CONTENTS
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特集
鹿児島大学先端科学研究推進センター開設から1年
〜高度な研究・教育の支援・推進と地域イノベーションへの貢献をめざして〜 -
潜入ルポ〜学びの部屋〜
「方言学入門」
共通教育センター
初年次教育・教養教育部門
坂井 美日 准教授 -
先輩からのメッセージNPO法人 かごしま子どもと自然研究所
かごしま森のようちえん 統括責任者
市川 雪絵 さん -
Scholar Interview 〜研究室から〜大学院理工学研究科(理学系)
理学専攻生物学プログラム
上野 大輔 准教授 -
知のタネ
消費者行動に影響を与える心理学的アプローチ
〜心理学実験・研究手法を生かした産学連携活動〜法文学部人文学科心理学コース
山﨑 真理子 准教授 -
鹿大トピックス
経営協議会学外委員等による 学内視察を実施 ほか
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with KU ~パートナー企業紹介~
三州技術コンサルタント(株)
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進め!鹿大生大学院理工学研究科
理学専攻・宇宙プログラム2年
国生 侑巨 さん
理学部地球環境科学科4年
小池 明輝 さん -
鹿大プラス
オリジナルマグカップ
今号の表紙 「正門での新たな出会い」
郡元キャンパスの農学部前正門付近は、皇太子殿下御手植記念之碑や農学部附属演習林開山百周年記念石碑、開校80周年樹、奄美の高倉など、本学の様々な歴史を知ることができます。また、春には緒方通りの寒緋桜が満開になり、行き交う人々を楽しませてくれます。
表紙イラスト 持橋 真実(イラストレーター)
鹿児島大学教育学部美術専修卒業。漫画、イラスト、似顔絵、ロゴ制作など。かわいい、やさしい雰囲気が得意。2014年より吉野温泉、生協コープ玉龍店、下田古民家、下伊敷カフェなどでギャラリーのディレクションを行う。2019年鹿児島市『げいじゅつたいけん!かんまちあ』で漫画講師をきっかけに、子供や大人向けの漫画講座も行う。
鹿児島大学先端科学研究推進センター
開設から1年
高度な研究・教育の支援・推進と
地域イノベーションへの貢献をめざして
令和4(2022)年4月1日に開設された鹿児島大学先端科学研究推進センターは、三つのユニットとその下部部門で構成。高度先端研究機器・設備の一元的管理・運営のほか、動物実験、遺伝子実験、放射線同位元素等を活用した教育研究の推進・支援、さらに新興・再興ウイルス感染症に対する高度な研究・人材育成等の推進・支援活動を行っています。
感染制御研究ユニット
令和4年度の本事業により、バイオセーフティレベル3(BSL3)実験室を備えた感染制御研究ユニットの設置が完了し、社会・地域からのニーズが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を中心とする新興・再興ウイルス感染症から人々を守るための予防・治療法の研究開発や、それに携わる研究者育成などの業務を行っています。
生命科学動物実験ユニット、研究支援ユニットとの連携協力は言うまでもなく、共同獣医学部附属TADセンター、桜ヶ丘地区のヒトレトロウイルス学共同研究センター、理工学研究科、大学院医歯学総合研究科、南九州先端医療開発センター・URAセンター等との連携・協力を図り、さまざまな形で協力し合いながらオール鹿児島で新型コロナウイルス研究を推進するという位置付けです。
令和5年度からは、本事業を通じて地域や社会を新型コロナウイルスなどの危険な病原体から守るための、最先端のウイルス感染症に対する予防・治療法に関する研究について、さらに精力的に実施してまいります。
【厳重な安全対策】
バイオセーフティレベル(BSL3)実験室について
BSL3実験室を備えた部屋は、ウイルスを拡散させないための設備、装置が何重にも備えられた、特別な室内です。市中の大学においてウイルス研究を進める上で、地域の皆さまの安全・安心を担保するため、厳重な感染制御対策は最優先課題として、万全の対策を施しています。
バイオセーフティレベル(BSL3)実験室の危険な病原体を実験区域外へ拡散させない対策
- BSL3室内を負圧(マイナス圧)とする
- 負圧の変動が小さい
- 扉を開けても室外との空気交流がない
- 物品の受け渡し時に室外との空気交流がない
- 汚染された器材は蒸気滅菌器を通じて室外へ
- 空調機汚染を防ぐため全外気空調方式
- 空気流入、流出部はHEPAフィルターで防護
- バイオハザード対策用安全キャビネットを設置
- パスボックスはUV灯照射
【研究成果】
新型コロナウイルス阻害薬開発研究
これまでに新型コロナウイルスの増殖を抑制する薬剤の同定が可能な (※1)抗ウイルスアッセイ(※2)系を確立しました。新型コロナウイルスに感受性の高い VeroE6/TMPRSS2 細胞などを用いて、新型コロナウイルス感染による細胞死の定量や、培養上清中および感染細胞内のウイルス(RNA)量の測定により、薬剤の効果および細胞毒性を評価する手法です。
これらの手法を用い、当ユニットの所有するおよそ3000種の薬剤ライブラリーを活用して各種新規薬剤の抗新型コロナウイルスアッセイを実施し、その結果を基に、国内外の大学および製薬企業との共同研究により、薬剤の化学構造の最適化を行います。さらにこれらの試験の結果から、臨床応用の可能性がある薬剤について、動物試験により薬剤の安全性、効果確認を行います。
※1 in vitro:試験管内で、の意。試験管や培養器などの中で体内と同様の環境を人工的に作り出し、薬物の反応を検出する試験
※2 アッセイ:薬剤の候補(化合物)が薬になりうるかを調べるため、細胞や試験管内等で活性や反応を定住的、または定量的に測定する方法
新型コロナウイルス阻害薬開発のフロー
- VeroE6/TMPRSS2 細胞に
新型コロナウイルスを感染 - 薬剤添加
- 感染後3日目新型コロナウイルス死滅
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SARS-CoV-2 RNA 定量
リアルタイム RT-PCR 法で、薬剤添加され た新型コロナウイルス感染細胞の培養上清および細胞内の新型コロナウイルス RNA 量を定量して、薬剤の効果を判定する。
抗ウイルスアッセイ
薬剤添加された新型コロナウイルス感染細胞および偽感染(非感染)細胞の生細胞数を色素法で判定し、新型コロナウイルス阻害効果(抗ウイルス効果)および薬剤毒性を評価する。
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薬剤の最適化
抗ウイルスアッセイ、リアルタイム RT-PCR の結果、効果が認められ た薬剤の化学構造を、より効果が高く、毒性が少なくなるように変更する。
国内・海外の大学
(薬学部)製薬企業 -
薬剤ライブラリー
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動物試験(安全性・効果確認)
