今号の表紙 「学内農場から望む」

輪作や緑肥作物を取り入れた作付け体系、施設栽培により、普通作物や園芸作物の栽培が行われ、キャンパス内に位置することから、研究だけでなく、学部学生の実習教育にも 使われています。また、輪作体系に基づく、持続的農業についての研究も行われています。


表紙イラスト 栫 陽子(会社員)
鹿児島大学教育学部美術科卒。鹿児島市にあるラグーナ出版で雑誌、書籍の編集、装丁デ ザインなどの他、表紙絵、挿絵、絵はがき等水彩画を中心にしたイラストの仕事もしてい ます。風景画が得意。鹿児島大学×風月堂のコラボお菓子「さっつんサブレ」のパッケージ デザインも担当。

学内農場から望む

情報基盤統括センター 始動!

高度情報化社会に対応する本学DXへの取り組み

南北600kmの県土をキャンパスとして実施されている鹿児島大学の教育・研究・地域 貢献活動においてIoT、ICTの活用は既に不可欠なものとなっています。加えてコロナ禍を契機としてオンライン・オンデマンド授業や遠隔操作、WEB会議など、さまざまなデジタルツールの活用が一気呵成に促進された現在、万全のセキュリティ対策の下、あらゆる学術成果のデジタル化と体系化、管理・運用といったDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められています。

本学においては今年4月にスタートした第4期中期目標・中期計画の中でAI・RPA(Robotic Process Automation)をはじめとする、ICTの活用による教育の 推進や業務の効率化を掲げています。その第一歩として令和4年4月、従来の学術情報基盤センターを情報基盤統括センターへと改組、運用を開始しました。

鹿児島大学DX推進元年を迎えて

情報基盤統括センター長馬場 昌範 理事
情報基盤統括センター長
馬場 昌範 理事

4月より、情報基盤統括センター長を拝命しました馬場昌範と申します。情報基盤統括センターは、昭和40年12月に設置された電子計算機室、昭和62年12月に設置された情報処理センター、 平成7年4月に設置された総合情報処理センター、平成15年4月に設置された学術情報 基盤センターをその前身として、これまでの本学の情報通信基盤を支え、情報環境の高度化推進に携わってきましたが、加えて、鹿児島大学のDX推進と、地域DXを積極的に支援することを目的として、令和4年4月1日付けで改組いたしました。

令和4年度を鹿児島大学DX推進元年として、センター内に「DX推進部門」、「図書館メディア情報部門」、「サイバーセキュリティセンター」の3部門を再編し、ICTの積極的な導入、DXを全学一元的に推進するとともに、大学全体の効率化を目指して、センター教職員一同、果敢に取り組むこととしております。今後も、情報基盤統括センターの更なる発展に努めて参りますので、皆様方の温かいご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

学術情報基盤センター

情報メディア基盤部門
特任教員:1 専任教員:1
  • キャンパス情報ネットワークの運用管理
  • 学内の情報通信ネットワークとの連携及び利用支援
  • マルチメディアコンテンツの作成、蓄積及び発信の研究開発、教育
  • 研究用計算機システムの運用管理
学術情報処理研究部門
専任教員:2
  • 学術情報データベース構築、学術情報発信及び研究コンテンツの研究開発
  • 附属図書館・総合研究博物館などにおける学術情報システムの開発運用
  • 高速・高信頼性ネットワークの研究開発
情報システム研究部門
専任教員:2
  • 情報セキュリティに関すること
  • 本学の事務処理効率化のための高度情報化支援
  • 本学の情報システム及びデータベースの企画及び開発運用
  • 情報通信技術を用いた本学の教育の情報化支援
  • 本学と地域、他大学、他研究機関との情報通信技術を活用した連携
業務室
  • 業務を担う室を設置し、各教員が室長とし て業務室の運営に責任を持つ体制
  • サイバーセキュリティ戦略室
  • 広報・IT相談室
  • システム運用管理室
  • 利用者認証運用管理室
  • 施設管理室

情報基盤統括センター

  1. 「学術情報基盤センター」を「情報基盤統括センター」へと再編し、教員1名、高度専門人材2名を増員
  2. センターの機能を維持・推進する事務サポート体制を再編
  3. センター及び事務組織の再編により、学内外から求められている「情報化・デジタル化」窓口を一本化。効率的な機能集約を図り、「地域活性化の中核的拠点としての鹿児島大学」の情報化・デジタル化を一元的に担う
DX推進部門
専任教員:3 特任教員:1 高度専門職人材:1
  • 大学DXに関する研究
  • 学内システムの整備・管理・運営および支援
  • 学内システムのデータ活用・提供
  • 地域DXの支援
  • 教育・研究用計算機システムの運用管理
  • 本学の事務処理効率化のための高度情報化支援
  • 情報通信技術を用いた本学の教育の情報化支援
  • 本学と地域、他大学、他研究機関との情報通信技術を活用した連携
システム運用管理室
  • 学内システムの整備・管理・運営および支援
  • 学内システムのデータ活用・提供
  • 教育・研究用計算機システムの運用管理
情報化支援室
  • 本学の事務処理効率化のための高度情報化支援
  • 情報通信技術を用いた本学の教育の情報化支援
地域支援室
  • 地域DXの支援
  • 本学と地域、他大学、他研究機関との情報通信技術を活用した連携
図書館メディア情報部門
専任教員:1
  • 図書館メディアに関する研究
  • 学内で保有するメディア、特に附属図書館の保有するデータのデジタル化・学術情報の利用促進
  • 大学WEBサイトの管理
  • 学内外への情報発信に関すること
メディア広報室
  • 学内で保有するメディア、特に附属図書館の保有するデータのデジタル化・学術情報の利用促進
  • 大学WEBサイトの管理
  • 学内外への情報発信に関すること
サイバーセキュリティセンター
特任教員:1 専任教員:1 高度専門職人材:1
  • 先進セキュリティ・ネットワークに関する研究
  • 情報セキュリティに関すること
  • サイバーセキュリティ総合戦略の構築に関すること
  • 基幹システムのデータバックアップなどBCPに関すること
  • キャンパス情報ネットワークの運用管理
  • 学外の情報通信ネットワークとの連携及びその利用支援に関すること
セキュリティ戦略室
  • サイバーセキュリティに関すること
  • サイバーセキュリティ総合戦略の構築に関すること
ネットワーク運用管理室
  • 基幹システムのデータバックアップなどBCPに関すること
  • キャンパス情報ネットワークの運用管理
  • 学外の情報通信ネットワークとの連携及びその利用支援に関すること

鹿児島大学の教育・研究における
デジタル化のあゆみ

本学におけるデジタル化の歩みは昭和40年の電子計算機室発足に始まります。以降、高度情報化社会の到来とともに、情報メディア利用技術の高度化が劇的な発展を遂げました。平成15年には、教育・研究への情報通信技術活用に関する研究、学術情報コンテンツの作成、蓄積、公開技術の研究開発など、大学における学術情報基盤の研究開発を目的とする学術情報基盤センターが設置されました。高度な研究開発は、学内外に対し質の高いサービスを提供するための基盤ともなります。

