関係者へ防疫・衛生管理の技術的指導
  • 国際的な獣医師の育成・輩出
    産業動物獣医師の体験学習を通じた将来の人材確保
  • 国際基準の生産工程管理の知識と技術習得
共同獣医学部長 三角 一浩
共同獣医学部長
三角 一浩

共同獣医学部附属南九州畜産獣医学教育研究センターは、全国の獣医学系の大学が抱える、産業動物の獣医学教育の実習先不足という課題を解決するために整備されました。さらに、産学官の連携による新たな畜産技術の開発を進め、全国へ発信していく先導的な役割も求められてます。EAEVEなど国際的な獣医学教育認証機関の認証を取得するには世界基準の教育施設、教育プログラムが必要です。今回、非常に充実した施設が整備されましたので、魅力あるプログラムを用意し、多くの学生に来ていただきたいと願っています。


畜産業界の現場から
頼られる施設を目指す

堆肥舎 治療牛舎 鶏舎

これまで、産業動物の動物衛生部門もしくは臨床部門を含め、多くの大学で学生たちが参加型臨床実習を行える場は十分とはいえない状況でした。学生全員が動物に触れながら実習できる環境というのは非常に限られていたのです。しかしSKLVでは、施設内の鶏と牛、そして豚に関しては曽於市内の養豚場に協力していただきながら、学生一人ひとりが実際に採血や検査などの実習を行うことができます。

馬エリアには20頭規模の廐舎が新築されました。日本では馬の実習ができる施設が少なく、馬を診られる獣医師もあまり多くはないのですが、SKLVには馬の専門の先生もいらっしゃいます。それも大きな強みです。馬に親しんでもらう触れ合いの場としての役割もあり、引退した競走馬のセカンドキャリアの創出、乗馬体験による交流人口の増加が見込まれています。また、医療関連機関と連携し、乗馬や馬の世話を通じて精神機能と運動機能を向上させ、社会復帰を目指すホースセラピーにも活用していく予定です。

末吉 益雄 特任教授
末吉 益雄
特任教授

カリキュラムの内容としては、滞在型施設という特徴を活かし、月曜から金曜日までの5日間コース、あるいは2週間コースなどいくつかのパターンに対応できる枠組みを検討中です。滞在中にタイミングが合えば分娩の実習もできるので、そういったケースも想定しています。お産というのはなかなか時間の予測が難しい自然現象ですから、滞在できる施設ならではの貴重な実習になるのではないでしょうか。

SKLVは、実習施設であるとともに、動物衛生の教育の場として鳥インフルエンザや口蹄疫など家畜の悪性伝染病を防ぐモデルとなるような施設も目指しています。例えば、畜産農場などでは皆さん防疫のための消毒をされていますが、効果的な消毒方法はどういったものなのかを実際に身につけていただき、日常の習慣に落とし込むということをコアにしていきたいと思います。なおかつ、海外の知見を利用したり、現場の方々からのフィードバックをいただいたりすることで、どのように病気が広がるのか、また、どうすれば病気の侵入が抑えられるのかの研究を行っていきます。

畜産農家の方は経営的な観点から家畜の体重の変化など、日々さまざまな記録をしています。その記録をより詳細にデータ解析することで生産性の向上や病気の予防につなげていけるかもしれません。特定の地域における風土病のような固有の伝染病についても、畜産農家の皆さんがこれまで経験値で対処されていたところをエビデンスをもとにアプローチしていけるのではないかとも考えています。

飼養頭数が日本一の鹿児島県は飼養密度が高く、そのため病気が伝播しやすいという問題があります。そこをどうやって防いでいくかということは、これから非常に重要となる学問です。畜産地域の真ん中にあるという立地の利点を最大限に活かし、教室での座学で終わることなく、皆さんから頼られる拠点にしていきたいですね。

伊藤 聡 特任助教
伊藤 聡
特任助教
安藤 貴朗 特任教授
安藤 貴朗
特任教授
興梠 和良 事務補佐員
興梠 和良
事務補佐員
山下 紀幸 特任助教
山下 紀幸
特任助教

実践的なノウハウを学ぶ場に

厩舎

おそらくほとんどの大学の実習施設は大学によって運営されていると思うのですが、SKLVでは牛と馬の飼育をそれぞれ経済連とカナディアンキャンプ乗馬クラブにご協力いただき、基本的に、きちんと利益の追求をしていくということをコンセプトにしています。そうすることで、学生たちは超一流の畜産農家、馬の飼育者から実践的なノウハウを学ぶことができます。他大学では短期間でしか行えないような臨床実習も、時間をかけて行うことができる施設です。鹿児島大学だけではなく全国の学生に来ていただき、国際水準の教育を提供することで日本全体の獣医師のレベルが向上することを期待しています。

帆保 誠二 教授
帆保 誠二
教授

世界で広がっているアニマルウェルフェアの考え方は、近年日本でも理解が深まり、SKLVでの飼育環境にも取り入れられています。一つには牛にストレスがかからない広さを確保するということです。利益追求という面からいえば、一つの牛舎でなるべく多くの牛を飼育したいところですが、過密を避けることで牛の快適性を優先しています。また、ハエやアブ、蚊など、病気を媒介する害虫を防ぐための気流を発生させるファンを牛舎の壁に取り付けました。夏場の牛を見ていると、虫を追い払うために一日中尻尾を振って、かなりの労力を使っていますが、この牛舎では秒速3メートルの風が流れているので、虫が牛に止まることができません。さらに、牛の糞尿から発生する有害な物質や臭いも排出されるので、牛にとっても、そこで働く人にとっても快適な環境となるのです。

馬は、1頭ずつの個別飼育になっていますが、馬房の裏には馬同士でコミュニケーションを取ることができるサンシャインパドックを設置しました。これも日本には数カ所しかない非常に珍しい設備です。

