今号の表紙 「鹿大祭」

鹿児島大学が誕生した翌年の昭和25年、学生たちが11月15日の開学記念日の前後約2~3週間をかけて、第1回「開学記念祭」を実施。昭和36年に「大学祭」と名称を改め、現在でも学友会の一大行事として、展示企画、模擬店、ステージ、講演会等を行っています。


はらぐちあつこ(イラストレーター)

鹿児島大学法文学部法政策学科卒。電力会社勤務を経て、桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン科修了。東京のデザインコンサルティング会社でVI・CIデザイン制作業務の他、歴史絵本制作にも携わる。2015年より峰岸達氏に師事。2020年より福岡市に移住し、フリーランスのイラストレーターとして活動中。

鹿大祭

「進取の精神」で持続可能な社会づくりを推進

鹿児島大学・SDGsへの取り組み

『南九州から世界に羽ばたくグローカル教育研究拠点』を目指す本学は、南九州の「知(地)の拠点」として、これまで地域の環境保全のための教育・研究活動および社会貢献に取り組んできました。今後も、これまで蓄えてきた「知の力」を惜しみなく発揮し、SDGs関連教育の提供、人材育成、また社会的課題を解決に導く研究の実践などを積極的に推進していきます。

林業を体系的に学び直す
「次世代林業マイスター養成講座」
素材生産の現場において、
高度な森林管理・経営を実現できる人材を育てる
9 産業と技術革新の基盤をつくろう 8 働きがいも経済成長も 12 つくる責任、つかう責任 15 陸の豊かさも守ろう

農学部附属演習林・技術総括 芦原 誠一 技術専門職員
農学部附属演習林・技術総括
芦原 誠一
技術専門職員

森林を適切に管理し、木材資源を持続的に利用していくことは、日本のみならず世界的な課題です。農学部附属演習林では、大学が有する知的資源と林業界との共同事業実践の中で培った経験を活かした社会人向けの宿泊型研修会を実施。環境への配慮と、再生可能な地域資源の有効利用とを両立できる技術者の育成に貢献しています。

100年の歴史を持つ高隈演習林にはスギやヒノキを中心とした人工林が1000ヘクタールあり、林業の素材生産システムなど森林管理に必要な知識を多面的に学ぶことができる
100年の歴史を持つ高隈演習林にはスギやヒノキを中心とした人工林が1000ヘクタールあり、林業の素材生産システムなど森林管理に必要な知識を多面的に学ぶことができる

マネジメントを学べるプロ向けの研修会

写真の範囲はほとんどが演習林。全体ではこの4倍以上の面積がある(左奥に桜島)
写真の範囲はほとんどが演習林。全体ではこの4倍以上の面積がある(左奥に桜島)

今、日本では戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎え、国産材を「育てる時代」から「利用する時代」へと移行していますが、林業の労働力不足が懸念されています。2021年時点で林業従事者数は約6万人。その人数で日本の山を守っている状況です。

人材不足を解消する取り組みとして、林野庁による担い手育成の研修制度「緑の雇用事業」が2003年に始まり、その後、2007年に林業従事者の学び直しの場として本大学の研修会がスタートしました。

この講座は、実際に山で木を切ったり育てたりする仕事の現場親方を育てることが目的で、伐採現場のリーダーや木材生産業の現場リーダーなど、すでに基本的な技能を身につけている方が対象となります。なので、チェーンソーの使い方や木を植える技能を学ぶというような研修会ではありません。例えば、会社で「もっと生産性を上げましょう」となったときに、どういう情報を集めてどういう設備・機材を使えばよいのか、環境への配慮と、事業の持続性を両立させる現場管理の方法や理論的な裏付けを教えていくことが大学の役割になります。

鹿児島大学の農学部に森林科学コースがありますが、就職先はどちらかというと行政職やメーカーが多く、現場のプレイヤーになる人は少ないという現状があります。では、どうすれば現場の専門家を増やすことができるのかというところで、こういった学び直しの機会が重要になってくるのだと思います。ひいては、初級編から中級、上級までを一貫して学べるような場を作ることで裾野が広がっていくのではないでしょうか。

林業に携わって山の木を切ろうとするとき、純粋に「山が好き」というだけでは仕事として難しい側面もあるんです。しかし、山の全体像が見えてくると、もっと面白みを感じてもらえると思うので、講義では仕事としてのアウトラインが見えてくるような提案を心がけています。

「学びを続けるリカレント教育の時代に

農学部附属演習林・主任 牧野 耕輔 助教
農学部附属演習林・主任
牧野 耕輔
助教

無料の研修会もある中、こういった有料の講座に「人が集まるの?」という意見も当初はありました。それでも関東から飛行機を使って来てくれる方がいたり、複数回参加してくださる事業体があったりということで手応えを感じています。「社員全員を連れていけないから来てほしい」という出前講座の要望もあります。そうしてこの講座を17年間続けています。当初の内容は、作業日報による工程管理や作業道づくり・間伐の手法などを中心に据えていました。そして最近では、ドローンによるレーザー照射で山の在庫管理を行うスマート林業についても学んでいます。また、ICTを導入することで林業界がどう変わっていくのか、世界の木材建築の潮流なども含め、林業というものを俯瞰して見るための講義も行っています。

修了生からは、さらなるステップアップ研修を実施してほしいとの声が出ています。学ぶことで新たな疑問が生まれ、さらに学びたいと思われた方の中からは、鹿大の社会人大学院(林業コース)に進学された方が8名もいらっしゃいます。リカレント教育の時代にふさわしい取り組みを、進取の精神で推進してきました。

受講者と講師が双方向に学び合える場

受講者と講師が双方向に学び合える場

昨年度までで、受講生は210名、修了生188名となりました。九州の林業従事者の40〜50人に1人が鹿児島大学で勉強し直していることになります。演習林で学んだ人たちの、現場での活躍ぶりや新たな学習ニーズをリサーチすることで、次の展開につなげていきたいと考えています。

農学部というところは実学の領域で、実際の社会で役に立つことを学問として取り扱っています。ですから、現場のプレイヤーの方々と接点ができるというのは産官学でいうところの産との関わりができるということで、そこで私たちが学ぶこともたくさんあるんです。現場の方の困りごとがあったとして、こちらが思う仮説があるとき、「一緒に検証してみよう」という流れができる。そんな、相乗効果も生まれてきています。