1965(昭和40)年
電子計算機室発足
1966(昭和41)年
導入
1983(昭和58)年
大学間ネットワーク(N1)に加入
1988(昭和63)年
IBM 3081-K32導入
光トークンリングLAN配線システム導入・桜ヶ丘キャンパス・下荒田キャンパスと専用デジタル回線で接続、電子計算機の学内共同利用を実現
1989(平成元)年
学術情報ネットワークに加入
ノード(接続拠点)設置
1993(平成5)年
IPプロトコルによりインターネットに接続
1994(平成6)年
全学にわたるネットワークであるキャンパス
情報ネットワーク(第1世代)整備
1995(平成7)年
総合情報処理センター設置
1996(平成8)年
情報処理教育用PC300台導入、富士通分散システム導入
2001(平成13)年
研究開発用ギガビットネットワーク(JGN)アクセスポイント設置
キャンパス情報ネットワーク更新
2002(平成14)年
全在籍者に利用者ID発行開始
桜ヶ丘サテライト端末室設置
情報セキュリティ対策支援室設置、端末室の時間外・休日開放開始
2003(平成15)年
学術情報基盤センター設置
2004(平成16)年
超高速高機能研究開発テストベッドネットワーク(JGN II)アクセスポイント設置
2005(平成17)年
教育研究用計算機システム更新(富士通分散システム、PC端末855台導入(工学部・教育学部・農学部・医学部・歯学部・水産学部・保健管理センターサテライト端末室設置)
2006(平成18)年
ホスティング(DNS、メール、WWW、メールマガジン)サービス開始
学術情報基盤センター教員組織再編
2008(平成20)年
生涯メール(@kadai.jp)供用開始
2009(平成21)年
教育研究用計算機システム更新(富士通仮想化システム、オンデマンドプリンタシステム、教育学部附属小中学校に端末室設置)
業務部門(情報システム開発室、計算機システム運用管理室、ネットワーク運用管理室、情報セキュリティ対策支援室、IT相談室)設置
2010(平成22)年
IT相談室を広報・IT相談室に改組
2013(平成25)年
ISO 27001 ISMS認証取得
パブリックVPSサービス、パブリッククラウドサービス提供開始、広報・IT相談室を利用者支援室に改組
2014(平成26)年
統合認証システム開始
2015(平成27)年
ネットワーク運用管理室および情報セキュリティ対策支援室をネットワークセキュリティ支援室に改組
鹿児島大学IDの開始
2016(平成28)年
ネットワークセキュリティ支援室を廃止し、サイバーセキュリティ戦略室を設置
認証基盤運用管理室を設置
2017(平成29)年
学認に参加、eduroam に加入
2018(平成30)年
計算機システム運用管理室と情報システム開発運用管理室を合併し、システム運用管理室に改組、利用者支援室を広報・IT相談室に改組
2022(令和4)年
改組に伴い、名称を情報基盤統括センターに変更3部門を設置(DX推進部門、図書館メディア情報部門、サイバーセキュリティセンター)。8室を設置(セキュリティ戦略室、ネットワーク運用管理室、メディア広報室、システム運用管理室、情報化支援室、地域支援室、施設管理、ISMS事務局)

鹿児島大学におけるICT、IoTを活用した
教育・研究・地域貢献の事例紹介

  1. お茶生産の最先端ICTを導入した遠隔監視運転管理の実用
    農林水産学研究科

    お茶生産の最先端ICTを導入した遠隔監視運転管理の実用 お茶生産の最先端ICTを導入した遠隔監視運転管理の実用

    国内ではリーフ茶の需要減や少子化の影響により茶業が低迷し、高齢化と後継者不足という事態を招いています。

    他方、海外において日本茶の需要増が見込まれ、輸出促進が期待されています。国際需要に対応し、鹿児島茶のブランド確立という好機を生かすため、生産者との協力により5Gを活用した収穫省力化、茶葉選別、遠隔監視自動運転・生育データ解析の実用実証を進めています。

  2. 徳之島におけるサトウキビ農業のIoT化によるスマート農業プロジェクト
    南九州・南西諸島域イノベーションセンター(旧)産学・地域共創センター

    3町圃場に設置されたフィールドサーバ 左:徳之島町 中:天城町 右:伊仙町
    3町圃場に設置されたフィールドサーバ
    左:徳之島町 中:天城町 右:伊仙町

    南西諸島の基幹産業であるサトウキビの刈取り作業はハーベスター導入が進んでいますが、高齢化の進展と共に農家戸数の減少や単収の低下など、新たな問題が生じています。

    人工衛星画像と圃場に設置したフィールドサーバーの収集データ解析により、作付・生育・収穫状況等の一元的把握を実証し、全島的育成状況把握手法の整備に貢献しました。

  3. 法学分野の教育研究データベースの構築
    司法政策教育研究センター

    最先端のICTを活用した遠隔講義
    最先端のICTを活用した遠隔講義

    法科大学院(平成27年度より学生募集を停止)の教育活動の中で蓄えたさまざまな教育資産を有効活用した社会貢献を継続しています。主な活動は、法学分野の教育研究データベースの整備と提供です。中でも AI技術を利用している全国条例データベースは他に類を見ない情報量と機能を誇り、全国の自治体に広く活用されています。

    また当センターでは最先端のICTを活用した遠隔講義システムを導入し、九州沖縄の各法科大学院や中央大学、早稲田大学と連携協協定を結び、居ながらにして複数の法科大学院の講義を受講することも可能です。

  4. 附属練習船「南星丸」を海洋ビッグデータ構築実証ラボとして活用
    南九州・南西諸島域イノベーションセンター(旧)産学・地域共創センター

    水産学部附属練習船「南星丸」
    水産学部附属練習船「南星丸」

    沿岸漁業のほか海面養殖漁業の盛んな鹿児島湾の三次元海況予報精度の向上に向け、南星丸の収集した洋上観測データを理工学研究科のデータサーバーに転送し、水産業に活用できる海洋ビッグデータとして構築・活用する事業が21年度よりスタートしています。

情報基盤統括センター設置の経緯と展望
〜これまで そして これから〜

情報基盤統括センターDX推進部門 鹿児島大学副学長 森 邦彦 特任教授
情報基盤統括センターDX推進部門 鹿児島大学副学長
森 邦彦 特任教授

前学術情報基盤センター長を務めた森邦彦特任教授に、改組による情報基盤統括センター設置への経緯と今後の展望について伺いました。

改組に至った経緯、目的とは?