産業動物に触れることが重要

小澤 真 准教授
小澤 真
准教授

SKLVでは、鶏が実際に飼育されている様子を学生に見てもらうことが、一番重要な部分だと考えています。近年、鳥インフルエンザのインパクトが非常に大きく、養鶏をされている農家では感染のリスクを減らすために外部の人間の立ち入りを制限しています。つまり、学生の実習を受け入れてくれる養鶏場がほとんどない状況で、これまで、鶏の飼育現場を知らないまま卒業してしまう学生たちが少なくなかったのです。獣医学部の学生たちが、卒業後、犬や猫など伴侶動物の獣医師、あるいは公務員になるケースが多く、畜産動物獣医師の不足が問題となっていますが、学生時代に畜産動物に触れる機会がなければ、職業としての選択肢に入る可能性も少なくなってしまいます。ですから、ここでの実習をきっかけに、家畜の獣医療に興味を持ってもらい、産業動物獣医師の道に進む学生が一人でも多くなってくれることが、この施設ができたことによる将来の大きな展望の一つだと思っています。

鶏エリアは、完全に大学が管理している施設なので、鶏舎そのものが研究要素の強い造りになっています。天井には鶏の様子を観察できる約50台のカメラを取り付けました。その画像から鶏の体重や活動量を1羽ずつ計測できるので、例えば感染症によって鶏の動きが悪くなってしまったとき、活動量の変化を瞬時に読み取れるようになっています。これは世界的にも類を見ない設備です。

アニマルウェルフェアに関しても、まずは、鶏がどんなときに快適さやストレスを感じるのかのデータを集め、研究する必要があります。そもそもアニマルウェルフェアは欧州で生まれた概念なので、日本の生産体制に適したアニマルウェルフェアの形を今まさに作っていこうとしている最中です。

施設の全体図

SKLVでは、曽於市と鹿児島大学がもつ資源や機能などの効果的な活用を図りながら相互に連携・協力し、畜産獣医学分野の拠点整備と地域創生を行います。

電気自転車(10台)とC+pod
電気自転車(10台)とC+pod
施設内はC+walk T
施設内はC+walk T
上段は曽於市の方々
上段は曽於市の方々
施設の全体図

馬エリア

カナディアン乗馬クラブと提携し、体験型観光乗馬やホースセラピーに活用するとともに、サラブレッドの再調教や良質な乗用馬の育成を行う。トレッキングエリアでは、約1キロの乗馬散歩を楽しめる。

厩舎
厩舎
馬場
馬場
屋内馬場
屋内馬場
馬トレッキングコース(工事中)
馬トレッキングコース(工事中)
クラブハウス
クラブハウス
ポニーふれあい広場
ポニーふれあい広場

地方創生エリア

地域住民が利用できる会議室やカフェスペースを整備。レンタルオフィスも5室用意し、畜産業に限らず、さまざまな職種の企業を募集する。

講義室(双方向性遠隔講義システムを設置)
講義室(双方向性遠隔講義システムを設置)
カフェスペース
カフェスペース
レンタルオフィス
レンタルオフィス

産業動物モデル飼育エリア(アニマルウェルフェア配慮型)

次世代閉鎖型牛舎

黒毛和牛350頭規模を一貫飼育。出産から出荷までのすべての工程での実習が可能。温度や湿度をセンサーで管理し、動物福祉に配慮した環境を創出。

次世代閉鎖型牛舎
研究用鶏舎

ブロイラー5,000羽規模。約50台のカメラを設置し、画像データから体重や活動量を推計できる。鳥インフルエンザに配慮し、冬季を除く3クール飼養。

研究用鶏舎

宿泊施設

男女それぞれ14部屋と、シャワー室、宿泊ランドリー、Wi-Fi環境を用意。施設内の移動に便利な小型モビリティは10台貸し出し可能。

シャワー室
シャワー室
宿泊ランドリー
宿泊ランドリー
宿泊部屋
宿泊部屋
近くに財部温泉
近くに財部温泉
学びの部屋
「保健学入門」 共通教育センター共通教育科目 根路銘 安仁 教授

「保健学入門」
共通教育センター共通教育科目 根路銘 安仁 教授

幅広い学問で健康を支える

教養基礎科目としての保健学入門は、自然科学としての医学と小児保健分野を中心に、医学以外の幅広い学問が人々の健康にいかに貢献できるかを考える手掛かりとなるような講義を目指す。そのために必要な理解力、情報収集力、課題の提案力、論理的記述力を習得するために、遺伝・感染症・成育(子どもの発達)の3つの分野を取り上げ、自然科学系と人文社会科学系の両方の側面からアプローチしていく。

医学とは異なる方法で
健康を守る保健学

人が健康な生活を維持していくためには、きわめて広範で包括的な領域の知識や協力が必要となる。「病気や怪我をしたとき、医療機関を受診すれば治療を受けられます。しかし、医学では解決できない健康もあります」と根路銘先生。例えば、鹿児島には鳥刺しを食べる文化があるが、鹿児島県は独自の「生食用食鳥肉の衛生基準」を条例で定め、社会制度を整えることで食中毒を未然に防ぎ、県民の健康を守るとともに、食文化も守っている。「専門外の講座なので最初は難しく感じていました」という法文学部1年の陶山尚汰さんだが、食中毒などの講義は自身の生活にも直結するため、身近に感じたと話す。「保健学入門」は、このような具体例を取り上げながら、人文社会科学系の知識が人々の健康にどのように寄与できるのかを考えていく授業だ。