受講生は2泊3日の研修を4回受けることになるのですが、この研修を通じて同業者の友人ができるというのも一つの成果になっているように思います。合宿ですから、授業が終わって解散というわけではなく、皆さん夜遅くまで多くの話題で盛り上がります。同業者ならではの情報交換、問題意識の共有などが進んで、業界全体にとっても意義深い日々になっていると感じます。受講生の平均年齢は36歳で、若い方から60代後半の方まで年齢も幅広く、若い人や新人の方と熟練の方とが垣根を超えてお互いの話を聞ける場にもなっています。そういったことも含めて、林業の未来につながる研修会であると思っています。

「続けていく」というのが大きな目標。
多くの学生に体験してもらいたい
県内の無歯科医離島11島で「離島歯科巡回診療同行実習」実施
4 質の高い教育をみんなに 3 すべての人に健康と福祉を 10 人や国の不平等をなくそう 17 パートナーシップで目標を達成しよう

鹿児島大学歯学部では、昭和55年から離島歯科巡回診療を通じて島民の歯科保健の改善にあたってきた。平成19年からは臨床実習の一環として学生を同行させ、離島や僻地医療に貢献できる医療人の育成を目指している
鹿児島大学歯学部では、昭和55年から離島歯科巡回診療を通じて島民の歯科保健の改善にあたってきた。平成19年からは臨床実習の一環として学生を同行させ、離島や僻地医療に貢献できる医療人の育成を目指している
鹿児島大学病院 成人系歯科センター 冠・ブリッジ科 南 弘之 教授
鹿児島大学病院
成人系歯科センター
冠・ブリッジ科
南 弘之 教授

三島村、十島村、口永良部島という無歯科医離島での歯科診療は、島の方々に医療を提供するだけでなく、同行する学生たちにとって、「人はどこに住んでいても平等に医療を受ける権利があること」「医療人は平等に医療を提供する義務があること」を実感し、それを実現する方策・器材を開発する研究の動機づけとなる貴重な機会となっています。

最小限の道具を最大限に使いこなす

離島住民など、歯科医療の受診が困難な県民のために巡回診療を行う「こじか号」。2022年度から運用されている5代目こじか号は、感染症対策の機能も充実している
離島住民など、歯科医療の受診が困難な県民のために巡回診療を行う「こじか号」。2022年度から運用されている5代目こじか号は、感染症対策の機能も充実している

離島地方に歯科医療を提供しようという「離島歯科巡回診療」は、鹿児島県歯科医師会に委託された鹿児島県の事業で、そこへ赴く歯科医師を鹿児島大学が派遣しています。対象となる離島は、三島村の3島、十島村の7島、そして口永良部島です。この11島へ、各島2〜3日の行程で年間2回ずつ訪問しています。そもそもは、歯科医療を提供することが目的の事業だったのですが、続けていくうちにとても盛り上がってきたため、「教育にも活用させていただこう」ということで、臨床実習の一環として、学生や研修医が参加するようになったという経緯があります。

巡回診療体制は、歯科医師2名(成人担当と子ども担当)、歯科医師会の事務局スタッフ1名、歯科衛生士2名(または研修歯科医2名)、そして学生2名の7名です。学生たちは医療チームに同行して、物品の運搬や診療体制の構築、診療の見学や介助などを行っています。

訪れる島には歯科医院や病院のような医療施設はないので、こじか号という小型の歯科巡回診療車と、組み立て式の診療用ポータブルユニットを持ち込んで診療を行っています。大学であれば、患者さんのニーズに応じた専用機器や道具がそろっていますが、それらを全て持って行くことはできないので、自分たちで持ち込んだ最小限の道具を駆使して、さまざまな診療を行うことになります。そのため、一つの道具を多用途に使う工夫や臨機応変な対応力が必要で、それが離島診療の面白い部分でもあります。私自身、大学にいるときは入れ歯に関する治療を専門的に行っていますが、離島では専門外のこともひと通りはできなければなりません。離島診療を経験することは、そういった意味でも勉強になりますし、普段使っている道具の汎用的な使い方を学ぶ機会にもなっています。

医療過疎地の課題を解決する技術の進歩に期待

島内にポータブルの診療機材を持ち込み、それらを組み立てて簡易診療所を設置する
島内にポータブルの診療機材を持ち込み、それらを組み立てて簡易診療所を設置する
こじか号内部。器材は一通りそろっており、X線撮影も可能
こじか号内部。器材は一通りそろっており、X線撮影も可能

この巡回診療を行う上で課題だと思うのは、完璧に治療を終えてあげられないことがあるということです。例えば「歯が痛い」という患者さんの痛みをなくしてあげることは巡回診療の滞在中でもできるのですが、それは歯科治療として完全に「治った」というわけではありません。治療としては、最終的にしっかり塞いでいくといったことまでしなければならないのですが、滞在期間中にそこまでのことができないことがあります。ですから、患者さんには「奄美や本土に行って、治療の続きをしてくださいね」と伝えざるを得ない、ということが結構あります。また、島には医療従事者として看護師が1〜2名いらっしゃいますが、医師や歯科医はいませんから、子どもが転倒して歯を折ってしまったというような外傷の連絡を受けた場合も、看護師さんに応急処置や島外への受診の手筈をお願いするしかないんです。そこがもどかしいところです。

治療で歯の被せ物を作る際も、離島ならではの難しさがあります。通常、粘土のような材料で歯型をとって技工士に被せ物を作ってもらいますが、離島診療では、とった歯型を本土に持ち帰って作るので、被せ物が完成しても次の巡回時期まで患者さんに待っていただかなければなりません。光学印象(歯型をデジタルスキャンする口腔内スキャナー)を使えば、離島からでも歯型の3Dデータを送ることができて、滞在期間中に被せ物を作るところまではできるのですが、今はまだ、それをすぐに届ける手段がありません。なので、近い未来、島へ届けられるドローンのような輸送手段が開発されないかと期待しているところです。そういったところが解決すれば医療過疎地の状況もより良くなりますし、いろんな意味で島で暮らしやすくなるのではないでしょうか。

地域づくりにまつわる課題を自分で判断し、
批判的に理解する
鳥の目と虫の目で捉える「持続可能な地域づくりと教育」に関する専門教育
4 質の高い教育をみんなに 11 住み続けられるまちづくりを 12 つくる責任つかう責任 15 海の豊かさを守ろう 8 働きがいも経済成長も

与論島の自立的発展を支える住民の学習機会の現状と課題について調査する学生(ゼミ調査合宿)
与論島の自立的発展を支える住民の学習機会の現状と課題について調査する学生(ゼミ調査合宿)
法文学部・法経社会学科・地域社会コース 小栗 有子 准教授
法文学部・法経社会学科・地域社会コース
小栗 有子 准教授