わが国では海外諸国に比べ、あらゆる分野においてデジタル化、DX(Digital Transformation)が遅れており、本学においてもデジタル化とDX推進への機運は、近年高まりつつありました。折しもコロナ禍を契機に、全国的にDXの大幅な遅れが露呈することとなり、本学においてもデジタル化とDXの推進がいよいよ喫緊の課題となりました。今年4月にスタートした第4期中期目標・中期計画の中でAI・RPA(RoboticProcess Automation)をはじめとする、ICTの活用による教育の推進や業務の効率化を掲げ、改革に着手し、第一歩として改組が行われました。

人員の補充、強化も行いましたが、大きく変わったのは目的、それに伴うセンターの役割です。学術情報基盤センターは学内のネットワークや情報システムを管理、運用を担っていたわけですが、これまでは学内共同教育研究施設のひとつの組織という立ち位置でした。情報基盤統括センター は「統括」というキーワードが示すように、全学にガバナンスを発揮する部局として位置付けられています。

ICT、DXに関する取り組みを全学的に統括し、デジタル化を推進すると共にデジタルデータの積極的活用による業務・研究・教育の効率化と、学生に対する質の高い教育・研究の供与、地域DXの推進を目指しています。

新たな組織構成について

DX推進部門のほか図書館メディア情報部門が設置されました。図書館には学内の知的情報として貴重な図書やデータが格納され、リポジトリと呼ばれる論文データも図書館が管理しています。それらを統一的に管理していくため図書館の一部とセンターを一体化させ、事務業務も併せて行っています。

セキュリティ面においては、本学では平成28年度より国内屈指の情報セキュリティ企業(株式会社LAC)の佐藤豊彦氏をサイバーセキュリティ戦略室長(クロスアポイントメント制度活用による特任教授)として招へいし、セキュリティ対策に注力してきましたが、改組により同戦略室をサイバーセキュリティセンターへと昇格。特任教員に加え、専任教員と高度専門職人材を配置し、より高度な情報セキュリティ対策を推進しています。

また改組前、各部門は研究を担当し、業務を担当する部署は全て業務室に置かれていましたが、現在は三つの部門内にそれぞれの業務担当室を設けたことも新しい取り組みです。研究と業務を包括的に推進することで、より効率的・効果的な成果を目指しています。

セキュリティ体制強化の流れについて、少し詳しくご説明ください

情報セキュリティインシデントの防止には、組織における情報セキュリティ体制の構築が重要です。強化する上で、教職員の情報セキュリティに関する力量、情報資源に対するリスク対応、監査、外部委託業者への対応など総合的に包含する情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management Systems:ISMS)を構築して運用する必要があります。このISMSの仕組みの基準となるのが国際規格ISO/IEC27001であり、日本工業規格JISQ27001です。組織が構築したISMSがこの規格に適合しているか否かについては、ISMS適合評価制度により一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)(当時)および公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)が認証した認証機関が評価および認定することになっています。

本学においては、情報セキュリティポリシーは早期に定められていましたが、運用面での標準的対策が他大学との間で情報システムの連携を行う上での障害となっていました。このことから、学術情報基盤センター(旧)において情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の導入を行うこととし、平成25(2013)年4月にISMSの認証を受けました。平成27(2015)年4月には、ISMS認証機関審査登録判定会議において登録の継続および新規格(ISO/IEC27001:2013、JIS Q27001:2014)への適合が承認され、現在に至っています。

地域DXの推進とは、どのようなイメージですか?

計画の中で、教育、研究のDXと並行して地域DX推進についても重要な課題として掲げています。南九州の「知の拠点」として地域貢献を目指す本学では、これまでも各学部・研究室でICTやIoTを使った取り組みを地域と共に進めていますが、それぞれの取り組みを一元的に管理することができれば、全学的な協力・支援体制が充実し、地域で実現できる事も増えていくのではないかと考えています。具体的なDX推進方針については、現在検討を進めている段階です。

学びの部屋

地域キャリア・インターンシップ事前演習

(かごしまキャリア教育プログラムの実地体験事前演習)
(高度共通教育科目)

キャリア形成支援センター

淺田 隼平 特任助教
体系的な教育プログラムを通じて社会人基礎力を養う
「かごしまキャリア教育プログラム」カリキュラム図
「かごしまキャリア教育プログラム」カリキュラム図

地域と共に社会の発展に貢献する総合大学を目指す本学は、地域活性化の中核的拠点(地域の知の拠点)として、地域に根ざした人材育成に力を注いでいる。2017年度には全学・学部横断的に地域人材育成を進める司令塔として総合教育機構を設置。全新入生の必修科目「大学と地域」を土台として三つの教育プログラムから成る「地域人材育成プラットフォーム」を展開している。プラットフォームの一つ「かごしまキャリア教育プログラム」では 、実践カリキュラムとして夏休みに県内の企業、自治体の協力の下「地域キャリア・インターンシップ」を実施。インターンシップ本番を控えた前期、「地域キャリア・インターンシップ事前演習」が開講された。


ユニークな課題解決型プログラム

一般的なインターンシップは数日間の就業を行うタイプのものが多く、半数以上が企業説明会方式。一方、本学のインターンシップは10日間以上の就業体験を行うと同時に、受け入れ先から提示された企業課題、地域課題の解決に向けて取り組む「課題解決型プログラム」だ。正課外活動として取り組む学生に対しても「かごしま課題解決型インターンシップ」として提供され、学部、学年問わず参加できるのも特徴だ。この取り組みは全国的に高い評価を受け、インターンシップアワード2021において文部科学大臣賞・優秀賞を受賞した。今年度の課題テーマは商品販売戦略、社内DX化推進計画、地域活性化プランなど多岐にわたる。様々な業種、自治体でのプログラムが用意され、正課外活動の学生を含めおよそ人が参加する。事前演習では、インターンシップでの学びを最大化するための知識、スキル、態度を身につけることを目指す。8回の授業を通じて社会人マインドを学ぶほか、社会人講師による講義も交え、課題発見・解決能力を学ぶ。


少しだけ背伸びを

「インターンシップ参加中のあなたは普段のあなたではなく、鹿児島大学を代表するプレ社会人という立場。この授業を含め、社会人スイッチを入れて、少しだけ背伸びすることを意識してください」。人前での発言や能動的な行動など、普段より一歩前へ出ようと意識することを淺田隼平先生は促す。「実際に社会人が学生にどのような能力を求めているかという国の調査では、専門知識や技能よりも、コミュニケーション能力や協調性、誠実さ、チャレンジ精神、行動力などが上位に並びます」。その根拠は経済産業省の提唱する「社会人基礎力」の定義から読み解くことができる、と淺田先生。「社会人基礎力とは、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力。前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力という三つの能力が必要とされています。さらにその基盤として最も重要なのは、向上心、 チャレンジ精神といったマインド・姿勢です。これらの土台があってはじめて、専門知識や技能を最大限活かすことができます。つまり、社会は学生のうちに「成長し続けるための基盤や土台」をしっかり固めておくことを求めている、というわけです。」

全員が参加する初の対面授業。ほとんどが初対面という学生同士だが、名刺交換を交えた自己紹介や目的意識を共有するグループワークを通じ、教室内には活気が満ちていった。


いよいよ本番!