子どもの成育発達に
貧困はどう影響するか

成育(子どもの発達)分野の「貧困」についての講義では、子どもの成育発達と環境との関係を、鹿児島市立学校小学校5年生・中学2年生の生徒と保護者を対象とした「子どもの生活に関するアンケート調査」の結果から考察する。授業冒頭、「給与が月額30万円とすると、健康保険料や税金が引かれて手取りは約24万円。皆さんはこのお金をどう使いますか」と問われ、学生たちは住居費、食費、通信費などの項目を参考にお金の割り振り方を考える。同時に、「手取り24万円は、多いか少ないか」についての意見が求められ、「一人暮らしや夫婦二人暮らしであれば生活に困らないと思うが、子育て世帯では厳しいのでは」「想像以上に税金が高い」などのコメントがモニターに映し出された。

では、手取りが約12万円弱の相対的貧困家庭では、どの項目が削られていくのか。娯楽だけではない。衣服や電気・ガス・水道、医療機関受診などの支出についても「困難に感じる」比率が高く、進学率への影響も顕著に表れている。「貧困は選択肢を奪います。それはつまり、人の自由と将来を奪うということです」。この問題は対岸の火事などではなく、鹿児島市では14.6%、7人に1人が相対的貧困家庭の子であり、母子家庭に限って見ていくとその6割が相対的貧困状態だ。さらに、国際比較で見ていくと、日本では諸外国よりも子どもの貧困率が高いという現状が浮かび上がってくる。しかし、人は自分が置かれている状況を「普通」だと認識するため、本人も貧困に気づいていない場合が多いという。親から子へと連鎖する貧困を断ち切るためには、どのような支援が必要だろう。

幼児教育の重要性

根路銘 安仁 教授

根路銘 安仁(ねろめ・やすひと)教授

鹿児島大学医学部保健学科 教授
[学位]博士(医学)鹿児島大学、2008年6月
[所属学協会]鹿児島県小児保健協会会長(2018年4月~現在)、鹿児島県母性衛生学会、日本小児保健学会、日本小児科学会、日本医学教育学会
[委員歴]鹿児島市こども家庭支援ネットワーク会議委員長、鹿児島県HTLV-1対策協議会、鹿児島県死因究明等推進協議会
[受賞歴]令和4年度鹿児島大学ベストティーチャー最優秀賞

1960年代にアメリカ・ミシガン州の幼稚園で開始され、その後追跡調査が続いている「ペリー・プレスクール・プロジェクト」の社会実験は、質の高い幼児教育プログラムへの参加が、将来の「良い成績」「より高い収入」につながり、人生をより良くできることを実証した。こうしたエビデンスをもとに、日本では2019年に幼児教育・保育の無償化がスタートしている。ここで根路銘先生は、「幼稚園や保育所、認定こども園の量を拡充する際、保育士など職員の質が伴わなければ重大事故につながる危険性があります」と警告し、職員のための教育制度や処遇改善の必要性を説く。

大学で学ぶそれぞれの専門分野は、健康の社会的決定因子とどのような関係があるのか。法文学部1年の成田爽花さんは、「保健学を学ぶことは、今後自分がどのように行動すれば良いのかを考えるきっかけにもなっています」と語る。授業の最後に、先生は「どうしてジャクソンは病院にいるの?」という問いから始まる寓話を紹介し、子どもが健康であるためには社会との関わりが不可欠であることを訴える。「すべての学問は、人の幸せのためにあると思うのです」

Research & Contribution 鹿大の研究

「明治期官僚・官職データ・アーカイブ(國岡DB)」の編集・作成
〜慶応4年から明治44年までの奏任官の個人名及び官職歴の情報を検索可〜

研究室の様子

國岡啓子特任講師
司法政策教育研究センター

明治期の官職名簿を
Excelファイルに入力

官職の氏名を収録する「職員録」。明治26年発行のものには、内閣総理大臣伊藤博文をはじめ、幕末志士の名が連なる
官職の氏名を収録する「職員録」。明治26年発行のものには、内閣総理大臣伊藤博文をはじめ、幕末志士の名が連なる

このデータアーカイブは現在、二つの配信データベース(以下DB)で構成されています。一つは(職員録DB)で、1868(慶応4)年から1911(明治44)年に発行された官員録・職員録と、「帝国大学卒業者」「文官高等試験及第者」「判事検事登用試験及第者」を含めた3万8400人余りの情報をExcel形式のファイルに入力したものです。

職員録は明治から現在まで続いている名簿ですが、当時は人名索引が付いていないため、特定の人物について調べたい研究者にとっては使いづらいという難点がありました。そこで、人名や官職のDBがあれば、そこに紐づく情報を簡単に検索できる、と考えたのです。

しかし職員録は各年のある日付の名簿でしかありません。調べている人の役職が、何年何月に異動したのかは、職員録ではわからない。明治16年になると官報が創刊されるので、人事異動の日付が調べられます。

二つ目の(任解日録DB)は、この官報と同様な人事情報を提供している「任解日録」という史料をDB化したもの。明治2〜7年という短い期間ですが、制度改正も人事異動も激しいのに、人事史料は少ない時期です。官報レベルの情報となれば、今後の研究に欠かせない史料です。

しかも、今回公開されたDBには、個々人の人事情報だけでなく、検索したい日付を入力すれば、その日の政府組織、そこに存在した役職、その役職にその日在職した人数が一覧できる表、更には、その日在職した人物とは誰か、を割り出せる職員名簿まで作成できるという、DBならではの画期的なツールをも含まれています。

DBの作成に取り掛かったのは25年ほど前、子育てに追われて自由に外に出られなくなった頃でした。「これなら自宅でできる」と思いながら始めたのが最初です。子供が寝ているわずかな隙にデータ入力を重ねていくと自分のやったことが少しずつ蓄積されていく。それがうれしくて続けてこれたのだと思います。