1990年代に提唱された「持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)」では、既存の教育を批判的に問い直し、方向転換・再構築することを求めています。地域づくりにおける持続可能性の問題と教育との関係とは? ここでは、誰も排除しない社会のあり方を学び、社会の変革者として考え通せる力を養います。

「持続可能性」と「教育」の両面から捉える地域づくり

プログラムの一環で現地で実習。島の巡検や集落散策を行い、学んだごとを受講生同士で共有するワークショップ
プログラムの一環で現地で実習。島の巡検や集落散策を行い、学んだごとを受講生同士で共有するワークショップ

「持続可能な地域づくりと教育」とは、地域をつくるという営みを「持続可能性」と「教育」の両面から捉え直すということです。この講義では、地域づくりにおける「持続可能性」の問題について理解し、教育の視点からみた地域づくりの課題を自ら探り当てることができるようになることを目標にしています。講義の前半で、そもそも持続可能性とはどういうことなのかを学び、後半では教育が、開発や持続可能性の問題とどう結びつくのかという話をしています。

持続可能という言葉は非常に矛盾に満ちています。学生には、地球規模の課題と、日常生活で私たちが隣り合わせている課題を結び付けて考えるとき、「鳥の目」と「虫の目」が必要になると伝えています。それは例えば、地域づくりの営みとして「ゴミを減らそう」という課題があるとき、その課題を誰が何に基づき判断し、行動しようとしているのかを現場の当事者の視点から考えたり、もっと理論的に考えたりするということです。その営み自体を批判的に考察し、意味を理解した上で主体的に判断し、行動する力を引き出すことが、ここでいう「教育」になります。具体的な事象であれば理解は容易ですが、同時に、複雑な問題は抽象化しなければ全体像を捉えることができません。この講義では、抽象の話を理解していくために具体的な例を用いて話をするという構成になっています。

リゾート開発の問題を当事者の立場で考える

奄美群島民が、奄美〈環境文化〉の価値や魅力を再確認し、暮らしや仕事に生かす社会人向け教育プログラムを2021年より実施
奄美群島民が、奄美〈環境文化〉の価値や魅力を再確認し、暮らしや仕事に生かす社会人向け教育プログラムを2021年より実施

講義では、学生に事前にテキストを読むレポートを提出させ、授業中にその解説をするという形式のほか、リゾート開発のケースを扱ったビデオを視聴したり、そこにどういった問題があるのかをロールプレイを用いて分析していく手法も取り入れています。開発にまつわる問題というと、普通、自然への影響を真っ先に思いつくかもしれませんが、実は社会、政治、経済などさまざまな問題が複雑に絡み合っています。実際、学生たちは、リゾート開発に対してビデオ視聴前は「自然破壊」や「公害問題」というイメージを持っていたのですが、視聴することで社会的、政治的課題にも気付いていきます。

教材として取り上げたのは、沖縄のリゾート開発において実際に持ち上がった問題で、戦後、米軍に接収されていた土地が日本に返還されるにあたり、この土地をどう利用するのかという議題です。学生たちは、班に分かれ、それぞれ地主や行政、開発する事業者、漁協、住民など立場の違う人になりきってロールプレイを行います。そうすると、地主役からは「収入がなくなるのは困る」、漁協役からは「漁ができなくなるのでは」といった意見が上がり、その他にも「農業や畜産ができなくなる」「その場所にある文化財はどうするのか」「日照権はどうなる」などの具体的な声が出てきます。講義を受けた学生たちは、その話し合いの過程で開発の問題をリアルにつかんでいくことになり、「グループワークによる対話を通して、深く理解することができた」との感想が上がっています。

意思決定の場に、誰がどのように参加しているのか

持続可能な開発について考えるとき、その話し合いの場には、女性や子ども、先住民も席についていなければならないということは、国際的には90年代から言われていることですが、現在の日本の現実はどうでしょう。学生たちには、社会的に弱い立場であったり、より自然に近い人たちも参加していけることが重要なのだという話をしています。そこで、「開発問題と持続可能性と教育をどう結びつけますか」という話になってきます。持続可能な開発の教育というのは、既存の教育を新しく方向付け直すこと。今、私たちが学校の中で教えられている知識、技能、価値観、問題に対するアプローチの仕方などを全部点検し直すということです。

例えば日本の開発教育では、国外のことをこれまで一生懸命やっていたけど、自分たちの足もとに目を向けていなかったことを反省し、地域を掘り下げ、世界とつながる教育実践へと転換を図りました。その理論を学ぶにあたって、学生たちは自分たちが過去に経験した教育実践を振り返ることを通して、何が実践上の課題だったのかを具体的に理解していきます。明らかになるのは、「主体的に参加出来ていなかった」という共通の気づきです。

図1:ハートの参加のはしご(出典:ロジャー・ハート「子どもの参画」萌文社)
図1:ハートの参加のはしご(出典:ロジャー・ハート「子どもの参画」萌文社)

ここに「参加のはしご」というものがあります(図1)。例えばイベントに参加した子どもたちがそこで歌を歌ったとします。子どもたちはその時イベントの趣旨や意味を理解して参加しているのでしょうか。「参加」という行為には、はしごのようにいくつかの段階があり、最も参加の度合いが高いのは、自分の意思で決定し、周りを巻き込んでいる状態です。これは、自発性や主体性が引き出されている状況といえます。学生は、これまで自分は「はしご」の何段目を経験したことがあるのか、その経験ができたのはなぜなのかを考え、そのときの教育者側がどういう意識で、どんな工夫を行ったのかというところまで学びを展開させていきます。そうやって最終的に、地域の持続可能性の問題を鳥の目と虫の目で考察しながら取り組むことの必要性と教育とのかかわりをつかんでいくのです。

現在、さまざまな自治体や企業がSDGsに対しての取り組みを行っています。学生たちも将来、どこかで「持続可能な地域づくりを実施しましょう」という現場に関わったとき、そこで掲げている目標は誰の意思を反映させているのか、そこに誰が参加しているのか、参加者の主体性は高められているのかというところに注意を払いながら、地域の持続性の問題を鳥の目と虫の目で捉え、そこにおける対話と学びのあり方を考えていける力をこの講義を通じて体得してもらいたいと願っています。

学びの部屋
「Sustainable Development Goals and Their Impact on Society」かごしまグローバル教育プログラムのプログラム・スキル科目 共通教育センター ギュレメトヴ・ニコライ 講師

「Sustainable Development Goals and Their Impact on Society」
かごしまグローバル教育プログラムのプログラム・スキル科目
共通教育センター ギュレメトヴ・ニコライ 講師