淺田 隼平(あさだ・しゅんぺい) 特任助教
淺田 隼平(あさだ・しゅんぺい) 特任助教
鹿児島大学 総合教育機構
キャリア形成支援センター 特任助教

[学位] 修士(経営学)(2020年3月松山大学)
[所属学会] 大学教育学会
[専門分野] 経営学
[研究テーマ]組織行動、人的資源管理、組織学習

かごしまキャリア教育プログラム受講生の原田花梨さん(法文学部経済コース 3年)は「2年生の演習でも社会人基礎力について学び、自己分析チャートを作りましたが、授業を離れるとあまり意識することがなかったということに気づきました。インターンシップを機に力を伸ばしたいと思います」、横山 眞美さん(同学部多元地域文化コース 3年)は「いよいよ本番が近づいてきたことを実感しています」と、意欲を口にした。「友人と遊びの予定を決める時でも主体的に他者を巻き込む力は必要です。日常のいろいろな場面で自分ができる事を考え、少し背伸びを意識しながらの行動、姿勢を大事にしてください」と、全ての学生へ向けて淺田先生はメッセージを寄せた。

自分はどのように生きたいのか。
その生き方を実現するためにはどんな仕事に就くのか。
模索する期間が大学時代。
いろんな体験を通じ、多様な価値観に触れてほしい。

NPO 法人 くすの木自然館代表理事 兼 専門研究員 浜本 麦(はまもと ばく)
鹿児島県出身。2005年3月 鹿児島大学理学部地球環境科学科卒業。2005年4月NPO法人くすの木自然館に研修生として入社(2009年4月正式入社) 2021年より代表理事

NPO 法人 くすの木自然館代表理事 兼 専門研究員 浜本 麦(はまもと ばく)
NPO 法人 くすの木自然館代表理事 兼 専門研究員
浜本 麦(はまもと ばく)

1995年から環境学習や自然体験、エコツーリズムなどの活動を続ける「くすの木自然館。代表を務めるのが浜本麦さんです。自然を愛する母、祖父の影響を受け、子供の頃から自然に親しんで育ちました。生き物好きだったことから少年時代、獣医を目指しましたが、「高3の数学でつまづき、進路変更せざるをえませんでした。」野生生物を研究する場として理学部を考え始めた頃、鹿児島には何もない、という理由で他県の大学へ進学する友人たちの姿に違和感を覚えました。「山も川も海も島も火山もある。その恵みを受けたおいしいものもたくさんある。温泉にも入れる。鹿児島には、遊び足りないくらい遊べる場所がいっぱいあるのにな、って」。故郷の良さを学術的に証明しようという熱い志を胸に、本学へ進学。研究職を目指し、勉強に打ち込む傍ら、サークル、アルバイトと、充実した学生生活を過ごす中、新たな転機が訪れます。

ゴカイをモチーフに作った帽子をかぶって登場する浜本さん
自然学習の場では、大好きなゴカイをモチーフに作った帽子をかぶって登場することも

「3年生の佐藤正典先生の授業で、日頃私たちが口にする近海魚の餌はプランクトンではなく、干潟の生き物だということを習いました。子供の頃から浜でゴカイを掘り、魚釣りの餌にしていたことを思い出し、腑に落ちました」。佐藤先生の授業を機に、人間が川に流す有機物類を食べ、吸収してくれるのが干潟や浅瀬の生き物だということ。干潟を開発することで赤潮などが発生し、日本の漁獲量が減っていることなどを学び、「こんな大事なことを大学まで学ぶ機会がなかったことに愕然としました」と浜本さん。

その後、佐藤先生の下、重富海岸でゴカイの産卵に関する研究活動を進めながら、自然教育・啓発活動に従事できる進路を模索しました。

なぎさミュージアム
重富海岸の波穏やかな浜辺に立つ「なぎさミュージアム」
ミュージアムではさまざまな海棲生物展示やジオラマ・パネルを展示
ミュージアムでは、さまざまな海棲生物展示やジオラマ・パネル展示など、錦江湾の生き物や環境を伝える仕掛けが工夫されています
生き物と人間のつながりについて模型やパネルを使って解説
生き物と人間のつながりについて模型やパネルを使って解説
干潟、川、田んぼ、無人島など、様々な場所でエコツアーを行う様子
干潟、川、田んぼ、無人島など、様々な場所でエコツアーを行っています

「当時、鹿児島の自然と生き物を保全・研究し、広く伝える活動を仕事として実現できる場は、くすの木自然館のほかにはありませんでした」。実は、自然館の創設から中心メンバーとして精力的に活動する浜本奈鼓さんは、浜本さんのお母さん。「多忙な背中を見てきただけに、親と同じ仕事には就きたくない、との強い思いもありましたが、やりたい事ができるのは当館しかない。悔しいけど、履歴書を書いて押しかけました」と、笑います。アルバイトを掛け持ちしながら研修生として実務を覚え、正規採用後は海の生物の専門家として「なぎさミュージアム」の創設など新事業を打ち立て、2012年に誕生した霧島錦江湾国立公園の環境整備、施設運営などにも寄与しています。

後輩へのメッセージを伺うと「仕事に就くということをゴールに置くのではなく、自分はどのように生きたいか、そのためにはどんな仕事をすればいいか、という発想で進路を決めてほしいと思います。それを模索する期間が大学時代。いろんなところを見て、いろんな価値観に触れてください」と、熱いエールを寄せました。

医学部保健学科 理学療法専攻
牧迫 飛雄馬 教授

健康長寿へ向けた多面的アプローチ
〜高齢者の心身機能の維持・向上に
効果的な運動の開発および啓発活動〜

高齢化による心身の機能低下は、将来の認知症発症や要介護発生につながる恐れがあり、予防、改善の重要性が高まっている。さらにコロナ禍以降は外出や社交の機会が制限され、幅広い年代において健康管理は切実な課題となっている。これらの社会的課題に対し、牧迫飛雄馬先生の研究室では、理学療法の知見を生かし「薬に頼らない健康寿命※の延伸」に関する多面的な研究と啓発活動に力をを注いでいる。

予防の第一歩は
現状を把握すること

筋肉量、筋力、運動機能など自分の状態を知ることが健康意識向上への第一歩
筋肉量、筋力、運動機能など自分の状態を知ることが健康意識向上への第一歩

「病気を早期発見するための健康診断は各自治体で実施されていますが、特に75歳を超える方々は、歩くのが遅くなって転びやすくなった、物忘れが 気になるなど、病気ではなくても老化の兆候がみられるようになります」。将来の認知症発症や要介護状態を防ぐためには、自身の心身機能の状態を客観的にチェックし、把握することがまず大切、と牧迫先生は語る。

牧迫先生は理学療法士として勤務した経験を持ち、在宅医療に携わる中で介護予防の重要性を痛感したという。「入院している急性期の患者さんは、さまざまなリハビリを受けることができ、回復するのも早い。一方、脳卒中などを発症後、10年、20年経過している在宅の患者さんは、体調に不具合が生じた時に適切なリハビリテーションを施さなければ、その後の生活が大きく制限されてしまうと危惧した」。大学院修了後は国内外の研究機関での研究職としての経験を通して、医療のほか、心理学や福祉工学などの老年学に関わる多面的な視野の重要性を感じ、知見を深めた。国立長寿医療研究センター(愛知県)在職時には、運動と脳の活性化を組み合わせた認知症予防プログラム「コグニサイズ」の開発に携わり、現在も普及活動に取り組んでいる。「運動は、身体機能のみならず脳の活動に対しても好影響を及ぼすことが解明されている。ただし、認知症の発症や進行を遅らせるためには、運動と合わせて脳への刺激も必要となる」