新型コロナウイルス阻害薬開発研究における実績
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培養細胞を用いた新型コロナウイルスに対する抗ウイルス試験系を構築し、当研究室が保有する薬剤、共同研究先で合成された化合物についてスクリーニングを行った。
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これまでに、4種類の薬剤(フェナンスリジノン誘導体、アモジアキン誘導体、セニクリビロク、ビタミンK誘導体)に新型コロナウイルスの増殖を抑制する効果を発見し、6件の特許出願(内出願4件、国際出願2件)を行った。
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フェナンスリジノン誘導体
製薬企業とライセンス契約を締結し、臨床試験開始に向けた安全性試験等を実施中。
アモジアキン誘導体
東京理科大学との共同研究により、新規に合成された化合物について、新型コロナウイルスに対する効果を検証中。前臨床試験開始に向けた開発候補化合物の選定を行う予定。
セニクリビロク
研究成果を論文発表。COVID-19の重症化を防ぐ薬剤の候補として、臨床試験が行われている。
ビタミンK誘導体
芝浦工業大学との共同研究により、ビタミンK誘導体について、新型コロナウイルスに対する効果を検証するとともに、化学構造の最適化を実施中。
【展望】
新型コロナウイルス感染症研究の早期展開
BSL3実験室および実験設備において、新興・再興ウイルスを安全に取り扱うことができます。本施設では、BSL3設備を新型コロナウイルス専用として運用し、新型コロナウイルスに特化した研究(※3)を進めることで、予防・治療法の開発スピードの迅速化を図ることができます。また、新たな感染症が発生した際、その封じ込めに必須である迅速診断系の構築が可能となり、早期の段階において感染症の制御が可能となります。
※3 同一施設内で未知の部分が多い複数のウイルスを同時に使用した研究を行うことは、遺伝子組み換えが発生する可能性も懸念され、非常に危険です。
人材育成
BSL3施設においての新型コロナウイルスなど、危険な病原体取り扱い法の習得に向けた実践や、学内の各部局との連携・協力により、抗ウイルス薬の作用機序、副作用などに関する講義などを行います。
感染症研究マネジメント
先端科学研究推進センターの各ユニット、ヒトレトロウイルス学共同研究センター、共同獣医学部附属越境性動物疾病制御(TAD)センター等と連携し、多様な感染症研究マネジメントの一翼を担うことで、全学体制での感染症研究を総合的に推進します。
※これらの研究はNHKスペシャル「パンデミック激動の世界(6)〝科学立国〞再生への道」(2020年12月20日放送)にて取り上げられました。
生命科学動物実験ユニット
生命科学動物実験ユニットは、鹿児島大学における小動物から大動物に至る種々の実験動物を用いたシームレスで国際的な生命科学研究を推進・支援する組織として、令和4年4月、従来の研究支援センター動物実験施設と医用ミニブタ・先端医療開発研究センターとの統合によって設立されました。ユニットは、動物管理・小動物研究推進部門(旧動物実験施設)、大動物研究推進部門(旧医用ミニブタ・先端医療開発研究センター)および医用ミニブタ・先端医療開発共同研究部門の3部門から構成されています。
令和5年度からは、改修により新たな動物実験施設の運用も始まり、高度な実験動物管理環境・支援体制のもとで、国際水準での実験動物を用いた生命科学研究を推進していきます。
大動物研究推進部門(部門長:佐原 寿史 准教授)
鹿児島大学における地域特性を活かした特色ある部門として、先端的基礎的研究から実用化を見据えた医用ミニブタやカニクイザルなどの大動物を用いた橋渡し研究を実施すること、研究者育成や支援を進めることの2点を通じて、イノベーション創出や地域活性化につながる活動を行っています。特に、移植・再生医療の更なる向上を目指した学術研究を主要な研究課題と位置付け、「同種移植での免疫寛容誘導方法の確立」「新たな臓器保護・臓器保存法の開発」「異種臓器移植の臨床応用」を目指した国際的な研究を、国内外の共同研究機関とともに進めています。また、感染制御ユニットと強固に連携体制がとれる強みを活かし、本学の特色ある先進的な感染制御研究にも取り組んでいきます。
医用ミニブタ・先端医療開発共同研究部門(部門長:佐原 寿史 准教授(兼務))
慢性腎臓病に対する安全かつ高品質な治療法の開発と臨床化を目指すことを課題として、当ユニット内に令和4年4月に設立された共同研究部門です。高品質な透析医療の実現や腎移植医療の課題解決を目指し、臨床研究あるいは鹿児島大学開発クラウン系ミニブタを用いた前臨床研究を大動物研究推進部門とともに進め、設立目的を達成する研究を進めていきます。
動物管理・小動物研究推進部門(部門長:瀬戸山 健太郎 准教授)
医学研究の高度化による再現性のある、精度の高い動物実験を行うための施設要望に応え、昭和50年、全国で4番目の大型動物実験施設として開設しました。以来、平成13年度まで医学部付属の共同利用施設として研究・教育に大きく貢献してきました。平成14年度より全学共同利用施設としての運用が開始され、令和4年度には先端科学研究推進センター生命科学動物実験ユニット動物管理・小動物研究推進部門と改称し、生命科学研究推進の一翼を担うべく、新たなスタートをきりました。
当部門は5階建て延べ4200平方メートルを有し、SPF動物、一般動物の飼育室の他、各階に処置室、2階には手術室とX線室、1階には実験室、検疫/検査室、洗浄室を備えています。本部門の主たる業務は実験動物の飼育管理および施設管理ですが、マウスやラットなどの小動物を対象とした実験技術支援や生殖工学サービスも実施しており、これら支援業務を通じ、生命科学研究の推進に寄与しています。また、本学で進める研究機器のコアファシリティ化に積極的に取り組み、学内外の研究者が利用できる生命科学実験の研究拠点化を図ります。
今後の特徴ある取り組み
異種移植研究の推進
ブタの臓器をドナーとして用いる異種移植は、ドナー臓器不足に対する究極の解決策として非常に期待されています。私たちもこれまでに、鹿児島大学開発のクラウン系ミニブタを用いた大動物実験を継続的に実施する施設であるということを背景に、国内唯一といえるブタ・サル間移植実験を鹿児島大学で実施し、また海外共同研究先と継続的な研究を行ってきました。
近年の遺伝子編集技術の向上や免疫抑制療法の改善に伴い、遺伝子改変ブタ・霊長類間の実験的な移植成績は飛躍的に向上しており、このことを背景に、米国では2021年末からブタ臓器をヒトに移植する試験的な臨床試験が始まりました。私たちは、日本での異種移植の実用化にむけて、大動物研究実施拠点として研究の核となり、国内有数の臨床移植医療実施施設や遺伝子改変動物生産施設、あるいは感染制御ユニットとの連携による国内研究コンソーシアムを構築し、動物由来臓器のヒトへの応用を目指す際の指針策定、ドナー動物の作出や感染制御、前臨床研究体制強化、異種移植という治療選択肢の正しい認知など、様々な課題に取り組んでいきたいと思います。