他の研究者も
活用できるものに

「明治期官僚・官職データベースWeb版」は、司法政策教育研究センターにて公開中
「明治期官僚・官職データベースWeb版」は、司法政策教育研究センターにて公開中

作成したDBは、当初から公開して多くの研究者に使っていただくことが目的でした。しかし、そのためには記載されている情報が確認できる様、出典の頁数なども必要です。人名では新字旧字、異体字などの表記のバラつきや、同姓同名の方の区別にも苦慮しました。さらにその人物が、他のどの資料で調べられるのかというところまで記載しています。25年の作成期間のうち半分はそういったチェックや編集の時間です。そうやって完成したDBの公開方法を模索していたとき、米田先生が「明治の官僚DBですか。それなら鹿児島でやるべきだ」と申し出てくれたんです。

明治初期政府の
全体像を焙り出す

今迄のような印刷物による人事情報が今回のようにDBになることで、誰が、いつ、何の役職についていたかの調査は大幅に簡略化されました。これをどう利用し、何を導き出すのか、またDB自体も、どう広め、どう保存していくのかという点も、日本史学会の中で考えていかなければならないと思います。

今年1月に公開配信となった任解日録DB(明治2〜7年)は、今後さらに拡張し、明治17年までをカバーする予定です。これによって官報の発行以前の高級官僚の人事異動情報が、すべて網羅されることになります。私としては、今後数十年に亘って、研究者にとって必要な情報を作りだせるのではと、今からワクワクしているんですよ。

研究のポイント
  1. 明治期の官僚・官職の検索データベースを作成。
  2. 個々人の職歴、官職経験者の検索が容易となるだけでなく、官僚全体の数値的動向も割り出せる環境が整う。
  3. データベースの配信、共用、保存の観点からの議論創出の方向にも寄与したい。
國岡 啓子(くにおか・けいこ)特任講師

國岡 啓子(くにおか・けいこ)特任講師

聖心女子大学大学院修士課程修了1990年、青山学院大学大学院博士課程後期課程単位取得後退学1994年、鹿児島大学司法政策教育研究センター客員研究員2021年。近代日本官僚の人事情報を対象に公開方法を研究。
■所属学会:日本史研究会
■研究分野:近代日本官僚史
一次史料として扱われる原本を加工しない状態で、誰でも多角的に利用できるようなシステムで提供し、研究に寄与することを目指す。

共同研究者メッセージ

鹿児島大学法文学部附属司法政策教育研究センター 米田 憲市(よねだ・けんいち)センター長/教授

鹿児島大学法文学部附属司法政策教育研究センター
米田 憲市(よねだ・けんいち)センター長/教授

國岡先生のデータベースは、情報量はもちろん、国内外の研究者などのプロユースに堪える内容と信頼性を備え、先祖捜し、小説やドラマ、ゲームの創作活動など、幅広い目的でご利用いただいています。このほか、司法政策教育研究センターでは、条例のデータベースや司法制度改革などの資料を発信しているほか、専門職を対象とする各種セミナー、法曹志願者支援など、様々な社会貢献の取組みを行っています。
鹿児島大学司法政策教育研究センター

Research & Contribution 鹿大の研究

炭素系薄膜を用いた光駆動デバイスの開発
〜柔軟性・科学的安定性がある炭素素材のため、無電源で遠隔操作が可能〜

研究室の様子

青野祐美 教授
大学院理工学研究科 電気電子工学プログラム

可視光を照射すると
形状が変わる物質を発見

光を浴びて変形するアモルファス窒化炭素薄膜。配線がなくても光が届けば動かせるところが魅力
光を浴びて変形するアモルファス窒化炭素薄膜。配線がなくても光が届けば動かせるところが魅力

自然界に存在する物質の中で最も硬いものはダイヤモンドですが、理論的にダイヤモンドよりも硬いと予測がなされている立方晶窒化炭素(β-C₃N₄)という幻の物質があります。この立方晶窒化炭素を合成しようという試みの過程で生まれたのが「アモルファス窒化炭素薄膜」です。

ともに炭素の同素体であるダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)の中間には、高硬度で切削工技や剃刀の刃などに使われるダイヤモンドライクカーボン(DLC)をはじめとする多様な無機炭素系薄膜材料があります。その一つであるアモルファス窒化炭素薄膜は、不規則な原子配列のため残念ながらダイヤモンドほど硬くもなく指輪に使える大きさにはなりません。しかし、コーティング材として使えるので、絶縁体のダイヤモンド、金属並に電気を通すグラファイト、その中間の半導体的性質を持つDLCや窒化炭素で「オールカーボンの太陽電池を作ろう」という目標のもと実験を開始し、電気的な特性を調べていたところ、光に応答して変形することに気付いたのです。

光を当てると動いてしまう物質は、太陽電池には使えません。ただ、光エネルギーを力学的エネルギーに変換する無機系材料は珍しく、現在、動くメカニズムの解明を進めるとともに、太陽電池以外の用途を検討中です。

炭素と窒素のみの
シンプルな構造

アモルファス窒化炭素薄膜はスパッタ法のほか、化学気相(CVD)法やレーザーアブレーション法などでも作ることができ、材料の組み合わせとしては純粋な炭素と純粋な窒素だけというとてもシンプルなものでありながら、作製方法によって異なる性質を示すことがわかっています。アモルファス状態は原子の並びが結晶のように綺麗に決まってはいないため、作る条件を変えると物性も大きく変わってしまうため、たくさん実験をして、よく動く炭素と窒素の最適な組み合わせを探しています。

物体に吸収された光エネルギーが力学的エネルギーに変換される過程には、光熱変換によって生じた熱による膨張・収縮、化学的に分子の形が変わる光異性化、光起電力効果による電圧で生じる光磁歪効果などがありますが、アモルファス窒化炭素薄膜の光誘起変形はそのいずれにも当てはまらない新しい現象です。可視光のどの色でも動くものの色によって動きが変わり、特に緑色で大きく動きます。可視光のどの色の光でも動くため、私たちの日常生活のどこかで利用できるのではないかと考えています。