SDGs「Why?」のに答える

地域の課題をグローバルな視点で捉え、課題解決に向けて行動できる能力の育成を目指す「かごしまグローバル教育プログラム」における「プログラム・スキル科目」の一つ。授業では、SDGsの「7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)」と「12(つくる責任つかう責任)」、2つの目標について英語でのディスカッションを交えながら理解を深め、グローバルな学びに必要な知識と語学力を養成していく。

実践的な議論を英語で

「世界中にSDGsの知識は広がっています。日本も先進国ですから、できるだけ多くの人、特に若者を巻き込んで、意識を高めていかなければなりません」。そう語るギュレメトヴ・ニコライ先生は、ブルガリア出身の英語講師。担当する「Sustainable Development Goals and Their Impact on Society」は、SDGsの「どの目標を「いつまでに」達成しなければならないのかといった議論を英語で行う講義だ。欧米の大学に倣った実践的なグループワークやディスカッションも多く取り入れた授業形式のため、受講する学生たちには自分の意見を英語で表現できる力が求められ、受講生の英語レベルは中級以上(TOEIC500〜700点程度)を想定している。

「授業で、私は英語しか使いませんが、プレッシャーをかけようというわけではないんです。授業中に電子辞書や通訳アプリを使っても構いません。授業の進行具合も学生たちの理解度に応じてフレキシブルに調整します」。実際、受講生の薗田真音さん(法文学部人文学科3年)は、「知らない英語が使われていても、その場で調べることができるので不安はありません」と語り、受講生たちは日本語での授業同様、落ち着いて参加している様子が伺える。

視覚的にわかりやすく

電気やガスなどわたしたちの生活に欠かせないエネルギー。しかし、世界ではいまだに5人に1人が電気を利用できず、30億人が調理や暖房のための燃料として、木材、石炭、木炭、動物の排泄物に依存している。一方、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料を用いたエネルギー生成では、排出される温室効果ガスが世界の総排出量の約60%を占め、気候変動の大きな原因となっている。授業では、アジアやアフリカ、欧米など世界の状況を踏まえ、先進国の責任や日本のエネルギー事情の課題を考えていく。

グループワークでは、化石燃料に替わるエネルギー源として期待される太陽光、風力、そして原子力について、「安定的な供給」「二酸化炭素の排出」「安全性」「コスト」など、それぞれの利点や欠点をワークシートを元にピックアップ。途中、「風をつかまえた少年(The Boy Who Harnessed the Wind)」として知られるウィリアム・カムクワンバ(※)のスピーチ動画や、バイオ燃料の供給国であるインドネシアで起こっている森林破壊問題についてのドキュメンタリービデオを視聴し、自分の考えをまとめていくための手がかりとする。「ビジュアルな授業を心掛けています。必要なデータや資料も、テキストではなくピクチャの方が一目で分かりやすく、とても便利です」。

※2002年、人口の2%しか電気を使うことができなかったアフリカのマラウイで、当時14歳だったウィリアムは、図書館の本を頼りに風車を製作。自家発電に成功した。

考察力を養うグループディスカッション

ギュレメトヴ・ニコライ 講師

ギュレメトヴ・ニコライ講師

鹿児島大学総合教育機構共通教育センター 外国語教育部門 講師
鹿児島大学SDGs推進本部 学域選出教員
[学位]修士(文学)鹿児島大学法文学部2014年
[所属学会]日本英文学会2013年~現在
[専門分野]英米文学、英語教育

「太陽光、風力、原子力、3つのエネルギー源のうち、最も大きな利点、最も重大な欠点があるのは?」「最も解決しやすい欠点、解決しにくい欠点はどれか?」。ワークシートを用いたグループディスカッションでの問いに受講生が答えると、ギュレメトヴ先生はすかさず「Why?」と、その理由を尋ねる。自分の意見を述べるためにはSDGsの目標達成に向けてどういった行動が必要なのか、グローバルかつ多面的に捉えていく考察力も必要だ。英語力の向上を目指して受講したという山口愛心さん(法文学部人文学科3年)は、「これまで、SDGsの取り組みや世界の現状について詳しく知る機会は少なかったのですが、ビデオや資料を見ながらの授業でより深く学ぶことができます」と、英語力の向上に止まらず、国際的視野の広がりも実感しつつある。

Research & Contribution 鹿大の研究

温泉水99®の血糖値に対する有効性と安全性ならびに腸内環境変動を検証
〜第1回 超異分野学会 鹿児島フォーラムにて最優秀賞・鹿児島フォーラム賞を受賞〜

研究室の様子

柴田 啓佑 循環器専門医
医学部 心臓血管・高血圧内科学

クロスオーバー試験で
温泉水の効果を検証

以前から、ミネラルを含む温泉水には血糖値を下げる効果が期待されていて、その作用には腸内細菌が関係しているのではないかと推測されていました。そこで、垂水市にお住まいの血糖値が高めの方、いわゆる糖尿病予備軍の方々20名にご協力いただき、pH9・9と高いアルカリ性を示すミネラルウォーター「温泉水99®」を使用して検証したといのが今回の研究です。

臨床試験を行うにあたっては、「ただの水を飲んでも同じ結果になるのではないか」といった見解を打ち消し、「確かに温泉水の効果ですね」と評価されるようクロスオーバー法を採用しています。まず、参加してくださった20名の被験者を2つのグループに分け、一方は温泉水99®を、もう一方は備蓄水(災害用にストックされている普通の水)を、一日に500ml、3回に分けて飲んでいただきました。その後、飲用を休むウォッシュアウト期間を1カ月設けてから、次は逆に、温泉水を飲んでいたグループは備蓄水を、備蓄水を飲んでいたグループは温泉水を、さらに1カ月間飲んでいただき、血液や尿、血圧、便などの値を試験前と試験後で比較しています。

温泉水によって
コレステロール値が改善

桜島火山帯地下750mの水源から湧き出す「温泉水99®」は、pH9.9、硬度1.7のミネラルウォーター
桜島火山帯地下750mの水源から湧き出す「温泉水99®」は、pH9.9、硬度1.7のミネラルウォーター
新たな研究アイデアの創出を目的とした「超異分野学会鹿児島フォーラム」での研究・事業発表にて最優秀賞を受賞
新たな研究アイデアの創出を目的とした「超異分野学会鹿児島フォーラム」での研究・事業発表にて最優秀賞を受賞

その結果、どのような変化があったのかというと、残念ながら血糖値の状態を評価する「HbA1c」には統計学的な差を認めることができませんでした。ところが、総コレステロールから善玉コレステロールを引いた値(non-HDLコレステロール)は改善されていることが示唆されました。non-HDLコレステロールは動脈硬化の進行にも関係しています。