国際的な実験動物福祉基準に適合した施設認証
(AAALAC認証)の取得
老朽化による空調・給排水設備の事故や、飼育・実験環境(広さ、温度)が国際的な実験動物福祉基準に適合していないことなど、様々な課題を克服するため、動物実験施設の改修が行われました。今回の改修整備を機会としてAAALAC認証の取得をはかり、時代・地域のニーズ(新興感染症対応、中大動物実験)に応じた施設として、生命科学研究の拠点施設となることを目指したいと思います。研究拠点形成によって、企業・他大学等との共同研究を加速し、「イノベーションコモンズ化」を持続的に推進することが可能な施設になるものと考えます。また、実験動物の管理、適正な動物実験実施に向けた教育訓練、技術講習会の実施などの研究者教育、あるいは生殖工学等の技術提供など様々な活動を通じて、生命科学研究推進に寄与したいと考えています。
先端科学研究推進センターは本学における研究の推進を目的として、組織改革により令和4年度に新たに設置された研究の実施および支援を行う施設の集合体です。センターは動物を用いた研究や使用者のサポートを行う「生命科学動物実験ユニット」、遺伝子実験や放射性同位元素等を用いた教育研究、高度先端研究機器・設備の一元的管理・運営を行う施設からなる「研究支援ユニット」、バイオセーフティレベル3(BSL3)実験室を有し、新興・再興ウイルス感染症に対する高度な研究を行う「感染制御研究ユニット」の 3ユニットから構成されています。当センターが学内の各組織と連携することで、本学の研究推進に寄与することを期待しています。
鹿児島大学は、藩学造士館、旧制第七高等学校等からの伝統を持ち、我が国の研究大学の一つです。本学には、世界トップレベルの科学研究が多数推進されており、今後の発展が期待されています。現在の先端科学研究は一研究室では対応できません。幾つかの研究分野間の連携や協力、組織的支援のもとで進められています。これに対応するため、医用ミニブタ・先端医療開発研究センターと研究支援センターを統合し、さらに感染制御研究部門を設け、令和4年4月に先端科学研究推進センターが発足しました。当センターは学内各組織と協力し、世界トップレベルの研究拠点形成、産学官・地域共創の場、本学の研究力を活かした地方創生に貢献していきます。
研究支援ユニット
研究支援ユニットは、令和4年4月の先端科学研究推進センターへの改組に伴い、それまでの研究推進機構研究支援センターの4研究支援施設から、郡元地区の3施設をもとに構成されました。現在、当ユニットには、アイソトープ実験部門(小山部門長 (兼務))、遺伝子実験部門(田浦部門長)、機器分析部門(澤田部門長)が設置されています。各部門の高度先端設備・機器の共用を基盤に、鹿児島大学における科学研究の支援を行なっております。さらに、本学の先端設備・機器は、学外の研究者や技術者、民間企業の方からも利用されております。
令和3年度には、当研究支援ユニット3部門と動物管理・小動物研究推進部門とを合わせた施設利用登録者数は1507人、利用実績はのべ3万2312人となっており、本学の教育・研究、地域産業・イノベーションに大きく貢献しております。先端科学研究推進センターの高度な先端機器設備・機器の新規導入、維持管理、整備には、多額な予算が必要ですが、全学的な高度教育・研究支援を目的に、これらの設備・機器を共用化し、利用者負担をできる限り抑えて利用できるよに、料金設定がなされております。現在、当センターの共用設備・機器は90機にも及びます。
次に、各部門の特徴と支援状況について紹介します。
アイソトープ実験部門(部門長:小山 佳一 教授(兼務))
アイソトープ(同位体)実験部門では、本学唯一の研究系RI(放射性同位体)使用施設です。本部門は、国の基準に基づいて厳重に管理運用されている放射性同位体を用いた実験、高温や極低温といった特殊環境下の実験ができる施設です。現在、理工学研究科(理学部・工学部)、歯学部、農学部、共同獣医学部、教育学部、水産学部、共通教育センター及び他大学の教員や学生らが、本部門を利用して教育・研究を推進しています。
RIの基盤設備を整備して放射線生化学の研究を支援するとともに、最近では、金属や磁性材料に微量に含まれる鉄同位体の状態を、マイナス260°Cの極低温から室温まで評価できるメスバウア分光測定の支援も行っています。さらに、500°Cまでの高温エックス線実験、1000°Cまでの高温熱分析、極低温から室温までの電気抵抗測定、地磁気の16万倍の磁場を発生する超伝導磁石の利用も可能です。液体窒素(マイナス196°C)の供給サービスも開始して、本学の特殊環境下研究の支援にも対応した部門となっており、学内外から利用者が増加しています。
遺伝子実験部門(部門長:田浦 悟 教授)
遺伝子実験部門は、本学の先端遺伝子研究を支援するために、これに関係する高度な設備及び機器を管理運用しています。利用者登録を行うと鹿大IDカードにより24時間、年中入館でき、数多くの分析機器を利用することができます。各種の遺伝子組換え実験のための実験室、培養室及び保存室等の実験スペースも共用化しており、利用者は予約システムによって、研究者の実験計画に合わせて、設備と機器の利用ができる共用研究施設となっております。理学部、工学部、医歯学総合研究科、農学部、共同獣医学部、水産学部、国際島嶼教育研究センターの教員、学生らが当部門を利用しております。
当部門が管理するDNAシーケンサーを用いて依頼分析、試薬分譲を行うなど、研究者に対して様々な支援を行っています。鹿児島県及び環境省と連携協定を締結し、鳥インフルエンザの診断で地域貢献も行っています。当部門が管理するリアルタイムPCR検査や質量分析装置等は学内だけでなく学外からの利用もあり、当部門は遺伝子研究分野における地域の研究拠点になっています。
機器分析部門(部門長:澤田 剛 准教授)
機器分析部門は、物質の物理的及び化学的分析に関する高度先端研究設備・機器の管理及び整備を担当し、これらを共用化することによって、本学の国際的研究を支援してきました。当部門の管理する主な共用装置は、走査型X線分析顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡、電子線マイクロアナライザー、核磁気共鳴装置、高分解能・分析透過電子顕微鏡など約40台に上ります。これら設備・機器は、理学部、工学部、医歯学総合研究科、農学部、水産学部、教育学部、埋蔵文化財調査センター等に所属する教員や学生らによって利用され、本学の教育研究に役立てられております。
さらに、これら設備・機器は、学外の利用希望者に対して、依頼分析(有料)を受ける形で対応し、地域の学術と産業振興に貢献しております。
その一つに、味認識装置があります。この装置は、人間の味覚受容体を模倣した味覚センサーを利用して、わずかな味の違いを相対的に数値化でき、鹿児島県内の食品関係企業の利用実績(依頼分析)も有しております。