特性を活かした
用途の可能性を検討中

学生が作製した炭素でできた球状粒子の走査型電子顕微鏡写真。ふわふわとした綿毛のような形状をしており、直径は髪の毛の太さの50分の1から100分の1程度
学生が作製した炭素でできた球状粒子の走査型電子顕微鏡写真。ふわふわとした綿毛のような形状をしており、直径は髪の毛の太さの50分の1から100分の1程度

そもそも私が行っている研究は、新しい機能を持った材料を合成し、その性質を調べ、適した場所で使ってもらうことで社会をよりよくすることが目的です。例えば、半導体の機能がアップするとパソコンの処理速度が向上し、膨大なデータを収集できるようになります。太陽電池についても、効率よく安全に電気を作るためには、そのための材料が必要です。私の専門は電子工学ですから、材料の電子的な性質の評価や電気的な応用は得意ですが、今回の実用化については、幅広い分野の専門家の方々に協力いただかなければならないと感じています。幸い、アモルファス窒化炭素薄膜の光駆動の現象は、国内外の研究者から興味を持たれています。私たちの体を構成する元素の一部でもある炭素と窒素のみの無毒な材料であることから、医療の分野でも応用できるかもしれません。

研究のポイント
  1. 新しい機能を持った材料の開発中に発見された、可視光のほぼ全域の波長に応答し、光の on/off で制御可能な新しい光 - 力学的エネルギー変換材料の一つ。
  2. 作製方法や条件により、硬度や電気抵抗率などの物性値が大きく変化します。
  3. グラファイトと窒素ガスのみを原料とした安全で比較的安価な材料のため、さまざまな用途に応用可能と考え、連携して研究できる企業や研究者を求めています。
青野 祐美(あおの・まさみ)教授

青野 祐美(あおの・まさみ)教授

2002年、岐阜大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2001年4月、防衛大学校電気情報学群機能材料工学科助教。講師、准教授を経て、2018年12月より鹿児島大学大学院理工学研究科工学専攻電気電子工学プログラム教授。
■所属学会等:応用物理学会、ニューダイヤモンドフォーラム
■研究分野:半導体材料、機能性材料の探求。特に炭素を使ったアモ ルファス薄膜やナノ粒子の創造とその電気的・光学的物性の評価。

共同研究者メッセージ

東北大学多元物質科学研究所 寺内 正己(てらうち・まさみ)教授

東北大学多元物質科学研究所
寺内 正己(てらうち・まさみ)教授

青野先生のテーマである炭素材料は、我々の身の回りに普通にある一方、ノーベル賞が二つ(C60とグラフェン)出ているなど、その奥深さは計り知れません。その一端を青野先生との共同研究でのぞかせていただいております。10年ほど前に共同研究がスタートし、いくつかの新たな事実を突き止めてきました。しかし、現時点において、アモルファスCNx膜がなぜ再現性良く光変形するのか?という根本的疑問に答えを見いだせていません。元素同士の結合によってはダイヤモンドともなる炭素原子の七変化の奥深さの理解に少しでも近づけるよう、今後とも共同研究をよろしくお願いしたいと思います。

OB OG interview 卒業生メッセージ
香川大学創造工学部 准教授 北村 尊義 きたむら たかよし
2009年鹿児島大学法文学部卒業。京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了後、立命館大学情報理工学部助手、助教を経て、香川大学創造工学部造形・メディアデザインコースに准教授として着任。幅広い領域から人の暮らしを良くする研究に取り組んでいる。

人生を決定づける恩師との出会い
「自分の進むべき道が見えた」

香川大学創造工学部 准教授北村 尊義きたむらたかよし
散策がより楽しくなるOnion watch。円環の開いた部分は観光スポットへの方角、色はジャンル、大きさは距離を示す
散策がより楽しくなるOnion watch。円環の開いた部分は観光スポットへの方角、色はジャンル、大きさは距離を示す
2022年初秋から香川大学医学部附属病院の中庭で開催されている「空色ポストプロジェクト」
2022年初秋から香川大学医学部附属病院の中庭で開催されている「空色ポストプロジェクト」

中島大輔教授の研究者としての姿勢に魅了され、自身も研究者を目指すようになったという北村さん。「目を輝かせながら、研究内容を話す先生の姿が強く印象に残っています。目標であり、心の支えでもある人物に出会え、刺激的な大学生活を送ることができました。私の研究・指導スタイルは中島先生からの影響が本当に大きい。今でも心強い存在です」。

北村さんの主な研究内容は世の中の困りごとを発見し、解決するアイデアを生み出して人々の暮らしを良くすること。例えば、ホスピタルアートの一環として取り組む「空色ポスト」。自分自身や大切な人へあてた手紙を色とりどりの風船に託し、空に届ける空色ポストは、心の中の願いや想いをカタチにすることで、少しでも前向きになってほしいという願いが込められています。研究実績はホスピタルアートのほか、行動促進やコミュニケーション支援、楽器習得支援、観光支援、防災減災、コスメトロジーなど多岐にわたります。また、「間違っているかもしれないがやってみよう」をモットーに、学生のやる気とアイデアを引き出す指導にも注力。「積極的な学びの姿勢に不安を感じさせない大学初年次教育」に向けた活動が評価され、心理的安全性AWARD2023最高位のPlatinumRing を受賞しました。

「鹿児島は、上を目指す人たちを押し上げようとする雰囲気がある。特に、鹿児島大学は〝どんどん上を目指そう、活躍しよう。あなたの頑張りは全力で応援するから〞という風土が根づいているような気がします。そういった環境に感謝しながら積極的に学んでほしい」と後輩へエールを送りました。