皆さん、健康診断などでコレステロール値が高いと「このままでは脳梗塞、心筋梗塞の危険性が高まりますよ」と指摘され、適度な運動や食生活の見直しを勧められると思います。それでも数値が下がらなければ、薬による治療が加わります。そうやって病気を予防していくことが一般的ですが、毎日飲む水を替えるだけで予防効果が得られるのであれば副作用の心配もなく、取り入れやすいのではないでしょうか。

今回はあくまでも温泉水99®を使った、20名という比較的小規模の研究だったので結果を断言することはできないと考えています。non-HDLコレステロールが改善したメカニズムも解明できておらず、今後、腸内細菌叢との関係も検討していく予定です。それを通して、「他の温泉水でも効果が示されるのか?」「適切な摂取量はどの程度か?」など研究していければと思います。しかし、まずは地元鹿児島のもので前向きな結果が出たことをうれしく思いますし、将来的に脳梗塞や心筋梗塞など心血管病の発症リスクを減らす研究につながればと思っています。

研究で得られた結果に
真摯に向き合う

研究をするとき、研究者の心の内には、ついつい「こうなってほしい」という思いがあるかもしれません。例えば、今回の研究であれば「血糖値が下がったらいいな」というような。しかし、出てきた結果をフラットな気持ちで見つめ直し、そこから科学的に言えることを「正しく読み取る」ということは、常に胸に刻んでおかなければならないと思います。また、今回の試験では、協力してくださった垂水の方々や病院の先生方、水の手配をしてくださった方など、多くの方にサポートいただき、一緒に協議しながら進めていきました。これまでの研究ではそういった経験がなかったので、関わってくれたすべての方に感謝しています。

研究のポイント
  1. 温泉水と血糖値の関連をクロスオーバー方式の臨床試験で調査。
  2. 血糖値の変化は見出せなかったが、non-HDL コレステロール値の改善が認められる。
  3. non-HDL コレステロール値が下がるメカニズムと腸内細菌との関連性を検討していく。
柴田  啓佑(しばた・けいすけ)循環器専門医

柴田 啓佑(しばた・けいすけ)循環器専門医

川崎医科大学卒業 2010年3月、鹿児島大学循環器・呼吸器・代謝内科学(当時)入局 2012年4月、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科入学 2021年~腫瘍循環器を中心とした臨床・研究を行う。
■所属学会等 : 日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本腫瘍循環器学会
■研究分野 : ○腫瘍循環器
高校時代は百人一首部に所属。「持統天皇の『春過ぎて~』は好きな歌の一つです。日本書紀に彼女が最初に飲泉をしたと記録されており、不思議な再開をしたように思いました」

共同研究者メッセージ

鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学 大石 充(おおいし・みつる)教授

鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学
大石 充(おおいし・みつる)教授

“鹿児島県特産品の科学的な後ろ盾となる”ことが、我々の一つの大きな責務であると考えています。今回の臨床試験は、臨床薬理学の専門家が作成した厳密なプロトコールの下で行われた精度の高い臨床研究であり、今回得られた温泉水99®の効果は十分な科学的裏付けが伴っていると考えています。今後も鹿児島の良さへの科学的な支えになることに貢献できればと考えています。

Research & Contribution 鹿大の研究

養殖魚の健康状態を基準とした飼料原料の評価
〜魚の健康を指標に養殖飼料を評価する手法を開発〜

養殖の様子

横山 佐一郎 助教
水産学部 水産資源科学分野

飼料原料の評価を通して
養殖業の効率化に貢献

栄養学とは、生き物が外部から接種したものが体の中でどのように変換され、どのような機能を示すのかといったことを追いかけていく学問です。その中で、社会のニーズに応えることを目的に行われている研究の一つが本研究になります。

これまで、魚の養殖用配合飼料の原料は、主に魚の成長を基準として評価されてきました。しかし、養殖魚の健やかな育成を達成するためには、魚の健康状態を指標とした原料の選択も重要な課題となります。養殖魚が健康に育つということは、生残率の向上や病気予防に直結し、養殖業の効率化に貢献できるからです。養殖業において人間が関われることは意外と少なく、そんな中で毎日できることが「餌をやる」という行為です。特別なことをしなくとも、配合飼料を変更するだけで魚が健やかに成長できる、そんな飼料を作ることが目標です。

本研究では、まず魚の健全な育成に有効な飼料原料や栄養成分を検索するところからはじまり、その分析方法を確立します。そして、対象となる成分を含んだ飼料と含まない飼料、それぞれで飼育した魚やエビの血液や免疫細胞、内臓の機能などを検査し、健康状態や生育状況を比較しています。研究の対象となるのは、例えばカンパチやクルマエビなど鹿児島県での養殖が盛んな魚種がほとんどで、接種する成分にどのような機能があるかということをそれらの魚種別に評価しています。これによって、多くの原料の中から魚種や成長段階に適したものを選択できるようになります。

魚が「食べてくれる」
餌であることが大前提

配合飼料の原材料の多くはイワシなどの魚粉。そのほか、大豆や昆虫などもある
配合飼料の原材料の多くはイワシなどの魚粉。そのほか、大豆や昆虫などもある
独自設計の配合飼料で育てたバナメイエビの免疫細胞
独自設計の配合飼料で育てたバナメイエビの免疫細胞

養殖用配合飼料の原料には、「性能」と「経済性」の両方が求められますが、これらは相反する部分もあります。そのため、配合飼料を作る際、魚が規定量をちゃんと食べてくれるかということも重要で、それが私の研究のもうひとつの柱になっています。魚は、餌なら何でも食べるというわけではありません。同じ餌でも魚種によって食べる量が違いますし、季節や水温によっても食べ方が変わるんです。生簀に餌を投げ入れたとして、実際に食べている量が少なければ効率が悪くなってしまいますよね。

魚が食べてくれる餌を作るには、味覚や食感、口のサイズを考慮したり、胃の中の滞留時間を調整したりしなければなりません。これまで、マグロは人間が作った人工的な飼料をほとんど食べてくれなかったのですが、これらの研究の結果、初めてマグロの稚魚が食べてくれる餌を作ることができ、「マグロの稚魚用配合飼料」として特許出願に至りました。