包括的な研究・啓発と支援ツール開発

ショッピングモール、ジムなど誰もが気軽に利用しやすい場所へも積極的に出向き、健康意識啓発に取り組む
ショッピングモール、ジムなど誰もが気軽に利用しやすい場所へも積極的に出向き、健康意識啓発に取り組む

本学と垂水市が協働で進める「たるみず元気プロジェクト」において、牧迫研究室では高齢者の身体・認知機能チェックのほか日常生活や食生活の調査など、包括的な健康チェックを担当。前年度に比較して筋力低下・筋肉減少(サルコペニア)が見られる参加者に対してはトレーニングメニューを提供している。2021年度は十島村との協働事業にも着手し、オンラインによるフレイル予防講座とトレーニングを実現。22年度はコロナ禍収束のタイミングを見計らって、各島への訪問も計画している。

「住み慣れた愛着のある地域でずっと暮らしたい、という高齢者の方々の思いを実現するためにも、日常の健康づくりが鍵です。セミナーや講演会を単発で行うだけではなく、継続的な支援を可能にする仕掛けを作りたい」。研究室では、健康手帳作成や動画配信など、誰もが日常的に活用できるツールの開発・普及にも注力する。コロナ禍を機に「オンラインヘルスラボ(KU‐OHL)」を保健学科3専攻(看護学、理学療法学、作業療法学)合同で制作、21年12月にサービスを開始した。KU‐OHLは、誰でも無料で登録することができ、チェック項目に回答すればグラフやコメントなどのヘルスデータが表示される仕組み。登録会員には公開講座の案内や健康情報なども配信され、半年後には再チェックを受けることも可能だ。「コロナ禍で身体活動量が減少し、生活リズムが不規則になるなど、生活習慣の悪化が問題視されている。一方、健診受診率は低下しており、接触による健康チェックの開催も難しい。早めにご自身の健康状態に気づいていただくきっかけになれば」。将来的に医療・介護費などのデータとの連結や、企業、自治体との共同研究への活用などを目指している。

自ら経験の幅を広げる努力を

学生へのメッセージを伺うと、理学療法士を経て国内外で学んだ自らの経験も振り返り、「一人の先生から100教えられても100を超えるものは身に付かない。自ら幅を広げて学びの機会を増やせば吸収できるものは少しずつ増えるから、今は関心がないことでも一旦触れ、見て、感じる機会を広げてほしい」と語った。

牧迫 飛雄馬(まきざこ・ひゅうま)

牧迫 飛雄馬(まきざこ・ひゅうま)

早稲田大学 博士(スポーツ科学)2009年3月、国際医療福祉大学 修士(保健学)2003年3月、2010年~2017年国立研究開発法人国立長寿医療研究センター、2017年4月~ 鹿児島大学 医学部保健学科 教授、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部 客員研究員
■所属学会等 : 日本老年療法学会(副理事長)、日本予防理学療法学会(副理事長)、日本サルコペニア・フレイル学会、日本地域理学療法学会、日本老年医学会、日本転倒予防学会
■研究分野 : ○ライフサイエンス ○老年学 ○健康科学 ○リハビリテーション科学 ○介護予防


飼料の栄養機能性成分研究
および食肉の品質評価

農学部 農業生産科学科 栄養生化学・飼料化学研究室
大塚 彰 教授
  • 栄養学に基づき、ヒトや家畜が食品や飼料を摂取した際の栄養素(タンパク質、脂質、糖質、食物繊維など)の消化、吸収、代謝について調査しています。筋肉量を増加する栄養成分や脂肪を減らす栄養成分、ストレス耐性を有する栄養成分などについて研究し、飼料開発・配合に活用します。
  • かごしま黒豚、リュウキュウイノシシ、闘牛肉、黒さつま鶏など、主に南九州特有の畜産物について品質(機能性、食味)に関する分析・評価を積極的に行っています。旨みや食感の良さなどについて科学的根拠を明らかにすることで、南九州の畜産業振興をサポートしています。
鹿児島大学 農学部 農業生産科学科 栄養生化学・飼料化学研究室
研究の背景

量から質へとシフトする食肉市場ニーズに応えて

当研究室では、家畜の栄養をメインに研究しています。栄養を考える上で、与える飼料やその配合割合もポイントになるので、この二つの分野を軸にさまざまな角度からの研究を行っています。

従来の家畜の栄養学は、いかに家畜を太らせて肉をたくさん作らせるかという方向で発展してきましたが、市場において肉質の良さが求められるようになってきた近年、私たちの研究においても、与える飼料が肉質にどのような影響を及ぼすのかという部分に焦点がシフトしてきました。最近では特に飼料の原材料が肉質に大きな影響を及ぼすことがわかってきたので、栄養学の観点からさまざまな研究を進めています。飼料の材料にはさまざまな原料があり、生産現場では最適な資材を最適な割合で配合したものを家畜に与えますが、成分の割合を変えることによる肉質の変化にも着目し、理化学検査や官能検査など、さまざまな手法を使った研究を進めています。

研究の特徴

鹿児島県産畜産物のおいしさと機能性を科学的根拠で示す

飼料の研究をメインに行っていた当研究室が、肉の品質分析という領域に研究分野を広げたのは、およそ20年前から携わってきた焼酎粕の研究がきっかけです。芋焼酎を製造する時に出る焼酎粕を畜産飼料として活用する研究の中で、飼料を与えて出来上がる家畜肉の品質を評価する研究に着手したという経緯があります。

飼料の研究も継続的に行っています。現在進めている研究の一つは、ハーブ資材の活用による機能性の検討です。ハーブは抗酸化力が高く、生体内で発生する酸化ストレスを抑制するのに有効であることがわかってきています。

量から質へと市場のニーズが変わっていく中、おいしさと健康機能を兼ね備えた、さまざまな品種の食肉が登場しつつあります。国内外の競争先に後れを取らないよう、先手を打って市場ニーズに応える取り組みが不可欠です。当研究室では、学術面から鹿児島の畜産をサポートすることを目指し、おいしく健康に良い肉質の研究に日々取り組んでいます。

取り組み事例

かごしま黒豚肉の優位性を示す科学的根拠を解明

黒豚

昔からおいしいと言われてきたかごしま黒豚ですが、科学的な解明は30年前から進んでいませんでした。現在400種以上の国産ブランド豚がひしめく中、かごしま黒豚が生き残るため、県畜産試験場の依頼を受け、最新手法を使ってさまざまな分析を行いました。その結果、白豚肉や輸入豚肉に比べ、うま味に関するグルタミン酸が3.7~4.5倍、甘味に関するトレオニンも5.1~6.7倍含まれていることが分かりました。実際に食べ比べる官能試験も行い、黒豚のジューシーな食感や歯応えが高く評価されました。さらに飼料に混ぜるサツマイモの配合割合を変えることで、食味や食感が変化することも確認でき、今後の黒豚ブランドの展開に活用できる調査結果が得られました。