当部門は、その他の装置を含めると、平成30年から令和3年の4年間で、他大学から96件、民間企業から118件の利用・分析依頼があり、対応してきました。当部門は、これから先も本学の研究力向上と、地域の学術と産業発展に貢献してゆきます。
先端科学研究推進センター組織図
このように、研究支援ユニットは、本学の先端科学研究の基盤的支援を担い、本学の研究力向上と、地域の学術・産業の発展に貢献してきました。今後もたゆまず、学内外の研究者・利用者目線に立った利用しやすい共用研究施設・研究環境を整備・維持していきます。
技術部
技術部は、高度研究先端機器・設備、遺伝子実験、動物実験及び RI を活用した教育研究を支援するため、4部門(動物管理・小動物研究推進部門、遺伝子実験部門、機器分析部門及びアイソトープ実験部門)に職員を配置し、先端的な生命科学・自然科学の教育・研究・開発の進展に資することを目指しています。
この目的を達成するため、先端研究設備の操作指導及び保守・管理ならびに施設管理業務を遂行することが我々の使命です。これらの業務は、最新の測定・分析技術、生殖工学技術等を修得、実践し、利用者である学内外の教職員、学生の満足度を高めることが絶えず求められます。7名の技術職員は関連する学協会に所属するなどして、専門性の向上に努めています。
施設管理業務においては、4部門の共通項が多々あることから、テーマを設け定期的に議論を重ねています。少人数ならではの活発な意見交換が現場に様々な創意工夫を生み、利用者向けアンケートでは各部門とも高い評価を得ています。
大学における研究設備の共用化は国の施策の一環でもあり、学内における当センターの役割は一層重要になることが予想されます。本技術部は各技術職員の高い専門性と創意工夫を武器に、利用者からの信頼を高め、教育・研究・開発の進展に寄与できるよう努めてまいります。
方言学入門(共通教育科目)
共通教育センター 初年次教育・教養教育部門
「方言学入門」では、主に鹿児島のことばを対象とし、言語研究・方言研究の手法を学ぶ。ことばの抱える消滅危機問題についての考察を通じ、その背景にある歴史や文化の多様性を認識することも授業目的の一つだ。坂井美日先生の研究ネットワークを活用し、国内外の言語学研究者らによる特別授業も組み込まれ、ふだん何気なく使っていることばについて、さまざまな視点から考察を深めるカリキュラムになっている。国立国語研究所の言語学者・山田真寛准教授をゲスト講師に迎えて実施された特別講義を覗いた。
むぬい ばちたや
ちま ばちるん
「わー なーわ やまだ まさひろでぃろ(私の名前は山田真寛です)。もどもど うまれだの ほっかいどーだからさ ばーちゃんだちだら こったらして しゃべってらっけなって(元々生まれたのは北海道だから、ばあちゃんたちはこんなふうにして話していたなと)」。始まりは、沖永良部島のことばと函館のことばを使った自己紹介。聞き慣れないことばを聞き取ろうとする、聴衆の集中度が一気に高まった中で「消滅危機言語の継承保存は可能〜当事者コミュニティとの協働」をテーマとした授業が始まる。
現在、世界には6千から8千の言語があると言われるが、ユネスコによるとおよそ2500の言語が消滅の危機にあるという。日本国内においてもアイヌ語、八重山語、奄美語など8つの言語が消滅危機言語に挙げられている。「自分のことばが、なくなる側に数えられてたらどんな気持ちになるかな?」。知らない土地の話ではなく、自分のこととして考えて、と山田先生は呼びかける。「例えば近い将来、子どもが生まれた時、君らのお父さんやお母さんと子どもたちとは話が通じない、ということになったら辛いよね」
「むぬい ばちたや ちま ばちるん(ことば忘れたら 島忘れる) ちま ばちたや うや ばちるん(島忘れたら親忘れる)」。山田先生は三線を手に、八重山諸島に伝わるディンサー節を奏で、ことばをなくしてしまうと故郷がなくなる、故郷がなくなるということは、親や先祖、受け継がれてきたものもなくなってしまう、という島の言葉を学生に届ける。「言語消滅危機が叫ばれるずっと前から、島にはこういう諺がありました」
消えゆく言語の
復活へ向けて
方言の消滅危機は、ユネスコの挙げる国内8つの言語に限られた話ではない。現に、曽祖父母の使っていた流暢な方言を操れる現役世代が今どのくらいいるだろう? 坂井先生によると、方言が消滅する要因には、沖縄や鹿児島等では、その背景に方言弾圧の歴史と、それによって植え付けられた当事者の方言への嫌悪が作用したこと。また、観光客受け入れや村外との交流による共通語使用機会の増加、さらに都会を志向する若者の未来への配慮などにより、方言が封印されてきた宮崎県椎原村のようなケースもあるという。「そこに悪者はいない、むしろ前向きな配慮さえ感じられます。けれども、方言は、その地域の人々が物事をどう捉え、どう表現し、どう伝え合うか、模索してきた姿そのもの。その多様性はかけがえのない文化財なのです」
全国各地で生じる言語消滅の危機に対し、山田先生が中心となって国立国語研究所で進めているのが「言語復興の港」プロジェクト。研究者が文法記述を行うと同時に、研究者と言語コミュニティが協働して言語の記録を蓄積、さらにこれらをベースにコミュニティによる主体的な言語継承活動の継続という3本柱で成り立っている。山田先生はこれまでに沖永良部島での協働を進めており、市民科学者育成や30〜40代の言語復活トレーニングなどに成果を上げている。
伝えたい思い
坂井先生が方言研究を始めた動機の一つには、例えとして山田先生が挙げた出来事があったそう。「認知症の祖父のお見舞いに行くと『見知らんなー』って言われて、私のことをもう覚えてないんだ、とショックを受けました。熊本弁で「見違えるほど成長したね」という意味だと後から知ったのですが、それきり感謝を伝えることができなかったのが悔しくて」。現在、講義や論文執筆、方言辞書編さん活動に加え、学生とともに鹿児島弁の記録動画やネット辞書制作を行い、若い世代の関心を高める教育活動に尽力している。
市街地の近くに豊かな自然が残されている
鹿児島のまちで、五感を研ぎ澄ます
野外体験を子どもたちに。
NPO 法人 かごしま子どもと自然研究所 かごしま森のようちえん 統括責任者 市川 雪絵(いちかわ ゆきえ)
神奈川県出身。1995年3月 鹿児島大学教育学部教員養成課程・保健体育科卒業。民間企業の環境教育部署勤務等を経て2003~2018年「生命と環境の学習館」(かごしま県民交流センター 6F)職員として環境教育活動に従事、2012年 NPO法人かごしま子どもと自然研究所設立、現在に至る。
うららかな冬の朝、園舎を持たない幼稚園「かごしま森のようちえん」を鹿児島市の吉野団地に訪ねました。一軒の家に集まった子どもたちはリュックや水筒を背負っています。バスに乗って出かけるの? と考えていると、2人ずつ手を繋ぎ、歩き始めました。交通量の多い道を上手に渡ると、立ち並ぶ民家の間の小道を賑やかに歩みます。20分ほど進んだでしょうか。宅地の外れを曲がると風景と空気が一変!手つかずの雑木林が広がっています。運動不足のおとなには息が切れそうな起伏のある山道を、倒木によじ登ったり、木の実を拾ったり、一行は楽しげに進みます。1時間ほどかけて森の奥の広場に到着すると、青空の下、ランチタイム。「登っている木はいつ折れるかわかりません。ハチが飛んでくることもあります。身を守るには、自分でアンテナを張れるかどうか。便利で快適な空間だけで育てられると感性が鈍ってしまいますが、森の中で幼い頃から痛い思い、辛い思いを経験することで、自然と対峙するすべを身につけていくのです」。子どもたちに優しい目線を注ぎながら、市川雪絵さんは語ります。