動物福祉の考え方を
水産養殖の分野にも

最近は、アニマルウェルフェア(動物福祉)」という考え方がEUをはじめとした各国で広まりつつあります。これは、飼養動物に対して「飢え、渇き及び栄養不良からの自由」「恐怖及び苦悩からの自由」など5つの自由を確立し、家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境を目指すものです。日本でも、家畜のアニマルウェルフェアに対応する飼育環境の指針が発表されています。今はまだ水産の分野までは及んでいませんが、アニマルウェルフェアに則った配合飼料を作ることを目指し、魚が苦痛を受けていないか、興奮した状態になっていないかということをホルモン濃度などの数値で評価する研究もはじめています。私たちの研究は生き物の命を扱って行っています。ですから、責任を持ってデータを出し、きちんと今後に活かしていくということも常に心掛けていたいと思っています。

研究のポイント
  1. 実際の養殖魚の飼育を通じて、健康や成長に有効な栄養素の機能を評価する。
  2. 配合飼料の原料メーカー、原材料メーカー、飼料メーカーなど、企業との共同研究を積極的に行い、製品を完成させる。
  3. 研究の成果を特許庁に出願することにより、知的財産として成果報告する。
横山  佐一郎(よこやま・さいちろう)助教

横山 佐一郎(よこやま・さいちろう)助教

子どものころから魚が好きで、大学進学する際、地元山口県よりも南にある水産系の学部を希望し、鹿児島大学へ。2006年、鹿児島大学大学院連合農学研究科修了(博士、水産学)、同年より鹿児島大学水産学部資源化学講座助手を経て現在、同学部水産資源科学分野、増養殖学コース助教
■所属学会:日本水産学会、日本水産増殖学会、World Aquaculture Society
■研究キーワード等 : 定量分析、栄養素、食料生産、摂餌、成長、健全性、動物福祉

共同研究者メッセージ

スクレッティング株式会社
村田 卓也(むらた・たくや)さん

私は横山先生の研究室に所属し、効率の良い配合飼料原料を探索するために、大学内だけでなく南は奄美大島に泊まり込んで、先生と二人三脚で様々な魚類を飼育してきました。現在は世界最大のシェアを誇る配合飼料メーカーにおいて、健康な魚づくりを目的とした研究開発に携わっています。学生時代に学んだ魚類をあつかうセンスや栄養に関する知見を活かして、養殖産業に資する配合飼料を開発すべく、さらなる共同研究を進めています。

OB OG interview 卒業生メッセージ
鹿児島市立美術館 第16代館長 楠元 香代子
霧島市出身。彫刻家。鹿児島市立美術館 第16代館長。1972年に鹿児島大学教育学部美術科に入学し、中村晋也氏に師事。「林芙美子像」や「坂本龍馬・お龍新婚湯治の碑」、「丹下ウメ胸像」など県民に親しまれる作品を手掛けている。日展会員。

人は出会いによって成長する
「十人十色だからおもしろい」

鹿児島市立美術館 第16代館長楠元 香代子くすもとかよこ
高見橋の欄干彫刻「維新の母と子供たち」。写真は上流側の欄干に施された子供たちの群像。
高見橋の欄干彫刻「維新の母と子供たち」。写真は上流側の欄干に施された子供たちの群像。

国内を代表する女流彫刻家であり、鹿児島市立美術館・第16代館長でもある楠元香代子さん。彫刻に初めて触れたのは、意外にも本学に入学してからだったそう。「絵は昔から描いていましたが、方向性を見失っていた時期。生まれて初めて全身全霊を注ぎ、無我夢中になれたのが彫刻だったんです。あの衝撃は今でもはっきりと思い出せるほど」。

2000年9月、中村晋也氏の取材に同行して訪れたスリランカがその後の創作活動に大きな変化をもたらした。写真は「サラスヴァティーII」
2000年9月、中村晋也氏の取材に同行して訪れたスリランカがその後の創作活動に大きな変化をもたらした。写真は「サラスヴァティーII」

現在も師と仰ぐ彫刻家の中村晋也先生と出会い、立体の奥行きのある世界に魅了され、彫刻・造形・芸術とは何なのかを探求し続けた4年間。「中村先生をはじめ、同じ目的意識をもった仲間との出会いは何物にも代えがたい宝です。授業やハードな制作三昧の日々の中、節目節目に催す「飲み会」では、飲んで歌って、芸術談義で熱くなったり、途方もない夢を描いたりして、共に濃密な時間を過ごしました」。今でも交流は続いており、学生時代に仲間と3人で立ち上げた「鹿児島女流彫塑会」は毎年展覧会を開催。来年で50回目を迎えます。

4年間で人生の方向性や自分の軸を定めていった楠元さん。学生生活を送るうえで意識してほしいことは、チャレンジすること、出会いを大切にすることだといいます。「十人十色だからおもしろい。いろんな人と出会ってたくさんのことを吸収してください。人との出会いは気づきの連続であり、学びとなり、エネルギー源になります。オンラインの交流も必要な時代だとは思いますが、そこだけの世界に縛られてはもったいない。生身の人間と触れ合う、向き合うことでしか得られないこともあるでしょう。出会いの中で自分はどんな人間で何が向いているのか、そしてどう生きていきたいかが見えてきます」。

KADAI TODAY

鹿児島大学共同獣医学部附属南九州畜産獣医学教育センターの事業説明会並びに
曽於市南九州畜産獣医学拠点の施設内覧会を開催

飼養環境を自動制御するウィンドウレスの次世代平飼いモデル鶏舎。バイオセキュリティとアニマルウェルフェアを向上させる設備や、鶏の体重推計や活動量解析を行うための天井設置の監視カメラが設置される
飼養環境を自動制御するウィンドウレスの次世代平飼いモデル鶏舎。バイオセキュリティとアニマルウェルフェアを向上させる設備や、鶏の体重推計や活動量解析を行うための天井設置の監視カメラが設置される

本学では、9月30日、全国の畜産・獣医学生を対象に実践的な畜産獣医学教育を提供する共同獣医学部附属南九州畜産獣医学教育研究センター(通称:SKLV〔スクラブ〕センター)の事業説明会、並びに本学が SKLV センターを設置した鹿児島県曽於市の南九州畜産獣医学拠点の施設内覧会を開催しました。

この事業説明会並びに施設内覧会には、文部科学省高等教育局国立大学法人支援課の小川課長補佐、公益社団法人日本獣医師会の境専務理事をはじめ、全国16の機関・大学から61名の参加がありました。

はじめに、本学の岩井理事・副学長(企画・社会連携担当)並びに曽於市の五位塚市長から挨拶があり、全国各地から多くの方々に参加いただいたことに感謝の意が表されました。