南九州・南西諸島における未利用肉の研究<闘牛肉>

徳之島の闘牛 徳之島 闘牛肉

徳之島は闘牛が非常に盛んなことで知られていますが、負けが込んだ闘牛の肉は淘汰され、一般の市場に出ることはほとんどありませんでした。島内では、闘牛肉は硬くておいしくないと敬遠され、これまで安価なペットフードや動物園餌などに利用されてきました。ですが、30カ月ほどで市場に出回る通常の食肉(雌や去勢雄)に比べ、数年から10年前後と長期にわたって鍛え上げられた無去勢雄の闘牛肉は貴重な食材と言えます。数々の戦歴を誇る希少な闘牛肉を正当に評価するため、栄養学の観点から調査・分析を行いました。その結果、肉質は4週間程度の熟成によって柔らかくなり、甘さに関するトレオニンは5倍以上、旨みに関するグルタミン酸は10倍以上と、各種のアミノ酸が増加することも分かりました。また通常の牛肉に比べ、筋肉の疲労回復成分であるカルノシンを多く含有していることも明らかになりつつあります。

南九州・南西諸島における未利用肉の研究<リュウキュウイノシシ>

徳之島にはイノシシの固有亜種であるリュウキュウイノシシが棲息しています。本土のイノシシに比べると体の大きさは半分程度で、年2回出産する繁殖力があります。農作物を荒らすこともあり、島では捕獲して食用にされています。このリュウキュウイノシシの肉の特徴を調査したところ、特にバレニン、カルノシンという抗疲労・抗老化作用のある物質(イミダゾールジペプチド)が多く含まれることが分かりました。バレニンは鯨肉に豊富に含まれる物質、カルノシンは渡り鳥の胸肉に多く含まれている物質です。リュウキュウイノシシには、豚肉のおよそ8倍のバレニンとおよそ2倍のカルノシンが含まれていることが分かり、徳之島の貴重な資源としてアピールする上での科学的根拠を得ることができました。


鹿大メッセージ

かごしま黒豚の美味しさの根拠を学術的に証明
農学部農業生産科学科栄養生化学・飼料化学研究室 大塚  彰(おおつか・あきら)教授
農学部農業生産科学科栄養生化学・飼料化学研究室 大塚 彰(おおつか・あきら)教授

鹿児島は肉の宝庫です。黒毛和牛、黒豚、肉用鶏も 全国でトップクラスの品質と生産量を誇っていますが、あまり認知されていないような印象がありますので、科学的アプローチによって鹿児島の畜産物の素晴らしさをもっと発信したいと考えています。黒さつま鶏の研究も進めていますが、やはりイミダゾールジペプチドが普通の鶏に比べると多いということが分かってきたところです。研究事例に挙げたリュウキュウイノシシも、例えば徳之島と沖縄では機能性成分の含有量が違っている可能性も考えられます。
このように鹿児島は、肉素材に事欠かない、まさに〝宝の山〞です。さまざまな研究を進めて、「かごしま肉マップ」を作りたいと考えているところです。ただ、おいしいですよ、と言うだけではなく、科学的根拠に基づく味の秘密や健康への効用などを積極的に発信して、地域の畜産業に貢献していきたいと考えています。

1998年10月
鹿児島大学 博士取得
1991年5月
鹿児島大学 農学部 生物資源化学科 助手
1998年12月
准教授
2014年8月
教授
2016年4月
農業生産科学科 教授

鹿児島県畜産試験場からのメッセージ

鹿児島県畜産試験場 副場長 大小田 勉(おおこだ・つとむ)さん
鹿児島県畜産試験場 副場長 大小田 勉(おおこだ・つとむ)さん

全国にブランド豚が400種類以上あり、それぞれがアピール方法に工夫を凝らすなか、東京や大阪でかごしま黒豚を販売する大手業者から、精肉を販売する際のポップアップにできるような売り文句がほしいと要望されました。かごしま黒豚のブランド力向上を目指すため、産官学として県経済連、畜産試験場、鹿児島大学の共同研究が始まり、大塚先生には味の科学的分析を依頼しました。
その当時、最新の分析法であったメタボローム解析により、黒豚肉は白豚肉や輸入豚肉に比べ、うま味であるグルタミン酸が3・7〜4・5倍高く、甘味であるトレオニンも5・1〜6・7倍高いことがわかり、かごしま黒豚が美味しいという科学的根拠が明らかになりました。この結果は黒豚農家や販売業者を大いに勇気づけ、関係者を元気づけました。
大塚先生は鶏の研究に見識の深い先生ですが、今回の取り組みや成果から豚の研究への期待が大きく膨らんでいるところです。豚関係者からの依頼も多いと聞きますが、ぜひ鹿児島県の養豚業界のため、がんばって頂きたいと思っています。

産学連携に関する相談・お問い合わせ窓口:産学・地域共創センター ☎︎099-285-8491

  • BCP災害対策本部設置訓練を実施

    BCP災害対策本部設置訓練を実施

    2月18日、「令和3年度 BCP災害対策本部設置訓練」を実施しました。
    この訓練は、災害やテロ、システム障害などの危機的状況に備えて策定された BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)における各自の役割や対応について確認することを目的として昨年度から実施しているものです。震度6弱の地震発生を想定した訓練では、災害発生後の災害対策本部設置に続き、各事業場において災害対策支部を設置しました。 災害対策本部では総務班が各支部とIP無線機を使用した被害状況の報告・訓練を実施、 また、情報基盤班は情報ネットワークの復旧作業を行い、その他の班もそれぞれの業務の確認を行いました。

  • 悪性骨腫瘍に対する承認(実用化)を目指した腫瘍 溶解性ウイルスの第II相医師主導治験(多施設共同)を開始

    悪性骨腫瘍に対する承認(実用化)を目指した腫瘍 溶解性ウイルスの第II相医師主導治験(多施設共同)を開始

    鹿児島大学病院では、独自に開発した、がん細胞のみを殺傷する遺伝子組み換えウイルス医薬「サバイビン反応性 m-CRA-1」の、悪性骨腫瘍に対する承認を目指した第II相医師主導治験(多施設共同)を開始。2月18日に、探索的医療開発センターの小戝(こさい)健一郎 センター長(大学院医歯学総合研究科 遺伝子治療・再生医学分野 教授)ら5人が記者発表を行いました。
    「サバイビン反応性 m-CRA-1」は小戝教授らが開発した医薬です。ほとんどのがん細胞で異常に生み出されているサバイビンと呼ばれる遺伝子発生のメカニズムに反応し、増殖しながらがん細胞を破壊します。正常な細胞には機能しないため、安全性が高く、副作用も非常に少ないことが、動物実験などで確認されています。
    悪性骨軟部腫瘍に対する第I相治験は、2016年から鹿児島大学病院で実施されました。9人の被験者に対し、治験薬に関連した重大な有害事象が確認されず、安全性が確認され、有効性を示唆する結果も見られました。この結果を踏まえ、悪性骨腫瘍に対する多施設共同(鹿児島大学、国立がん研究センター中央病院、久留米大学)第II相治験を開始しました。
    悪性骨腫瘍は骨にできるがんで、100万人に対し4人(日本全体で年間500~800人)が発症する「希少がん」であり、有効な治療法がない状況にあります。今回、遺伝子治療薬として承認されれば「世界初」となるもので、今後2年間で20人を対象に有効性を評価し、2025年に再生医療等製品や希少がんに対するオーファンドラッグとしての早期承認申請を目指します。