横浜市出身の市川さんが本学に進学した動機は、ローカル暮らしへの憧れ。入学当初は理想と現実のギャップに悩んだそうですが、2年生の時、YMCAの活動の一環で自然体験ボランティア活動に参画。子どもたちと県内各地の自然にふれる体験を通じ、野外教育、環境教育への関心が深まり、国内外での研修や学びを重ねました。「当時、大学で学んでいた公教育に比べ、自然の中での子どもの育ちの可能性に大きな手応えを感じていました。結果として卒業後の進路は教職以外の道を選択しました」
首都圏の民間企業での環境教育活動などを経て30歳の頃、かごしま県民交流センターに創設された「生命と環境の学習館」職員として再び鹿児島へ。「カエルの生態には詳しいのに、カエルにはさわれない」現代っ子にふれ、知識とアクションの両輪が大切、と痛感。館の単発行事として森のようちえんをスタートしました。ニーズは予想を上回り、3年間でのべ3000人が参加する人気イベントに。2012年に事業をNPO法人化し、学習館閉館(18年)後も保護者らの声に応える形で継続してきました。
法人では20年、農学部との共同研究「唐湊の森〜里山再生プロジェクト」に着手。附属農場の果樹園の一画をフィールドとして、四季の体験プログラムや学びの場を広く提供する準備を進めています。市街地からアクセスの良い里山で、農学部のほか工学部、教育学部など総合大学の強みを生かした自然体験を提供できる、全国的に稀有な場として期待されます。「街と自然が近接している鹿児島というフィールドの魅力を再認識し、次世代へ繋いでほしい」。市川さんの願いです。
※活動の最新情報については、ウエブサイト(https://child-nature-labo.com/)、フェイスブックで確認ください。
大学院理工学研究科(理学系)理学専攻 生物学プログラム
上野 大輔 准教授
世界で一番面白い研究フィールド・鹿児島
~新種発見に寄与する水族寄生虫分類学の第一人者~
上野大輔先生の研究テーマは、海や川に暮らす共生生物、寄生生物(水族寄生虫)の種の多様性や生態の解明。中でも、寄生性のカイアシ類を専門に研究を進めている。これまでの調査研究活動を通じ、寄生性生物のみならずさまざまな水生生物の発見に数多く寄与。「オシリカジリムシ」「カクレンボウ」など、ユニークな命名においても感性を発揮する。世界の海をフィールドとして、知られざるミクロの世界を探究する上野先生にお話を伺った。
ひっそり平穏に
「寄生虫というと気持ちが悪い、危険、というイメージを持つ人も少なくないと思いますが、寄生生物は人間に危害を加えることを生き甲斐としているわけではないし、大半の種は人間に無害で、ひっそりと平和に暮らしているのです」。危険な寄生虫として、生のイカやサバに付くアニサキスがよく知られているが、海や川に暮らす寄生虫の研究者は世界的に数少なく、水界の寄生虫に関する分類学的研究、生態学的研究はともに立ち遅れているという。「食用となる魚種や、養殖魚の餌になるプランクトンについては古くから研究が盛んでしたが、人間の活動にどのように関与しているのかわからない寄生虫は、重要視されてこなかったのです」
だが、研究が進むにつれ、興味深い寄生生物の生態もわかってきた、と上野先生。先行研究により、マスなどの渓流魚は、川底の生き物だけではなく、上空から墜落してくる昆虫を捕食し、栄養の大部分を後者から摂取することが明らかになっている。「では、なぜ昆虫が落下するのかというと、ある寄生虫が関与していたことが判明したとのいうのです。その寄生虫がいなくなれば、魚も激減すると考えられています。同じような働きをしている寄生虫は、きっと他にも数多く存在するはずです。今のところ、寄生虫の重要度どころか、種類さえわかっていないのですが、今後、調査研究が進めば、存在しないと我々の暮らしが揺らぐような寄生生物も見つかるのではないかと」
リアル・ポケモンGO
未開拓の研究分野に横たわる壮大なテーマに、科学者の探究心は高まるが、調査は純粋に面白い、と言う。「寄生虫は、同じ種類であってもその生態はさまざま、宿主のどこに潜んでいるかもわかりません。調査に行くと、どの教科書にも書いてないところから、見たことのない寄生虫が出てくることもしばしば。まるでキャラクターを集めて回るゲームのようです」。実際、古くから食用とされてきたゴマサバに生息していた寄生虫を、上野先生の研究チームは2021年に発見。長年、人知れず潜んでいたことから和名を「カクレンボウ」とした。(カクレンボウ:学名コロボマータス・イトウアイ。長澤和也広島大学名誉教授との共同研究により新種記載。ゴマサバの頭部を構成する骨の中を通る細い管内部に棲む。人間には無害で食品衛生上の問題はありません)
カクレンボウのほか、上野先生は発見した生き物にユニークな命名や、親しみやすい表現を意識している。22年、出水市の干潟でハゼ科のチワラスボの共生生物として発見した新科・新属・新種の甲殻類には、NHKで人気を博したキャラクターの名を借り、科・属・和名に「オシリカジリムシ」を採用。また、同年、大隅半島で発見した、カニ類と共生するヤマタロウヤドリツノムシには「たこさんウィンナー」のキャッチフレーズを用い、いずれも各種メディアで取り上げられた。「学名や分類を聞いても印象に残らないと思うので、親しみやすく、ウケやすい名前や愛称を付けています。学生や地域の方が、環境や生き物に関心を向けるきっかけになれば」
世界で一番面白いフィールド
東京で生まれ育ち、自然への憧れから琉球大学へ進学、海の生き物の魅力に惹かれていったという上野先生。「鹿児島は、生物的に地球上で一番面白いかもしれない場所」と、感じている。「欧米の生物学者は、海洋での調査研究を行う場合、2、3カ月スパンのエクスペディション(遠征)に出かけるのが当たり前。それに対し、鹿児島では日帰りで海へ行くことができるし、その海は生物の宝庫です」。研究成果を通じて鹿児島の豊かな自然環境を証明し、今後、素晴らしいフィールドで生物を研究しようという機運につなぎたい。その情報発信も我々の務め、と上野先生は結んだ。
上野 大輔(うえの・だいすけ)
2004年3月 琉球大学理学部卒業,2007年3月 広島大学修士課程修了(農学),2010年3月 広島大学博士課程修了(農学), 2015年鹿児島大学 理工学域理学系 理工学研究科(理学系)地球環境科学専攻助教・准教授,2020年4月 理学専攻 生物学プログラム准教授
■所属学会等 : World Association of Copepodologists、日本甲殻類学会、日本動物分類学会
■研究分野 : ○動物分類学 ○水族寄生虫学 ○寄生性カイアシ類
消費者行動に影響を与える心理学的アプローチ
〜心理学実験・研究手法を生かした産学連携活動〜
山﨑 真理子 准教授