次に、本学共同獣医学部の三角学部長から、国際(欧米)水準の畜産獣医学の実践的学部教育と専門的学び直し教育の拠点として、全国から畜産・獣医学部生を受け入れていくとの展望が語られ、動物福祉に配慮した国際レベルの農場衛生管理、食の安全、環境保全に取り組む畜産農場の近未来モデルにおける産業動物の臨床獣医学や動物衛生学に関する実習プログラム、産業動物獣医師・畜産技術者を対象とした最新の家畜防疫技術など、専門的学び直し教育プログラムについての説明があり、施設(次世代閉鎖型牛舎、次世代平飼いモデル鶏舎、馬飼養施設等)の機能を交えながら SKLV センターの事業が紹介されました。

続いて、曽於市職員から南九州畜産獣医学拠点の各施設について概要説明があった後に、施設の内覧会が行われました。参加者は、産業動物モデル飼育エリア(牛・鶏の閉鎖型モデル畜舎)、馬飼養エリア(廐舎、屋内馬場、屋外馬場、ホーストレッキングコース)、地方創生エリア(教育・研究棟、連携・宿泊棟〔cafe レストラン併設〕)の各施設を見学し、本学共同獣医学部教員や曽於市職員による説明に熱心に耳を傾けていました。

三角学部長によるSKLVセンターの事業説明
三角学部長によるSKLVセンターの事業説明
新たな換気方式を採用し、夏場にも十分な風速を確保し体感温度を快適にする次世代閉鎖型牛舎
新たな換気方式を採用し、夏場にも十分な風速を確保し体感温度を快適にする次世代閉鎖型牛舎
馬飼養施設には、廐舎、屋内馬場、屋外馬場、ホーストレッキングコースが整備される。写真は廐舎の概要説明の様子
馬飼養施設には、廐舎、屋内馬場、屋外馬場、ホーストレッキングコースが整備される。写真は廐舎の概要説明の様子
  • 令和5年度鹿児島県高等学校長と鹿児島大学との教育懇話会を開催

    挨拶する佐野学長
    挨拶する佐野学長

    6月20日、鹿児島県高等学校長協会との共催により「令和5年度鹿児島県高等学校長と鹿児島大学との教育懇話会」を開催しました。

    この教育懇話会は、高等学校教育と大学教育との一層の連携を図るため、県内の高等学校長と本学の関係者が意見交換を行う場として毎年設けられておりますが、今年度は、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが未だ立たないことから昨年度に引き続き懇談の内容を入試関係事項に絞って実施。本学から39名、高等学校から65名、県教育委員会から1名の計105名が出席しました。

    はじめに、本学の佐野輝学長と鹿児島県高等学校長協会の前田光久会長(鶴丸高等学校長)から挨拶があった後、鹿児島大学からの情報提供として、中等・高等教育接続センターの小林元気准教授より令和6年度入試の変更点、離島出身者支援の奨学金、医学部医学科及び共同獣医学部における修学資金貸与制度(県または国の事業)について、説明がありました。

    引き続き懇談に入り、前半は、高等学校長協会から寄せられた本学の入学者選抜に係る現在の状況や今後の検討状況に係る質問・要望事項について、後半は、本学から寄せられた本学入学者選抜方法に関する進路指導の状況や受験生の反応等に係る質問・要望項について、活発な意見交換が行われました。最後に本学の武隈晃理事(教育担当・副学長)から、閉会の挨拶がありました。

    • 質の高い教育をみんなに
  • 令和5年度名誉教授称号記授与式を挙行

    令和5年度名誉教授称号記授与式を挙行 令和5年度名誉教授称号記授与式を挙行

    6月23日、稲盛記念館において、令和5年度名誉教授称号記授与式を挙行しました。

    名誉教授の称号は、本学の教授として15年以上在籍し、教育上、学術上または本学の運営上特に功績があった等の方に授与するものです。今年度は15名の先生方に名誉教授の称号を授与することとなり、式に出席された10名の先生方に、佐野輝学長からお一人ずつ名誉教授称号記が授与されました。

    佐野学長は挨拶の中で「先生方のご功績を称え、名誉教授の称号記を授与できますことを心からお慶び申し上げます」と祝辞を述べるとともに、法人化前後も含め大学改革が求められている激動の時期にも、本学をしっかりと支えてくださったことへの謝意を述べました。

    続けて、今後も18歳人口の減少や苦しい財政状況など、本学を取り巻く環境は厳しいが、教職員一丸となり、地域社会ならびに国際社会に貢献する『光り輝く』鹿児島大学を目指したいと決意を表しました。

    閉式後には記念撮影が行われ、同館1階の懇談会場では、和やかな雰囲気の中で歓談が交わされました。

    • パートナーシップで目標を達成しよう
  • 鹿大、奄美群島拠点奄美分室を整備

    鹿児島大学では、奄美群島における地域活性化の中核的拠点として、教育・研究及び社会貢献活動の推進と、地域課題の解決を目的として、平成27年4月に奄美大島(奄美市)に設置(平成31年4月に現在の奄美群島大島紬会館6階に移転)した国際島嶼教育研究センター奄美分室を拡充し、奄美群島拠点の機能強化のためセミナールームと多目的ルームを本年7月に整備しました。また、本整備を機に新たに理事(企画・社会連携担当)を委員長、関係理事及び部局長等をメンバーとする奄美群島拠点運営委員会を設置。9月に第1回を開催し、奄美群島での各部局の活動状況や課題を共有するとともに、今後の奄美群島における展開について意見交換を行いました。

    この拠点整備を記念するシンポジウムを奄美分室のセミナールームを会場に、対面とWebのハイブリッドで12月16日(土)に開催する予定です。

    鹿大、奄美群島拠点奄美分室を整備
    鹿大、奄美群島拠点奄美分室を整備
    • 質の高い教育をみんなに
    • 住み続けられるまちづくりを
    • 気候変動に具体的な対策を
    • 海の豊かさを守ろう
  • 経営協議会学外委員と教育研究評議会評議員との意見交換会を実施しました

    意見交換会の様子(発言中の佐野学長)
    意見交換会の様子(発言中の佐野学長)

    鹿児島大学では、経営協議会学外委員(学外有識者)と役員・部局長等で構成する教育研究評議会評議員との意見交換会を、7月31日に実施しました。

    この意見交換会は、経営協議会と教育研究評議会との合同懇談会を実施するとともに、学外有識者との意見交換の機会を充実させ、多様な関係者の意見、期待を踏まえた大学経営にり組むことを目的に実施されたものです。

    意見交換会では、「経営協議会・1年を振り返って」のテーマで、令和4年9月から令和5年4月までの経営協議会の協議事項において出された学外有識者からの意見に対する本学の対応について、多くの質問があり、各部局長等から説明を行い、活発な意見交換が行われました。