  • -地域密着型パイロット人財創出プログラム-「SKYCAMP」修了式を開催

    -地域密着型パイロット人財創出プログラム-「SKYCAMP」修了式を開催

    3月4日、鹿児島空港に隣接するJGASフライトトレーニングセンターにおいて、操縦飛行体験インターンシップ SKYCAMP 修了式が行われ、第二期生8名に修了証書が授与されました。
    SKYCAMPは、鹿児島大学・日本航空株式会社(JAL)・日本エアコミューター株式会社(JAC)の3者が締結した連携協力協定に基づき実施する「インターンシッププログラム」です。新型コロナウイルス感染症対策を徹底して実施し、参加学生は2週間にわたって座学・ FTD(※)・実機フライトを含む様々なプログラムを受講。パイロットという職業を体験するとともに、JAC社内をめぐる「JACツアー」等を通し、パイロットの仕事だけではなく航空業界全体についても学びました。
    修了式は、日本エアコミューター株式会社 越智 健一郎 代表取締役社長より、学生一人ひとりに総フライト時間が記載された修了証書が授与され、本学 武隈 晃 理事(教育担当)・稲盛アカデミー長から、JACやJALをはじめ、操縦訓練をご提供いただいた株式会社 Japan General Aviation Service(=JGAS)の皆様に謝辞があり、予定していた日程を無事に終了できたことを喜ぶとともに、学生へのねぎらいがありました。最後に学生一人ひとりが感想や感謝の言葉を述べ、SKYCAMPの全行程が終了しました。
    (※)FTD:フライト・トレーニング・デバイス(フライトシミュレーター)

  • 令和3年度学長と学部卒業予定者との懇談会を開催

    令和3年度学長と学部卒業予定者との懇談会を開催

    3月7日、3月に卒業予定の学部学生と学長との懇談会をオンラインで開催しました。この懇談会は、学長が卒業予定者から、卒業にあたっての感想や在学中に学んだこと、大学への要望等、率直な意見を聞き、今後の学生支援及び大学運営の改善に繋げていくことを目的に毎年度開催しているもので、今回は各学部から15名の学生が出席しました。
    冒頭、佐野輝学長から「新型コロナウイルスにより、皆さんの学生生活に大きく影響を及ぼしたと思いますが、これまでの学生生活を振り返って感じたことや今後の抱負など率直な意見を聞かせていただき、鹿児島大学の今後の教育、環境改善に努めていきたい」と開会の挨拶がありました。
    出席者の自己紹介に続き、武隈晃理事(教育担当)の進行のもと、「鹿児島大学での学生生活を振り返って感じること」、「鹿児島大学で学んだことを社会でどう活かしていきたいか」、「これからの鹿児島大学に望むこと」をテーマに、フリートーキングの形で懇談が進められました。
    学生からは、サークル活動や海外留学等で経験したこと、各学部での特色を活かした講義・実習等で学んだことや感じたこと、今後の抱負等について活発な意見が出されたほか、教育内容の改善に対する要望や提案も出され、今後の大学運営にとって有意義な懇談会となりました。
    最後に、佐野学長から「鹿児島大学で教育を受けたことを誇りに、鹿児島大学の繋がりを大いに活用して、社会で活躍して欲しい」と激励の言葉が贈られました。

  • 東町漁業協同組合との連携に関する協定書を締結

    東町漁業協同組合との連携に関する協定書を締結

    水産学部は、漁家・養殖経営の改善に向けた実践的取り組みを強化するため、東町漁業協同組合と協定書を締結しました。
    この連携を通じて、実践的取り組みにより地域活性化に寄与する事業を円滑に推進し、水産学部附属海洋資源環境教育研究センター東町ステーションを有効利用して、人材育成の場や機会、必要な知的資源の提供を行い、併せて水産学部が全面的にバックアップし教育・研究フィールドを共有・協働する事で、魅力ある水産業の発展を目指すこととしています。

  • 令和3年度卒業式・修了式を挙行

    令和3年度卒業式・修了式を挙行

    3月25日、鹿児島大学事務局4階特別会議室において、令和3年度卒業式・修了式を挙行しました。
    今年度の卒業・修了生は、学部卒業生1,921名、大学院修了生533名の計2,454名。昨年度同様、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、各学部及び各研究科の代表者が出席し、ご来場いただけない卒業生・修了生、ご家族の皆さまへ向け、式典の様子をYouTube鹿児島大学公式チャンネル外部リンクにてライブ配信を行いました。
    式では、佐野 輝学長が各学部の代表者9名、各修士課程・各博士課程の代表者13名、計22名に学位記を授与しました。
    学長告示の後、芝 桜子さん(医学部3年)による在学生総代送辞、園川 竜征さん(共同獣医学部6年)による卒業生総代答辞が行われ、式は厳かに終了しました。

  • 情報基盤統括センターを開設、看板の除幕式を実施

    情報基盤統括センターを開設、看板の除幕式を実施

    「学術情報基盤センター」を「情報基盤統括センター」へ改組(学内措置)したことに伴い4月6日、看板の除幕式を挙行しました。情報基盤統括センター及び情報推進部の教職員が一同に会し、馬場昌範情報基盤統括センター長の挨拶の後、看板の除幕を行いました。センター長は挨拶の中で「本学のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進元年として、大学全体の効率化やデジタルキャンパス等を目指し果敢に取り組みたい」との決意を述べました。
    当該センターは、「DX 推進部門」、「図書館メディア情報部門」、「サイバーセキュリティセンター」の3部門に教員を再編し、これまで学術情報基盤センターで行っていた本学の情報通信基盤、情報環境の高度化推進業務に加え、鹿児島大学のDX推進と、地域DXを積極的に支援することを目的として設置したものです。