KADAI TODAY

次の50年へ向けて、大学病院新外来診療棟・病棟竣工

次の50年へ向けて、大学病院新外来診療棟・病棟竣工

鹿児島大学病院では、「21世紀に輝くヒューマントータルケア病院」を目指し、平成17年度から病院再開発計画に着手してまいりました。

このたび、令和2年3月より着工した外来診療棟・病棟(A棟)が令和6年1月に竣工したことを記念して、3月9日に竣工記念式典・祝賀会を挙行しました。

同棟は、鉄骨鉄筋コンクリート造 免震構造の地下1階・地上8階建てで、本院の敷地のほぼ中央に位置し、手術部のある中央診療棟や救急集中治療棟、病棟 (B棟・C棟)等との連携を図り、病院機能を強化する役割を担います。

記念式典は、佐野輝学長のあいさつにより開会し、来賓の方より祝辞を賜った後、坂本泰二病院長より再開発概要の報告と謝辞がありました。続いて、テープカットが行われ、出席者約120名が新棟の完成を祝いました。式典後には、同棟の特色である重症ユニットHCU(高度治療室)や一般内科・外科外来などの施設の見学がありました。

祝賀会は、SHIROYAMA HOTEL kagoshima(城山ホテル鹿児島)に会場を移して行われ、病院長あいさつ、来賓祝辞の後、田頭吉一鹿児島大学財務・施設担当理事の乾杯で始まり、和やかな雰囲気に包まれる中、佐野学長の謝辞にて閉会となりました。

鹿児島大学病院は、外来診療棟・病棟(A棟)竣工を新たなスタートとし、次の50年へ向けて、使命と情熱を持って、信頼され安心して受診いただける病院を目指してまいります。

竣工を記念しあいさつする佐野学長
竣工を記念しあいさつする佐野学長
テープカットの様子
テープカットの様子
機能紹介パネルの展示も行われました
機能紹介パネルの展示も行われました
  • 経営協議会学外委員等による学内視察を実施

    経営協議会学外委員等による学内視察を実施

    鹿児島大学では、10月30日、経営協議会学外委員(学外有識者)並びに学長、役員等による学内視察を実施しました。

    この学内視察は、本年7月に実施した「経営協議会学外委員と教育研究評議会評議員等との意見交換会」(経営協議会と教育研究評議会との合同懇談会を実施し、学外有識者との意見交換の機会を充実させることを目的に実施している会)とは別に実施されたものです。

    今回は、鹿児島大学病院A棟で建設中の施設の状況等を、医学部・歯学部では冠橋補綴学の基礎実習及び臨床実習生向けのVRを用いた救急部の実習等を視察し、各説明者に対して多くの質問があがるなど、経営協議会学外委員に本学の状況をより理解いただく有意義な機会となりました。

  • 「薩摩川内市を中心としたサーキュラーエコノミー実証事業の推進に向けた連携協定」を締結

    「薩摩川内市を中心としたサーキュラーエコノミー実証事業の推進に向けた連携協定」を締結

    2月16日、本学と九州電力株式会社(代表取締役執行役員池辺和弘)、サーキュラーパーク九州株式会社(代表取締役春木優)及び薩摩川内市(市長田中良二)の4者は、薩摩川内市を中心に行う循環経済と脱炭素化の推進による持続可能な社会の構築を目指す事業(サーキュラーエコノミー実証事業)の実施に関して協定を締結しました。この協定は、4者がそれぞれ保有する資源を活用し、連携協力して具体的な取組を推進することが目的です。

    協定締結に先立ち、本学南九州・南西諸島域イノベーションセンター藤枝繁センター長より協定の概要について説明があり、協定書へ署名後、各機関代表者より挨拶がありました。

    本協定に基づき、4者によるサーキュラーエコノミー実証事業を推進していくこととしております。

    • 7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
    • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
    • 11 住み続けられるまちづくりを
    • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
  • 【寄稿】「樟寿会便り」 ー樟寿会総会で4年ぶりに懇親会を実施ー

    【寄稿】「樟寿会便り」 ー樟寿会総会で4年ぶりに懇親会を実施ー

    鹿児島大学名誉教授の会である樟寿会は、昨年11月25日(土)前田芳實新会長のもと、「第20回樟寿会総会・記念講演会」を稲盛アカデミーにて開催し、会場36名、オンライン15名の会員が参加しました。新型コロナ禍のため自粛してきた「懇親会」も、稲盛記念館内のヴェジマルシェ’19にて4年ぶりに実施することができました。

    「総会」の冒頭で、物故者9名の御霊に黙祷を捧げ、続いて令和4年度以前名誉教授授与者5名を含む新入会員16名の紹介を行いました。会長あいさつの後、今年度4月新役員体制になってからの活動報告、令和4年度会計報告が承認されました。

    「記念講演会」は、農学部の侯德興(こうのりおき)教授に『「食と健康」~地域食材との出会いと取り組み~』の演題でお話しいただきました。座長は、侯教授が連合農学研究科博士課程時代の主指導教員である前田会長にお願いしました。侯教授は鹿児島産のさまざまな食材の食品機能性について、遺伝子細胞レベルから動物実験・ヒト介入試験に至る研究手法で明らかにされ、その成果を多くの国際誌に発表したり、商品開発にまで応用したりされてきました。まさに地方大学のミッションに合致する素晴らしい講演内容でした。

    本会顧問でもある佐野輝学長のあいさつの中で、近年鹿児島大学は研究分野も含め、さまざまな分野で評価順位を上げており、特に日経新聞大学イメージ調査で「大学の取組み」全国1位、「就職力」全国2位を達成したとの紹介がありました。佐野学長のガバナンスのもとで着実に鹿児島大学が発展していると実感できました。

    「懇親会」には、佐野輝学長、橋本文雄理事、侯德興教授の招待者3名と会員32名が集いました。記念写真撮影の後、フルコースの料理に舌鼓みを打ち、ワインや焼酎などを飲みながら親交を深めました。余興として、今年度は○×形式のクイズを工夫したりして、笑顔と歓声のうちに4年ぶりの「懇親会」を堪能できました。