- 企業、行政など連携先とのディスカッションを重ね、期待される効果に対して有意義な心理学的アプローチを取り入れ、双方に実りある連携を目指します。
- 学術領域内外の講演会、セミナーや出版物編集等を通じ、心理学について広く伝える活動に取り組んでいます。
食行動や消費者行動に影響を及ぼす
諸要因について心理学的側面から探究
心理学がカバーする領域は大きく基礎と応用に分けられます。応用なら臨床心理学など、いわゆる心理学の仕事に直結する内容について学びます。医療、福祉、教育、司法矯正などの現場で働く心理士/師さんはイメージしやすいかと。一方、大学などの機関では基礎研究を通して心の法則を探ります。思考や行動のパターン、生理反応などについて調査や実験を行い、データの分析結果を手掛かりに仮説検証する活動です。意外かもしれませんが、脳の活動を測定したり、動物を対象に実験を進める研究室も存在します。
学生時代、動物も人も対象のゼミに所属。実験のノウハウをトレーニングする機会に恵まれ、主として食行動に関する基礎研究を手掛けてきました。人はなぜ食べ過ぎてしまうのか、どのような状況で食べ過ぎるのか。食行動を左右する社会的要因の解明を進めるなかで、複数の食品会社との共同研究が実現し、消費購買に対する心理学的影響にも関心が広がるきっかけに。現在は消費者行動の理解を目指し、社会心理学の観点を主軸に実験を中心とした研究活動を進めています。
学術的データを活用したマーケティング戦略支援
消費者ニーズが多様化する昨今、企業がマーケティング戦略を練る上で、消費者心理を理解することは大きな意味を持つと考えられます。事業の各現場で長年にわたり蓄積されてきた経験則が高い価値を有するのと同様、予測を立て、データを集め、統計的手法で解析するという学術的知見も、大きなポテンシャルを秘めているものと考えられます。
心理学的アプローチによって解明された学術的知見を企業活動にフィードバックするという連携は、現状ではあまり数多くは見られませんが、新たな視点の獲得という面において、また商品開発や販売戦略構築において貢献できる可能性は高いものと考えています。研究者にとっても現場目線を知った上で基礎研究に取り組む発想は有意義なことです。教育活動においては2018年より、心理学を学ぶ学生を対象とする産業心理支援実習の中で、地元企業のご協力の下、学生主体の販売促進活動を行わせていただいています。
取り組み事例
マルヤガーデンズ・無印良品における販売促進イベント
「サンタを探せ!地球にやさしいぽかぽかクリスマス」実施
受付場所:マルヤガーデンズ 5階 無印良品 Open MUJI
企画運営:「産業心理支援実習」受講者33名(心理学コース3年生、4年生)
<概要>
人の行動や心の動きに関する法則を探る心理学の基礎研究の成果を参考に、現場の目線を取り入れながら売り上げを伸ばすための企画を学生が組み立て、イベント企画・運営と併せてアンケートに基づく効果検証を行いました。同様の取り組みは2018年からマルヤガーデンズ事業部や、紀伊國屋書店鹿児島店(アミュプラザ4階)の協力の下、実施しています。
<企業ニーズ把握>
実施にあたり、まず企業への事前ヒアリングを行いました。今回のイベントにあたり、企業側の要望として、広い店内の商品レイアウトをお客様に知ってほしい、生活雑貨の販売促進に注力してほしいという目標を共有し、企画検討を開始しました。
<企画提案>
複数候補の提案企画の中から、店内巡回を促し、奥まった場所の棚の雑貨にも注意を向ける機会を創出するアイディアが採用となりました。ゲーム感覚でお客様にサンタクロースのイラスト付きPOP広告を探してもらいながら、推奨商品の売り場や雑貨の魅力を知ってもらうのが狙いです。また、無印良品の商品で暖かく快適な冬を過ごす学生の暮らしをショートフィルム風に仕上げた動画も制作し、会場で放映しました。チラシや動画内には、寒さが厳しく電気代が高騰している話題も織り込み、省エネ・節約のアピールも盛り込みました。
<売り場への参画>
現場からのアドバイスもいただきながら、学生が設営を行い、イベント当日は接客のほかサンタ探しのヒントを出したり、アンケート用紙の回収などに携わりました。学生が企画および運営するイベントであることを強調して、若い世代の集客にも努めました。
<アンケート調査等による検証>
目標200人に対して420人超に参加していただき、売り上げの伸びが良いところもあったというお声も連携先からいただきました。一方、どんな人が参加したのか、想定通りの効果があったのかなど、POSデータだけではわからない内面をアンケート調査上で問い、結果を企業にフィードバックしました。心理学の研究成果を活用して企画に盛り込むという部分と、心理学の研究方法のノウハウを生かして効果検証するという点がこの産学連携活動のポイントです。
<企画の背景にある学術的アプローチ>
受講生達が注目したのは「単純接触効果(mere exposure effect)」と呼ばれる、心理学の基礎研究の応用です。これは数多く触れたものに好意度が増す、という人の心の動きの法則です。基礎研究ではこの効果の発生条件や生起過程などについて丁寧に検証する一方で、今回は実践への応用と販促の効果検証に挑戦しました。
鹿大メッセージ
母校ではラットを対象に実験する先生方や先輩方もいて、その際は餌を報酬に学習させることから、食行動に対する興味が湧きました。私自身、食べることが好きなこともあり、人は食事相手の有無で食べ方がどう変わるのだろうかという単純な疑問から始まった研究でした。海外の肥満大国で取り組まれてきた実験を参考に、日本人の食行動パターンなど観察し、学会で発表したことが企業との交流のきっかけとなりました。
心理学は、臨床畑でも研究畑でも国内のポストには限りがあり、心理学専攻生が専門職以外に就くことは珍しくありません。とはいえ、在学中に調査や実験のノウハウをしっかり学びますので、どんな職に就いても知識は役に立ってくれるものと考えています。
もしご興味があれば機関誌「心理学ワールド」(日本心理学会刊行)など、オンライン上でもアクセスしやすく、まず軽く読んでみるのに良いかもしれません。
- 2010年3月
- 同志社大学 博士(心理学)修了
- 2017年4月
- 鹿児島大学 法文教育学域法文学系 法文学部 人文学科 准教授
- 学会
- 日本心理学会/日本社会心理学会/日本消費者行動研究学会/産業・組織心理学会
マルヤガーデンズからのメッセージ
マルヤガーデンズは鹿児島市天文館にある商業施設で、コンセプトは『ユナイトメント』。人と人、人とモノ、モノとコト、すべてが有機的につながりあう場所として、地域のコミュニティ活動の場と商業施設がひとつになることで、新しいつながりや絆が生まれる場所を目指しています。鹿児島大学法文学部心理学コースの産業心理支援実習として、プレ企画も含めると2017年より連携し、大学で学ぶ心理学の知識を、バレンタインやクリスマスなどの集客販促へつなげる連携活動を行っています。2022年は、無印良品の地域連携スペースを活用し、環境と暖かさをテーマにした商品をクイズで探しながら、店舗内を回遊させる企画を開催。予想以上のお客様に参加いただく結果となり、心理学と集客施策の関係性が深いことを私自身も実感しました。また、SNSや動画を活用した、心理学をミックスさせた宣伝施策など、学生のオリジナリティ溢れるアイデアは参考になりました。