  • 令和4年度入学式を挙行

    令和4年度入学式を挙行

    4月7日、鹿児島大学事務局4階特別会議室において、令和4年度入学式を挙行しました。今年度の入学生は、学部入学生1,935名、大学院入学生586名の計2,521名。昨年度同様、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、各学部及び各研究科の代表者が出席し、ご来場いただけない入学生及びご家族の皆さまへ向け、式典の様子をYouTube鹿児島大学公式チャンネル外部リンクにてライブ配信を行いました。
    式では、佐野 輝学長による入学許可の後、学部と大学院それぞれを代表し、早瀬 真悠さん(法文学部)と長屋 未夢さん(臨床心理学研究科専門職学位課程)の2名が入学生宣誓を行いました。
    続いて佐野学長は告辞で、入学生に祝意を表するとともに、現在人類にとって大きな試練となっている新型コロナウイルス感染症に触れ、「知の力」をもって地球レベルの困難に立ち向かう人材として育ってほしい」と述べるとともに、「将来、鹿児島大学で学んだことに自信と誇りを持てるよう、鹿大生として充実した日々を送ることができるよう願っています。夢を持ち、実現に向けて努力を行い、鹿児島から世界に羽ばたいてください」とエールを贈りました。

  • 先端科学研究推進センター銘板除幕式を開催

    先端科学研究推進センター銘板除幕式を開催

    4月19日、馬場 昌範研究・国際担当理事、小山 佳一先端科学研究推進センター長による銘板の除幕式を行いました。
    同センターは、令和4年度概算要求教育研究組織改革分(組織整備)「先進的生命科学研究推進センターの設置~オール鹿児島大学でのコロナ研究推進」により設置されたもので、感染制御研究ユニット、先端生命科学動物実験ユニット、研究支援ユニットで構成。
    「感染制御研究ユニット」は、新設したバイオセーフティレベル3(BSL3)実験室を活用しつつ、学内の各部局や学外の企業などと連携・協力し、社会・地域からのニーズが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を中心とする新興・再興ウイルス感染症から人々を守るための予防・治療法の研究開発や、それに携わる研究者育成等を担います。
    「先端生命科学動物実験ユニット」は、本学の実験動物を用いた研究支援・推進を担ってきた研究支援センター動物実験施設と医用ミニブタ・先端医療開発研究センターを合併・改組することで、動物実験施設の全面改修と併せ、感染症対応(感染動物実験エリア整備)、SFP(specific pathogen free)対応設備導入等の高機能化を図り、小動物から大動物までの一貫した実験動物の活用による研究の推進が可能となります。
    「研究支援ユニット」は、研究支援センターの遺伝子実験施設、アイソトープ実験施設、機器分析施設を統合し、研究支援を主業務とします。
    各ユニットが連携することで、動物実験管理、高付加価値医用ミニブタやカニクイザル等の更なる活用、分析装置のコアファシリティ化等も期待され、第4期中期目標に掲げる地域特性を活かした研究及び先進的感染制御等の国際レベルの研究に寄与します。


with KU パートナー企業紹介

ユピテルグループ

ユピテルグループ
貴社の業務やSDGsへの取り組みなどについて教えてください
ユピテルでは、車両とドライバーの運行管理に最適な、業務用のドライブレコーダーを数多く開発・生産・販売してます。物流の効率化、DX 推進の一助として、持続可能な社会のための製品とサービスを提案し続けてまいります。
本学の学生に向けて応援メッセージをお願いします!
ユピテルグループは、鹿児島大学の学生を応援しています! 鹿児島には、開発拠点として鹿児島技術センター、主力製品の生産拠点として(株)ユピテル鹿児島がございます。鹿児島大学のOBも数多く在籍し、鹿児島の地で活躍しています。

大学院理工学研究科
工学専攻 建築学プログラム 2年
中村 恭子 さん

108枚の木の板を組み合わせたユニークな「エコあずまや」設計・建築を手がけた

陽光と風、木の温もりを感じられる室内は心地よい憩いのスペース(鹿児島市石谷町のベガハウス本社)
陽光と風、木の温もりを感じられる室内は心地よい憩いのスペース(鹿児島市石谷町のベガハウス本社)
鷹野先生の授業を受けた5人のメンバーそれぞれが強みを出し合って完成した「エコあずまや」
鷹野先生の授業を受けた5人のメンバーそれぞれが強みを出し合って完成した「エコあずまや」

曲線美が目を引く「あずまや」は、建物の「始まり」ではなく、解体、廃棄、リサイクルといった建物の「終末」を見据え、再生可能性を主眼において設計されたものです。鹿児島市の工務店からの依頼を受け、本学大学院理工学研究科建 築学プログラム・鷹野敦准教授による授業のテーマとして学生5人が設計・建築に取り組みました。

製作にあたっては、設計データをデジタル加工機に読み込ませて部材を成形する「デジタルファブリケーション」の技術を採用。穴を開けて湾曲させた108枚の板を組み合わせて一つの建物を完成させました。解体、復元が容易で、一部損傷してもパーツの差し替えが可能です。個々の部材は、イスやテーブルなどさまざまな用途に利用できるという特徴もあります。

卒業設計作品。出身地の北九州市に実在する公園を題材に、ハンディの有無にかかわらず誰もが分断されず交流できる空間を創出しました
卒業設計作品。出身地の北九州市に実在する公園を題材に、ハンディの有無にかかわらず誰もが分断されず交流できる空間を創出しました

基本となる設計を作成したのが中村恭子さん。「デジタルファブリケーションという新しい手法を使うので、見たことのないデザインが面白いかな、と。構造計算や部材の組み合わせ方などは、その分野に強いメンバーそれぞれが強みを発揮して作り上げました」。高校生の頃に見た建築家のプレゼン動画をきっかけに、人の行動に良い 影響を与えることができる建築の力に魅了されました。来春の卒業後はゼネコンの設計担当として就業予定です。「建築は人のためのもの、ということを忘れず、楽しみながらずっと建築に携わっていきたいと思います」と、抱負を語ってくれました。

中村 恭子 さん

なるようになる。
全力を尽くせ

武者小路実篤の言葉です。いくら頑張っても厳しいことは厳しいし、良い結果になることもあれば、思わしくない結果になることもありますが、その時々で、できる限りのことは全力で取り組みたいと常に思っています。自分のできる全てをやり切ったら、どんな結果であっても悔いは残らないから。

鹿大プラスでは、鹿児島大学インフォメーションセンターで販売している鹿児島大学の研究・教育活動の成果として完成した商品を紹介します。

さっつんサブレ 鹿大プラス

さっつんサブレ

内容量:
スタンドパック 5枚入り(プレーン3枚、紫芋2枚) 価格:600円(税込)
ボックスタイプ12枚入り(プレーン、紫芋、黒酢黒糖、塩味 各3枚) 価格:1,274円(税込)

鹿児島大学と株式会社風月堂によるコラボレーション商品。
商品名は、本学公式マスコットキャラクターのさっつんにちなんでいます。卒業生がデザインしたパッケージにはさっつんや「かごんまの色®」を使用。鹿児島県産のこだわりの素材と本学の魅力をたっぷり詰め込んだ「さっつんサブレ」、ぜひご賞味ください。

インフォメーションセンター

インフォメーションセンター(鹿児島大学正門横)

☎099-285-3864 開館時間:月曜日〜金曜日(休日・祝祭日を除く) 9:30〜16:30(昼休み13:00〜14:00)