鹿大「進取の精神」支援基金への寄附者様ご芳名一覧

鹿大「進取の精神」支援基金へのご協力を賜りました皆様に心より御礼申し上げます。
お受けいたしました寄附金は、基金の目的に沿って有意義に活用させていただきます。
ご寄附いただきました皆様方への感謝の意を込めまして、ご芳名等を掲載させていただきます。
なお、ご意向により、ご芳名等の掲載をご希望されない寄附者様につきましては、本誌に掲載いたしておりません。
今後とも、鹿児島大学へのご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

令和6年3月
国立大学法人鹿児島大学
学長 佐野 輝

【2023年1月から2023年12月までの寄附者様】(順不同・敬称略)

一般資金

個人
二十万円
橋本 文雄
飯田 裕子
野口 愛子
十万円
石窪 奈穂美
坂巻 祥孝
比嘉 健裕
岩井 久
畝田谷 桂子
五万円
髙村 和弘
重井 徳貴
四万円
八代 利香
松成 裕子
二万円
青﨑 哲也
遠矢 良樹
一万円
山下 侯人
六千円
羽生 信
千円
辻 潔
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
山下 憲一郎
田中 賢治
吉田 宏
永友 孝幸
岡田 昇之
赤崎 修
税所 將晃
高野 真好
山崎 吉朗
坪田 信一郎
山岡 大記
花谷 良助
青木 俊憲
素村 秀樹
三井 薫
Hamciuc Monica
松島 啓時
久保 博巳
美坂 英樹
小湊 葉月
立和名 幸洋
小山 忠博
佐野 輝
前田 やよい
米山 政晴
井上 尚美
坂元 英樹
根路銘 安仁
下田 智子
木方 十根
西澤 保孝
大脇 哲洋
内田 純郎
森川 勇一
赤崎 敏也
榎田 英樹
小原 恭子
団体等
五十万円
公益財団法人米盛誠心育成会
三十万円
株式会社久永
二十万円
鹿児島大学OB&OG
 ゴルフ大会実行委員会
エスオーシー株式会社
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
株式会社エム・エム・シー
有限会社タケイチホーム
株式会社しんぷく
株式会社金海堂
マルセ工販株式会社
掲載を希望されない寄附者様
四十三名

リサイクル募金

ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
佐藤 壮司
枚田 邦宏
渡辺 友香子
梅木 康博
宮崎 将尊
鹿児島大学共通教育課
松見 あずさ
大野 和朗
藤本 知恵子
井原 慶一郎
岩下 貴子
高橋 啓三
太田 道明
小林 樹青
掲載を希望されない寄附者様
三十三名

修学支援事業基金

個人
五十万円
徳重 光郎
二十万円
佐伯 英二
早川 裕
十二万円
田中 達朗
一万円
八幡 兼成
上田 猛志
髙橋 宏德
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
有銘 工
福本 一法
西並 眞吾
山下 憲一郎
並松 靖子
及川 豊
掲載を希望されない寄附者様
二十四名

歯学部基金

五十四万円
鹿児島大学歯学部後援会
十万円
持増 芳文
五万円
中玉利 友哉
永瀬 幸治
太田 博見
医療法人仁慈会太田歯科医院
一万円
三宅 一範
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
肥後 毅
君野 岳
萩原 和繁
掲載を希望されない寄附者様
十二名

鹿児島大学病院基金

二百万円
重畠 一洋
百万円
森 修
五十万円
嘉戸 英二
一般財団法人親和会
十万円
山崎 正人
前田 潤一
下堂薗 恵
医療法人和芳会小林中央眼科
神薗 祐治
五万円
萩原光治
株式会社アーステクノ
上平 守
佐藤 秀夫
三万円
梅田 圭一郎
山口 大地
三渕 浩
赤崎 安昭
本石 まゆみ
一万円
又木 雄弘
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
永野 聡
中村 智子
重富商事株式会社
 代表取締役岩崎浩一郎
北原 兼文
中原 真理
森 秀樹
寺薗 英之
三井 薫
吉留 正次
渡辺 京子
上田 和弘
大堀 純一郎
榎添 利恵子
株式会社しんぷく
日髙 貴志
古川 良尚
家村 和千代
大脇 哲洋
奥 忠明
谷 淳至
西谷 佳浩
萩元 美恵野
中村 雅之
掲載を希望されない寄附者様
二十四名

練習船基金

ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
村岡 祐輔
木村 行雄
江川 晴雄
山田 雄一
川村 婦美子
濱崎 健一
掲載を希望されない寄附者様
四名

医学部医学科教育基金

二万円
宮原 広典
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
木原 菊次郎
木原 卓子
木原 翔太郎
柘植 勇夫
永岡 重孝
伊香 浩子
山﨑 裕充
村岡 祐輔
三井 薫
谷 淳至

教育学部附属学校園基金

十万円
上谷 順三郎
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
医療法人桃花会
及川 豊
鵜飼 竜太郎
掲載を希望されない寄附者様
六名

動物病院基金

十万円
福吉 寿枝
前原 和子
八万円
原田 直美
一万円
石井 秀治
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
中村 智子
大沢 一貴
株式会社トータルハウジング
掲載を希望されない寄附者様
四名

工学部教育研究支援基金

二十万円
影浦 惠智子
一万円
上田 猛志
ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
林 光介
長野 賢治
星野 幸弘
藤安 良昌
東 樹志
掲載を希望されない寄附者様
四名

鹿児島大学理学基礎研究支援金

掲載を希望されない寄附者様
一名
with KU パートナー企業紹介

株式会社 サタコンサルタンツ

株式会社 サタコンサルタンツ
貴社の業務やSDGsへの取り組みなどについて教えてください
社会インフラ(道路・橋梁・河川・農業用施設など)の計画・測量・設計・調査を通じ、持続可能な基盤構築に貢献することをモットーに、地域社会と協力し、強靭で安心して暮らせる自然豊かな鹿児島のインフラ提供を目指す企業です。
本学の学生に向けて応援メッセージをお願いします!
鹿児島大学の皆さんへ。夢への挑戦は素晴らしい冒険です。困難に立ち向かい、未来への信念を持って諦めずに進む姿勢は、素晴らしい未来を築く力を秘めています。新しい鹿児島を築く旅に、弊社の仲間と共に挑戦しよう! 未来のリーダーたちよ!