産学連携に関する相談・お問い合わせ窓口:南九州・南西諸島域イノベーションセンター ☎︎099-285-8491
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経営協議会学外委員等による学内視察を実施
11月7日、経営協議会学外委員(学外有識者)並びに学長、役員等による学内視察を実施しました。
この学内視察は、8月に実施している「経営協議会学外委員と教育研究評議会評議員等との意見交換会」(経営協議会と教育研究評議会との合同懇談会を実施し、学外有識者との意見交換の機会を充実することを目的に実施している会)とは別に、11月に実施したものです。
視察コースの国際交流会館1~3号館、外国人研究者宿泊施設、学生寄宿舎(共用棟、男子寄宿舎、女子寄宿舎等)では各施設の状況等を、共同獣医学部では遠隔授業システムを利用した山口大学および本学学生らの授業を視察し、学外委員から各説明者に対して多くの質問があり、経営協議会学外委員に本学の状況をより理解いただく機会となりました。 -
稲盛和夫鹿児島大学名誉博士のお別れの会
12月19日、去る8月24日に逝去された稲盛 和夫鹿児島大学名誉博士の生前のご功績を讃えるとともに、これまでの本学への多大なる貢献に感謝し、お別れの会を執り行いました。
会場となった学習交流プラザでは、午前中は稲盛名誉博士にゆかりのある経済界や行政の関係者、午後は一般の方や教職員・学生らが参列し、1日を通して約800人が流れ献花により故人を偲びました。 -
令和4年度後期鹿児島大学留学生後援会奨学金授与式を開催
2月13日、令和4年度後期鹿児島大学留学生後援会奨学金授与式が行われました。
本奨学金は、鹿児島大学留学生後援会が私費外国人留学生に対して経済的支援を行うことで学習効果を高めることを目的としており、今回は、3名の留学生に奨学金が支給されました。
授与式では、後援会会長である佐野 輝学長が、出席した3名に奨学金を手渡し、「世界が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け大変な状態の中で、留学生の皆様も不慣れな異国の地での生活に苦労しながら、自己の目的を達成するために、勉学に励んでおられる。これからも積極的に学ぶ姿勢を持ち続け、研鑽を積むことにより、自己の目的を達成するとともに、留学を終え帰国した後も日本及び鹿児島とのつながりを持ち続け、母国との懸け橋になっていただくことを期待している。」と激励の言葉を贈りました。
留学生を代表して、農学部の張 封佳(チョウ フウカ)さんは、「奨学生に採用していただき、心から感謝している。今後、自分の研究価値を拡大するように、日本と中国の架け橋になれるように、一生懸命頑張っていきたい。」と感謝の意と抱負を述べました。 -
【寄稿】「樟寿会便り」
鹿児島大学樟寿会は鹿児島大学名誉教授の親睦団体です。昨年度と同様、本年度も新型コロナの新たな感染拡大の兆候が見られたため、会食を伴う「懇親会」は自粛し、Zoom を利用したオンライン併用で、11月19日(土)13時30分より、「第19回樟寿会総会・記念講演会」が稲盛アカデミー A11講義室で開催されました。参加者はオンライン参加者10名を含めて45名でした。遠方では名古屋市、宇治市、長崎市からのオンライン参加がありました。
冒頭、昨年の総会からの物故者10名の方々の御霊に黙祷を捧げたのち、「総会」に入り、吉田浩己会長の挨拶に続いて、会場参加の新入会員、隅田泰生会員(R4、理工学研究科(工学系)、愛甲正会員(R4、理工学研究科(理学系)の自己紹介がありました。引き続き、中谷宗弘会員(H.18、理)を議長に選出して議事に移り、前総会からの活動報告、令和3年 度会計報告が承認されました。
その後、小休憩を取ったのち、本会顧問の佐野輝学長から鹿児島大学の現状と展望について詳しいお話がありました。学長就任以来、厳しい財政事情を抱える中でこれを克服し、地域貢献を重視した総合大学として各方面から高く評価される特色ある取り組みを推進されてきたこれまでの経過と更なる発展の展望について話されました。
「記念講演」は、本会会員の種村完司氏(H.22、教育)による、「『葉隠』の実相-この書の魅力と限界-を語る」と題するものでした。『葉隠』とは、佐賀藩2代藩主鍋島光茂にお側役として仕えた山本常朝(1659-1719年)が主君亡き後、出家し隠棲していた約7年間の談話を、後輩の田代陣基が筆録して成った『葉隠聞書』のことです。時代の過渡期にあって、自らの死生観、武士倫理、喜怒哀楽を本音で語っている点が魅力であり、名誉と誇りを重んじる「武士道」と「奉公人道」との葛藤、自律と服従との矛盾の中で職責を全うした生きざまは、組織の中で生きる現代人にも訴えるものがある、というのが種村氏の見解でした。
鹿大「進取の精神」支援基金への寄附者様ご芳名一覧
鹿大「進取の精神」支援基金へのご協力を賜りました皆様に心より御礼申し上げます。お受けいたしました寄附金は、基金の目的に沿って有意義に活用させていただきます。ご寄附いただきました皆様方への感謝の意を込めまして、ご芳名等を掲載させていただきます。
なお、ご意向により、ご芳名等の掲載をご希望されない寄附者様につきましては、本誌に掲載いたしておりません。今後とも、鹿児島大学へのご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
令和5年3月 国立大学法人鹿児島大学 学長 佐野 輝
【2022年1月から2022年12月までの寄附者様】(順不同・敬称略)
一般資金
個人
- 三十万円
- 日髙 良廣
- 二十万円
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山口 大地野口 愛子
- 十万円
- 樋口 一也
- 五万円
- 遠矢 良樹
- 四万円
- 松成 裕子
- 二万円
-
髙村 和弘税所 將晃
- 一万円
-
山崎 吉朗豊福 成史
- 千円
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直井 小百合辻 潔
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
福元 太田中 賢治尾守 弘充城山 和久嶽崎 俊郎鬼丸 円青木 俊憲坪田 信一郎三井 薫尾崎 正祥山下 憲一郎藤掛 亮介松見 信太郎小林 義孝東 樹志山本 幸司西澤 保孝森川 勇一中村 雅之根路銘 安仁
団体等
- 百万円
- 鹿児島大学同窓会連合会
- 六十万円
-
株式会社久永
- 二十万円
-
エスオーシー株式会社
- 十五万円
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鹿児島大学ОB・ОGゴルフ大会実行委員会
- 十万円
-
ソフトマックス株式会社大福コンサルタント株式会社
- 五万円
-
株式会社ヤマシタジムキ
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