    • 質の高い教育をみんなに
    • パートナーシップで目標を達成しよう
  • 南九州畜産獣医学教育研究センター銘板除幕式を挙行

    南九州畜産獣医学教育研究センター銘板除幕式を挙行

    共同獣医学部附属南九州畜産獣医学教育研究センター(9月1日設置、通称「SKLV(スクラブ)センター」)では、9月26日に曽於市の南九州畜産獣医学拠点において銘板除幕式を挙行。五位塚剛曽於市長や曽於市役所の方々も見守る中、岩井久理事(企画・社会連携担当)・副学長、宮本篤学長補佐(南九州畜産獣医学拠点担当)、三角一浩共同獣医学部長による除幕が行われました。

    本センターでは、我が国の産業動物に関わる獣医学教育の高度化と畜産学の発展に貢献するため、本学の畜産獣医学分野の教育研究資源と曽於市をはじめとする南九州地域の重要な畜産基地を活用し、動物福祉に配慮したモデル農場において実践的な畜産獣医学教育を全国に向けて実施します。

    • 飢餓をゼロに
    • 質の高い教育をみんなに
    • 産業と技術革新の基盤をつくろう
    • 住み続けられるまちづくりを
    • つくる責任、つかう責任
with KU パートナー企業紹介

株式会社 久永コンサルタント

株式会社 久永コンサルタント
貴社の業務やSDGsへの取り組みなどについて教えてください
鹿児島県の道路や河川といった社会資本整備を測量調査設計業務の分野から支えています。当社は、社員の健康や住み続けられるまちづくりといった会社目標とSDGsの目標をリンクさせ、社員一丸となって持続可能な企業と社会を目指しています。
本学の学生に向けて応援メッセージをお願いします!
久永コンサルタントは、社員一人一人のキャリアアップを応援しています。一人前の技術者として成長出来る職場環境づくりとともに、必要な資格を取得するためのサポートを充実させ、個人の成長から会社の成長へとつなげていきます。

読者アンケートのご協力のお願い

本誌に関する皆様からの率直なご意見・ご感想についてお待ちしております。

鹿大「進取の精神」支援基金へのご寄附のお願い

鹿大「進取の精神」支援基金は、2015(平成27)年の一般資金創設から、趣旨にご賛同いただいた多くの皆様方からご支援をいただき、現在では、修学支援事業基金や学部等支援基金*などの特定資金を加え、本学の教育・研究活動充実のため、大切に活用させていただいております。一般資金には、ご不要となりました本などの物品をご提供いただき、その査定金額をご寄附いただくリサイクル募金もございます。皆様からのご支援をお待ちしております。

【お問い合わせ先】
鹿児島大学総務課基金・渉外係
TEL:099-285-3101

*学部等支援基金:歯学部・鹿児島大学病院・練習船・医学部学科教育・教育学部附属学校園・動物病院・工学部教育研究支援基金

Growing! ~鹿大生の横顔~

Growing! ~鹿大生の横顔~
鹿児島大学大学院理工学研究科 2年
茅野 智裕 さん

憧れの全日本大学駅伝で快走誓う
39大会ぶりの出場につながった「チームの意識改革」

11月5日開催の全日本大学駅伝に39大会ぶり9度目の出場を決めた鹿大・陸上競技部。チームを牽引するのは、大学院理工学研究科2年の茅野さんです。「最初で最後の全国大会はチャレンジャーとして挑みたい。今回の出場が来年以降の足掛かりになればうれしい」。

大学に入学し陸上部に入ったものの、他部員の陸上に取り組む姿勢や練習量などに物足りなさを感じていたそう。大学2年生の頃に長距離のブロック長に抜擢されたのをきっかけに、チームの改革に乗り出します。「各自〝自己ベスト更新〞とった手の届く目標を掲げ、まずは走る楽しさを感じられるように。オンラインで利用できる表計算ソフトで練習報告や部日誌を入力して情報を共有。それぞれの動きを可視化し、意識づけの定着を図りました」。目標が明確になり、刺激が生まれたことで、休みの日も自主的にグランドを走る部員が増えるなど、練習に対する姿勢に変化が見られるように。冬には九州駅伝で5位入賞、男女ともに躍進賞を受賞し可能性を感じたといいます。「学生スポーツはタイムリミットがあるからおもしろい。陸上・学業に専念できるよう支えてくれた両親をはじめ、恩師や部員、友人など関わるすべての方々への感謝を胸に、全国の舞台を楽しみたい」と語ってくれました。

4年生のときに、九州学生駅伝対校選手権大会(島原駅伝)で準優勝。同期の柴田との区間賞リレーは感無量でした
4年生のときに、九州学生駅伝対校選手権大会(島原駅伝)で準優勝。同期の柴田との区間賞リレーは感無量でした
今年度の九州学生陸上競技対校選手権大会(九州インカレ)10000m表彰式。初めて全国大会への切符を手にしました
今年度の九州学生陸上競技対校選手権大会(九州インカレ)10000m表彰式。初めて全国大会への切符を手にしました
今年度の全日本大学駅伝対校選手権大会九州地区選考会(全日本大学駅伝選考会)で優勝したとき
今年度の全日本大学駅伝対校選手権大会九州地区選考会(全日本大学駅伝選考会)で優勝したとき
今年度の全日本大学駅伝対校選手権大会九州地区選考会(全日本大学駅伝選考会)で優勝したとき

私の座右の銘

誰よりも大人 誰よりも子ども

チームをまとめるときは客観視できる大人、興味のあることには子どものように無邪気でありたい

茅野 智裕 さん
CircleFlix ハンドボール部

CircleFlix

ハンドボール

人々を魅了する鹿大ハンドの戦い方

ハンドボール競技とは?
ハンドボールは、走ったり跳んだり投げたりと体を目一杯に使って点数を取り合うスポーツです。激しいフィジカルコンタクトもあり、空中の格闘技とも言われます。
ハンドボール部の魅力は?
部員同士のつながりが深く、全員で守って走ることが最大の魅力です。鹿大らしいハッスルプレーもあり、観ている方が応援したくなるようなチームです。
活動内容について教えて下さい。
九州リーグ優勝と全日本インカレでの躍進を目標に、質の高い練習を通して「走り勝つ走力」「粘り強いディフェンス」「素早い速攻」を日々磨いています。

DATA ※2023年9/26 時点

部員数
18名
活動場所
第一体育館・教育学部グラウンド
活動日時
18:00~21:00[火 水 金]
9:00~12:00[土]

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