読者アンケートのご協力のお願い

本誌に関する皆様からの率直なご意見・ご感想についてお待ちしております。

鹿大「進取の精神」支援基金へのご寄附のお願い

鹿大「進取の精神」支援基金は、2015(平成27)年の一般資金創設から、趣旨にご賛同いただいた多くの皆様方からご支援をいただき、現在では、修学支援事業基金や学部等支援基金*などの特定資金を加え、本学の教育・研究活動充実のため、大切に活用させていただいております。一般資金には、ご不要となりました本などの物品をご提供いただき、その査定金額をご寄附いただくリサイクル募金もございます。皆様からのご支援をお待ちしております。

【お問い合わせ先】
鹿児島大学総務部総務課広報・渉外室基金・渉外係
TEL:099-285-3101

*学部等支援基金:歯学部・鹿児島大学病院・練習船・医学部学科教育・教育学部附属学校園・動物病院・工学部教育研究支援基金

Growing! ~鹿大生の横顔~

Growing! ~鹿大生の横顔~
鹿児島大学工学部4年 
穴井 千愛さん
鹿児島大学教育学部4年
今井 健晟さん

第3期SKYCAMP
憧れのパイロットへ一歩前進

子どもの頃からパイロットに憧れていた今井健晟さん、穴井千愛さんは第3期SKYCAMP(2023年2〜3月)に参加。この春、パイロット養成機関である崇城大学(熊本市)で約2年間、履修証明プログラム生として実践的な知識や技能を習得します。2週間のSKYCAMPは、様々な学部・研究科から集まった8人の仲間と共に、座学、シミュレーター訓練を通して操縦の基礎を学び、実際に航空機の操縦も体験。「8人で情報共有しながらの飛行は、チームの一体感を味わえました。コックピットから見る沖永良部島の絶景には感動!(今井さん)」、「ひとつの目標に向かって仲間と支え合い、達成を目指す〝エアマンシップの精神〞を学べる場。細かなコミュニケーションを意識しました(穴井さん)」。

憧れのパイロットへ一歩近づいた2人。「私たちの使命は地域航空を永続的・安定的に支えること。精いっぱい勉強して地域に貢献したい(穴井さん)」、「亡き祖父はパイロット。訓練生に選ばれた時、祖母は涙を流して喜んでくれました。自分が操縦する飛行機に祖母を乗せてあげたい(今井さん)」。2年間の訓練を経てパイロットライセンスを取得後、JACのパイロットとして鹿児島と種子・屋久島、奄美群島を結ぶ航路の運航を担う予定。2人のパイロットへの道は始まったばかりです。

操縦飛行体験プログラム「SKYCAMP」。鹿児島空港に隣接するフライトトレーニングセンターで座学やフライトシミュレーターによる操縦訓練、飛行体験を受講しました
操縦飛行体験プログラム「SKYCAMP」。鹿児島空港に隣接するフライトトレーニングセンターで座学やフライトシミュレーターによる操縦訓練、飛行体験を受講しました
互いに高め合える同士、良きライバルに出会えたSKYCAMPでの経験は一生の宝。航空業界に興味がある人だけでなく、いろんな人にもぜひ参加してほしいです!
互いに高め合える同士、良きライバルに出会えたSKYCAMPでの経験は一生の宝。航空業界に興味がある人だけでなく、いろんな人にもぜひ参加してほしいです!
日本初導入のATR型機フルフライトシミュレーター。JAC就航地の鹿児島・奄美・喜界島などの空港モデルを搭載している
日本初導入のATR型機フルフライトシミュレーター。JAC就航地の鹿児島・奄美・喜界島などの空港モデルを搭載している

私の座右の銘

桜梅桃李(穴井さん)

他人と比較してしまうクセがある私に高校時代の恩師が教えてくれた言葉です。それぞれが特性を発揮して見事な花を咲かせるように、私も私だけの花を咲かせたい。これから自分の個性をもっと磨いていきたいと思います。

穴井 千愛 さん

私の座右の銘

意志あるところに道は開ける(今井さん)

高校生の頃、部活動で悩んでいた私に、祖父が贈ってくれた言葉です。くじけそうな時にこの言葉を思い出すと勇気づけられます。長い人生、苦労も挫折も味わうと思いますが、自分の意志をもって前向きに頑張っていきたいです。

今井 健晟 さん
CircleFlix 水泳部

CircleFlix

水泳部

  一  泳  専  心  

水泳競技とは?
バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎは50〜200mまで、クロールは50〜1500mまでの距離を泳ぎ、タイムを競う競技です。
水泳部の魅力は?
普段の練習で、レースに向けてスピードや持久力を高める努力をしたことや逆に怠ったこと、そして精神状態までもが、レース本番で100分の1秒までタイムとして表れるところです。
活動内容について教えて下さい。
週に5回練習しており、そのうち1回は陸上で、4回は水中で行っています。陸上では泳ぐのに必要な筋肉を鍛え、水中ではスピードや持久力を高めています。

DATA ※2023年10/7 時点

部員数
20名[男12名・女8名]
活動場所
鹿児島大学プール・鴨池公園水泳プール
活動日時
18:00~20:00[月火木金]
9:00~11:00[土]

SNS & CONTACT

お問合せ・入部希望等はこちらから