公益財団法人 米盛誠心育成会有限会社水迫畜産株式会社しんぷく九錦設備工業株式会社アジア宇宙環境研究コンソーシアムテクノ冷熱株式会社
代表取締役 中津野忠文市成建設株式会社ブルームビルド株式会社有限会社渕上事務器株式会社金海堂株式会社南和クリエイト - 掲載を希望されない寄附者様
- 四十四名
リサイクル募金
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
四本 美由紀高橋 啓三上山 誠郎宮崎 将尊張 秀娟安達 雅枝蓮尾 泰三松成 裕子齊之平 浩山口 大地舟橋 惠子田城 麻紀南田 幸子藤本 知恵子石井 聖子山中 英賢国﨑 栄子太田 道明鳥飼 久裕澤井 弘三朗吉見 慎太郎
- 掲載を希望されない寄附者様
- 四十名
修学支援事業基金
個人
- 十二万円
- 田中 達朗
- 十万円
-
比嘉 健裕樋口 一也
- 三万円
- 西並 眞吾
- 一万円
-
日高 貴子髙橋 宏德勢井 由美子
- 五千円
- 樋ノ口 正光
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
有銘 工岡本 実佳戸倉 瑞木山口 大地並松 靖子井本 剛司前村 政博上田 眞須藤 正幸及川 豊
- ご芳名を希望されない寄附者様
- 十九名
歯学部基金
- 六十万円
- 医療法人ほていや歯科
布袋屋智朗 - 五十一万円
- 鹿児島大学歯学部後援会
- 十万円
- 医療法人英成会
神谷ファミリー歯科 - 六万円
- 西村 正宏
- 五万円
-
柳田 敏孝医療法人仁慈会 太田歯科医院太田 博見
- 一万円
- 三宅 一範
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
片山 荘太郎萩原 和繁西谷 佳浩有村 憲治
- ご芳名を希望されない寄附者様
- 六名
鹿児島大学病院基金
- 百万円
-
株式会社アーステクノ手塚 善久
- 五十万円
-
一般財団法人親和会宇都 忠和
- 三十万円
- 伊地知 藤雄
- 十万円
-
久保 直山崎 正人嶽崎 俊郎
- 五万円
-
宮ヶ谷 理恵佐藤 秀夫
- 三万円
-
稲田 年輝西元 まり子
- 一万円
-
鹿児島大学病院B棟6階病棟山下 薫森 秀樹
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
中村 智子茂岡 和英南 隆堀下 千鶴三井 薫吉留 正次渡辺 京子小原 厚子萩元 美恵野西谷 佳浩伊東 勝二株式会社しんぷく田中 八重子池上 智志佐藤 真紀子中村 雅之衛藤 誠二家入 里志
- ご芳名を希望されない寄附者様
- 二十五名
練習船基金
- 十万円
- 河野 萬里
- 三万円
- 遠矢 良樹
- 一万円
- 川合 恭
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
瀬戸口 浩濱崎 健一
- 掲載を希望されない寄附者様
- 三名
医学部医学科教育基金
- 二万円
- 宮原 広典
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
嶽崎 俊郎三井 薫
- 掲載を希望されない寄附者様
- 四名
教育学部付属学校園基金
- 十万円
- 上谷 順三郎
- 九百七十円
- 鹿児島大学教育学部附属小学校
PTA研修部旅行班 - ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
野村 浩史武隈 晃楠原 豊小田原 恵佐藤 壮司尾籠 りか樋髙 寛子西 由華福田 留美三輪 玲子山下 泉鵜飼 竜太郎有村 純頼及川 豊
- 掲載を希望されない寄附者様
- 七名
動物病院基金
- ご芳名のみ掲載希望の寄附者様
-
中村 智子眞弓 由香原田 直美
- 掲載を希望されない寄附者様
- 四名
工学部創立七十五周年記念事業基金
- 七万円
- 山口 明伸
鹿児島大学理学部基礎研究支援金
- 掲載を希望されない寄附者様
- 一名
かぎん「玉里文庫」貴重書保存事業基金
- 一千万円
- 株式会社鹿児島銀行地域支援部
- 貴社の業務やSDGsへの取り組みなどについて教えてください
- 道路、橋梁、上下水道、砂防、農業用 ため池といったインフラを整備/維持補修するための計画策定、測量 設計、調査などを行う会社です。技術と英知を結集して、地域社会の発展に寄与することを会社の使命としております。
- 本学の学生に向けて応援メッセージをお願いします!
- 選択した分野で専門性を確立し、技術者としての自覚と責任感を持ち、さらなる技術力向上のため日々研鑽に努めてください。また、少子化の進むこれからの時代、産業界ではIT, AI等の技術を活利用し、生産性を高めることが求められております。
理学専攻・宇宙プログラム2年
人や物、そして想いを乗せて。地域をつなぐパイロット目指して、飛翔!
国生侑巨さん、小池明輝さんは、パイロットになるという幼少期からの夢を胸に、第2期SKYCAMP(2022年2~3月実施)に参加。8人の参加者から選抜され、この春、パイロット養成機関である崇城大学(熊本市)へ進学します。
2週間のSKYCAMPは、操縦桿を操って大空を飛ぶ感動と技術・知識の向上に加え、さまざまな気づきを得る場だった、と二人は振り返ります。「8人で情報を共有しての飛行は、チームの一体感を味わう素晴らしい体験。実際の飛行も操縦士のほかCA、整備士、管制官と多くの人に支えられていることを実感しました(小池さん)」「年下の他学部生のほか、他大学で航空操縦を専攻している学生とも議論を交わし、コミュニケーション能力が鍛えられました(国生さん)」
夢への糸口をつかんだ二人から後輩へ贈るメッセージを聞くと「迷ったとしてもまず挑戦を。やってみたら違うかもしれないけど、そこで得た知識や経験はきっと役に立ちます。趣味でも好きな事でも、ぜひ追究してみて(国生さん)」「思いは実現する、と稲盛和夫鹿児島大学名誉博士もおっしゃっていますが、僕自身、なりたいと思っていた夢に向け、独学で資格を取ったり、英語を勉強したりしてきました。なにか少しでも努力を継続すると、思っている自分にいつかなれるよ、ということを伝えたいと思います(小池さん)」と話してくれました。将来は「安全な運航を通じて自分たちを育んでくれた鹿児島に貢献したい。人と物資だけではなく、ワクワクや期待といった人の想いもしっかり運ぶことのできるパイロットになりたい」というのが共通の思いです。
※操縦飛行体験SKYCAMPは、2020年度より実施しているインターンシップです。参加翌年度卒業・修了見込みの学生は、文理・性別問わずにエントリー可能です。
- 価格:
- 580円(税込)
- 容量:
- 310ml
- 陶器:
- 105×92×80mm
- 素材:
- ストーンウェア
可愛らしい表情のさっつんと「かごんまの色」がコラボ。カラフルな色合いに仕上がりました。ご自宅用や大事な方への贈り物におすすめです。
インフォメーションセンター(鹿児島大学正門横)
☎099-285-3864 開館時間:月曜日〜金曜日(休日・祝祭日を除く) 9:30〜16:30(昼休み13:00〜14:00)